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第1話 クズの生活※♥
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まともな人でも不良になれる。
だが、不良がまともな人になることは難しい。
その世界に染まってしまえば、その色は簡単に落とすことはできない。
そして、一度道を踏み外せば全てを失い、あとはただ野垂れ死ぬだけ。
だが、そんな世界に魅力を感じ、生きがいとする男たちが居た。
志鋼英成《しこうえいせい》は、そんな不良高校生だった。
いつ死んでもおかしくないと思っていたし、死ぬことも怖くなかった。
ただ、空虚だけがイヤだった。
「カカカカカ! イキったのがどっちだったか、思い知ったか?」
薄汚い街の路地裏で、十人程度の高校生たちが横たわっていた。
誰もが髪を染めて耳に穴まで空けている。典型的な不良高校生たちだ。
そんな不良たちを、キツネのような瞳で見下ろしている男が居た。
「グシャッと潰れろ」
赤みのある髪の色。上下真っ黒の学ランを着て、それほど大男というわけでもないが、体つきは服の上からでもガッチリしているのが分かる。
そして、男はとにかくひねくれた目つきをしている。
その男こそが、英成だった。
英成は不良の顔面を片手で掴み、徐々に力を入れていく。
「え、英成《えいせい》……た、頼む……それだけは……ぎゃあああああ!」
次の瞬間、悲鳴が路地裏に響いた。
「終わりかよ。つまんねえな。手に感触があまり残らなかったな」
相手を殲滅させたことを確認し、英成はその場から立ち去ろうとする。
「ま、……待てよ、英成。いつまでも……お前一人で何が出来る! 『四王者《よんおうじゃ》』の時代はもう終わったんだよ!」
英成は振り返り、まだ騒いでいる不良の顔面を右手で掴んで潰した。
「何が出来る? 何でも出来るさ。俺にやってできねえことは一つもねえからな」
英成は嬉々としながらそれだけを言い残し、ケンカには完勝。
そして……
「よう、無事だったかい? ナンパから連れ去られそうになるとは、ついてなかったな」
「あ……あ、あぅ………」
「まだ落ち着かねえか? お前、同じ学年の雛川だろ? 俺は一応お前と同じ学校の志鋼だ」
路地の壁越しに腰を抜かして震えている女子校生の手を掴んで起こす。
茶色がかった長い髪をサイドポニーで結んだ可愛らしい少女。
最初はオドオドしているだけだったが、英成に引き起こされ、不良たちが英成に倒されたことに気づき、ハッとした。
「あ、あの、うん、志鋼くんだよね……た、助けてくれて……ありがとう」
「ふっ、いいってことよ。ま、学校でも有名な美人ってのも災難だったな」
「え……え……」
助けられた少女、雛川はポカンとしたが、すぐに慌てたように首を横に振った。
「ぜ、ぜ、全然そんなことないよぉ! わ、わたし、トロイし、そ、そんなことないし……うちの学校で美人っていったら、生徒会長の『近衛刹華《このえせつか》』さんみたいな大和撫子のことを言って……」
「カカカカ、そいつは学校でお前が言わねえほうがいいぜ? 嫌味になるぜ? お前は不良が犯罪犯してでも関係持ちたくなるイイ女なんだから、胸を張れ。私は不良に連れ去られそうになった~て、自慢しろ!」
「ぷっ……もう、何それぇ!」
「それに、生徒会長の近衛もお前が思ってるような女じゃないかもしれねえぞ? 真面目ぶってるけど、裏では意外と『オタクでスケベ』かもしれねーぞ?」
「え~って、そんなことあるわけないよぉ!」
英成の冗談交じりの言葉に、ようやく肩の力が抜けたのか、雛川はかわいらしく笑った。
そして、同時に英成に対して色々と印象が変わった。
「でも、ありがとう。志鋼くんって、学校にはあまり来なくて、怖い人ってイメージがあったけど……面白い人だね!」
「ばーか、俺はこわいぞ~、信用したら泣かされるからよ~」
「え~、そうなの?」
「だが、そんだけ笑えれば大丈夫だな。で、どーする? 学校行くか? 俺はサボる気だったからいいが、もうこんな時間だ」
「うん……そーだね……じゃあ、私は……あっ……」
一頻り笑って、これから学校へ……と考えた瞬間、雛川はまた力が抜けたかのようにフラフラとした。
「おいおい、大丈夫か?」
「あっ、ご、ごめん。えへへ、急に怖くなって……」
落ち着いたらまた怖くなったのだ。
その様子を見て英成はほくそ笑む。
「なら、そうだな……ちょいとソコで休んでいくか?」
「え……え、いや、え? で、でも、あそこって……」
「寝れるし、暇ならゲームもカラオケもできるしよ……まっ、サボるには最適だぞ?」
「で、でも、でも……そ、そんなの……」
英成が指さした休憩場所。
それは、誰がどう見ても正真正銘のラブホテルであった。
ウブな雛川は突然の英成の提案の驚きと、まさか今まさに襲われそうになった自分に対していきなり「そういうこと」をする気かなのかと身構えて、また若干震えた。
しかし、英成は笑って……
「あ? なんだ、ビビって……かかか、なんだよ。俺が変な事すると思ってんのか?」
そういうことをする。
「……うそつき……変なことしないっていったのに……」
制服のブレザーを脱がされた姿の雛川は、ベッドに足を延ばして座りながら、英成に後ろから包み込まれるように抱きしめられ、ちょくちょくその胸を触られたり、ふとももを撫でられたりしていた。
「あ? なんだ? 別にヤッてねーだろ? お互い服着てるんだしよ」
「で、だって……ひどいよ……最初からこういうことするつもりだったの? こんなの……あの人たちと変わらないよぉ……」
そう言いながら涙目になる雛川。心を許しかけた男に裏切られたと悲しい気持ちになった。
だが、英成は開き直る。
「俺をあんな強姦野郎たちと一緒にするなよな? 俺は合意のねえことはしねぇ。俺は和姦主義者なんだよ。だから、お前も嫌なら拒否すりゃいい」
「……いやだよ……」
「そうか。じゃあ、キスしたいんだけど、嫌なら嫌って言え」
「……付き合ってもないのに……いやだよ……初めてだし……んひゃっ!?」
後ろから英成は雛川の頬にキスした。手を雛川の頭においてポンポンと優しくなでながら、軽く頬へのキス。
ビックリしたに雛川はビクッと反応する。顔を真っ赤にして体を強張らせる。
「あ……ちょ、い、いやだって……」
「頬はセーフじゃねえのか? 挨拶みたいなもんだし」
「だ、だけどぉ……」
「へっ、お前……やっぱかわいいな」
「うぅ……」
嫌だと口で言って拒否しようとする雛川だが、徐々にその抵抗が緩んでくる。
そんな雛川の頬だけでなく、首筋やうなじにもキスする英成は、徐々に自分の指を雛川のスカートの中に入れてまさぐる。
「薄いグリーン……」
「ひゃっ、あ、だ、だめ……パンツ見ないでよぉ……」
「かわいいじゃん……触っちゃお」
「ちょっお!? あ、そ、そこは……や、やだ、ダメ! んっ!?」
スカートをめくって見えるのは、淡いグリーンのショーツ。大人っぽいわけでも子供っぽくもない、言ってみれば可愛らしく年相応のもの。
英成はそのショーツの中心部にある筋を人差し指で優しく撫でて、なぞる。
その感覚に、雛川は全身に電流が走ったかのようにビクンと体が跳ねる。
「し、志鋼くん、だめ、やめ、お願いだから、ね、もうやめて……」
感じてしまった体で、それでも懇願するように英成を見つめる雛川。
それは……
「わ、わたし……気になってる男の子がいるの……」
「ん?」
顔を真っ赤にして、雛川はそう告白した。
「お、同じ吹奏楽部の先輩で……わ、私に朝練付き合ってくれて、よく二人で……優しい先輩で、辺垂《へたる》先輩って言って……だ、だから、ごめんなさい……私……」
気になっている男が居るから、これ以上はやめてほしい。
だが、そんなの英成には知ったこっちゃなかった。
「でも、なんか……下着のこの箇所はどういうことだ? ちょっと湿ってるな……怖くなってお漏らしかな? それとも感じて―――」
「ちょ、だ、ダメだってばァ!」
それは、雛川の言葉に反してぐっしょりと雛川のショーツに世界地図が広がっていく。
ショーツを男に見られることすら考えられないのに、指先で弄られて、しかも濡れてしまう。
さらに……
「ちゅっ、ちゅぷ、んちゅ」
「ひうっ、ひゃん、ん」
英成は雛川の首筋に軽いキスを連射する。左に、右にうなじにと一回ごとに場所を変え、さらに片方の手はしっかりと雛川の胸や腰元を這っている。
股間、胸、首の三カ所を責められ、徐々に正常な判断ができなくなる雛川は全身を震わせながら涙目になって英成に顔を向け……
「し、志鋼くぅん……こちょばいよぉ……」
蕩けた表情で抵抗する力もなくなっている。
英成が雛川の股間の筋……マン筋やブラの上から胸を撫でるのも、首筋へのキスも、防ごうという気力を失っていっている。
そこまでくればと、英成は蕩けた雛川に顔を近づけ……
「んっ……」
「――――――ッ!?」
唇に軽いキスをした。
驚いたように目を大きく見開く雛川。
だが、体を強張らせたり、泣きだして逃げたりするわけでもなく、キスを終えて顔を離した英成をジッと見つめて……
「……だめっていったのにぃ……私の……ファーストキスだよぉ……ひどいよぉ……」
自分は嫌だった……と、まるで説得力のないトロトロの表情の雛川。
英成がまた顔を近づける……が、今度は唇を重ねない。
雛川の唇に触れるギリギリところで寸止め……
「……雛川は……言われ慣れているかもしれないけど……かわいすぎるのでごめんなさい」
「……ふぇ……ぷっ……も、もう……なにそれ……」
ボソボソと、しかし吐く息は雛川の唇にかかるように、英成がそう呟くと。
ポカンとした涙目の雛川が噴き出した。
「言われ慣れてないもん……私……彼氏とかいないし……」
「でも、告白いっぱいされてるし、不良が誘拐しそうになるほど犯罪的な可愛さだし……何より俺がドキドキしてる」
「も、も~~~、あはは、もう、志鋼くんってばァ!」
乱暴に、無理やり、そして雰囲気に流され……そうになったところで、英成の予想外の言葉に、強張っていた肩の力が抜けて笑ってしまった雛川。
すると不思議なものだった。
別に目の前にいるのは好きでも嫌いでもない、会話したのも今日が初めての男だというのに、僅かなギャップで壁が崩れて……
「志鋼くん……色んな女の子にそんなこと言ってるの?」
「お前ほど可愛い奴がこの世にいっぱいいてたまるか」
「……んもう、そんなこと言っても騙されないもん……調子良すぎじゃないかなぁ? わたし……そんなに可愛い可愛いなんて軽く言われても信じないもん」
「じゃあ、どうすれば信じてくれる?」
「う~ん……エッチなことやめてくれたら……信じるかも」
「じゃあ、俺を押しのけろ……俺は和姦じゃないとって言っただろ?」
「無理だもん……志鋼くん強いもん……だから、私……和姦じゃないもん、犯されちゃうんだもん」
「嫌なら言えって言え……」
気づけば雛川は目を閉じて、眼前にあった英成の唇に自ら顔を寄せてキスをしていた。
「ん、ちゅっ、ん♥」
「雛川、ん、ちゅっ、ちゅぷ」
軽く唇が触れ、しかしまたくっつけて、重ねるだけのキスを繰り返し、繰り返し、気づいたら雛川はベッドの上に仰向けになっていた。
「あ……ん♥ ん、ちゅぷっ、ん♥」
雛川のファーストキス。しかし余韻に浸る間もなく次々とキスの雨が降り注ぎ、しかも感覚がドンドン速く、一方で一回のキスが徐々に深く唇に重なり合うようになる。
だが、それも雛川はもう拒否することなく、ぎこちないながらも自ら唇を突き出して、キス待ちするのではなく、自らキスへと英成に応える。
「……エッチしたいなら素直にエッチしたいって言ってよ……」
「お前とエッチしたい」
「んもう……今更素直になったって、遅いんだから―――――♥」
嫌がりながらも雰囲気に流れたのか、雛川は両腕を英成の頭に回して――――
だが、不良がまともな人になることは難しい。
その世界に染まってしまえば、その色は簡単に落とすことはできない。
そして、一度道を踏み外せば全てを失い、あとはただ野垂れ死ぬだけ。
だが、そんな世界に魅力を感じ、生きがいとする男たちが居た。
志鋼英成《しこうえいせい》は、そんな不良高校生だった。
いつ死んでもおかしくないと思っていたし、死ぬことも怖くなかった。
ただ、空虚だけがイヤだった。
「カカカカカ! イキったのがどっちだったか、思い知ったか?」
薄汚い街の路地裏で、十人程度の高校生たちが横たわっていた。
誰もが髪を染めて耳に穴まで空けている。典型的な不良高校生たちだ。
そんな不良たちを、キツネのような瞳で見下ろしている男が居た。
「グシャッと潰れろ」
赤みのある髪の色。上下真っ黒の学ランを着て、それほど大男というわけでもないが、体つきは服の上からでもガッチリしているのが分かる。
そして、男はとにかくひねくれた目つきをしている。
その男こそが、英成だった。
英成は不良の顔面を片手で掴み、徐々に力を入れていく。
「え、英成《えいせい》……た、頼む……それだけは……ぎゃあああああ!」
次の瞬間、悲鳴が路地裏に響いた。
「終わりかよ。つまんねえな。手に感触があまり残らなかったな」
相手を殲滅させたことを確認し、英成はその場から立ち去ろうとする。
「ま、……待てよ、英成。いつまでも……お前一人で何が出来る! 『四王者《よんおうじゃ》』の時代はもう終わったんだよ!」
英成は振り返り、まだ騒いでいる不良の顔面を右手で掴んで潰した。
「何が出来る? 何でも出来るさ。俺にやってできねえことは一つもねえからな」
英成は嬉々としながらそれだけを言い残し、ケンカには完勝。
そして……
「よう、無事だったかい? ナンパから連れ去られそうになるとは、ついてなかったな」
「あ……あ、あぅ………」
「まだ落ち着かねえか? お前、同じ学年の雛川だろ? 俺は一応お前と同じ学校の志鋼だ」
路地の壁越しに腰を抜かして震えている女子校生の手を掴んで起こす。
茶色がかった長い髪をサイドポニーで結んだ可愛らしい少女。
最初はオドオドしているだけだったが、英成に引き起こされ、不良たちが英成に倒されたことに気づき、ハッとした。
「あ、あの、うん、志鋼くんだよね……た、助けてくれて……ありがとう」
「ふっ、いいってことよ。ま、学校でも有名な美人ってのも災難だったな」
「え……え……」
助けられた少女、雛川はポカンとしたが、すぐに慌てたように首を横に振った。
「ぜ、ぜ、全然そんなことないよぉ! わ、わたし、トロイし、そ、そんなことないし……うちの学校で美人っていったら、生徒会長の『近衛刹華《このえせつか》』さんみたいな大和撫子のことを言って……」
「カカカカ、そいつは学校でお前が言わねえほうがいいぜ? 嫌味になるぜ? お前は不良が犯罪犯してでも関係持ちたくなるイイ女なんだから、胸を張れ。私は不良に連れ去られそうになった~て、自慢しろ!」
「ぷっ……もう、何それぇ!」
「それに、生徒会長の近衛もお前が思ってるような女じゃないかもしれねえぞ? 真面目ぶってるけど、裏では意外と『オタクでスケベ』かもしれねーぞ?」
「え~って、そんなことあるわけないよぉ!」
英成の冗談交じりの言葉に、ようやく肩の力が抜けたのか、雛川はかわいらしく笑った。
そして、同時に英成に対して色々と印象が変わった。
「でも、ありがとう。志鋼くんって、学校にはあまり来なくて、怖い人ってイメージがあったけど……面白い人だね!」
「ばーか、俺はこわいぞ~、信用したら泣かされるからよ~」
「え~、そうなの?」
「だが、そんだけ笑えれば大丈夫だな。で、どーする? 学校行くか? 俺はサボる気だったからいいが、もうこんな時間だ」
「うん……そーだね……じゃあ、私は……あっ……」
一頻り笑って、これから学校へ……と考えた瞬間、雛川はまた力が抜けたかのようにフラフラとした。
「おいおい、大丈夫か?」
「あっ、ご、ごめん。えへへ、急に怖くなって……」
落ち着いたらまた怖くなったのだ。
その様子を見て英成はほくそ笑む。
「なら、そうだな……ちょいとソコで休んでいくか?」
「え……え、いや、え? で、でも、あそこって……」
「寝れるし、暇ならゲームもカラオケもできるしよ……まっ、サボるには最適だぞ?」
「で、でも、でも……そ、そんなの……」
英成が指さした休憩場所。
それは、誰がどう見ても正真正銘のラブホテルであった。
ウブな雛川は突然の英成の提案の驚きと、まさか今まさに襲われそうになった自分に対していきなり「そういうこと」をする気かなのかと身構えて、また若干震えた。
しかし、英成は笑って……
「あ? なんだ、ビビって……かかか、なんだよ。俺が変な事すると思ってんのか?」
そういうことをする。
「……うそつき……変なことしないっていったのに……」
制服のブレザーを脱がされた姿の雛川は、ベッドに足を延ばして座りながら、英成に後ろから包み込まれるように抱きしめられ、ちょくちょくその胸を触られたり、ふとももを撫でられたりしていた。
「あ? なんだ? 別にヤッてねーだろ? お互い服着てるんだしよ」
「で、だって……ひどいよ……最初からこういうことするつもりだったの? こんなの……あの人たちと変わらないよぉ……」
そう言いながら涙目になる雛川。心を許しかけた男に裏切られたと悲しい気持ちになった。
だが、英成は開き直る。
「俺をあんな強姦野郎たちと一緒にするなよな? 俺は合意のねえことはしねぇ。俺は和姦主義者なんだよ。だから、お前も嫌なら拒否すりゃいい」
「……いやだよ……」
「そうか。じゃあ、キスしたいんだけど、嫌なら嫌って言え」
「……付き合ってもないのに……いやだよ……初めてだし……んひゃっ!?」
後ろから英成は雛川の頬にキスした。手を雛川の頭においてポンポンと優しくなでながら、軽く頬へのキス。
ビックリしたに雛川はビクッと反応する。顔を真っ赤にして体を強張らせる。
「あ……ちょ、い、いやだって……」
「頬はセーフじゃねえのか? 挨拶みたいなもんだし」
「だ、だけどぉ……」
「へっ、お前……やっぱかわいいな」
「うぅ……」
嫌だと口で言って拒否しようとする雛川だが、徐々にその抵抗が緩んでくる。
そんな雛川の頬だけでなく、首筋やうなじにもキスする英成は、徐々に自分の指を雛川のスカートの中に入れてまさぐる。
「薄いグリーン……」
「ひゃっ、あ、だ、だめ……パンツ見ないでよぉ……」
「かわいいじゃん……触っちゃお」
「ちょっお!? あ、そ、そこは……や、やだ、ダメ! んっ!?」
スカートをめくって見えるのは、淡いグリーンのショーツ。大人っぽいわけでも子供っぽくもない、言ってみれば可愛らしく年相応のもの。
英成はそのショーツの中心部にある筋を人差し指で優しく撫でて、なぞる。
その感覚に、雛川は全身に電流が走ったかのようにビクンと体が跳ねる。
「し、志鋼くん、だめ、やめ、お願いだから、ね、もうやめて……」
感じてしまった体で、それでも懇願するように英成を見つめる雛川。
それは……
「わ、わたし……気になってる男の子がいるの……」
「ん?」
顔を真っ赤にして、雛川はそう告白した。
「お、同じ吹奏楽部の先輩で……わ、私に朝練付き合ってくれて、よく二人で……優しい先輩で、辺垂《へたる》先輩って言って……だ、だから、ごめんなさい……私……」
気になっている男が居るから、これ以上はやめてほしい。
だが、そんなの英成には知ったこっちゃなかった。
「でも、なんか……下着のこの箇所はどういうことだ? ちょっと湿ってるな……怖くなってお漏らしかな? それとも感じて―――」
「ちょ、だ、ダメだってばァ!」
それは、雛川の言葉に反してぐっしょりと雛川のショーツに世界地図が広がっていく。
ショーツを男に見られることすら考えられないのに、指先で弄られて、しかも濡れてしまう。
さらに……
「ちゅっ、ちゅぷ、んちゅ」
「ひうっ、ひゃん、ん」
英成は雛川の首筋に軽いキスを連射する。左に、右にうなじにと一回ごとに場所を変え、さらに片方の手はしっかりと雛川の胸や腰元を這っている。
股間、胸、首の三カ所を責められ、徐々に正常な判断ができなくなる雛川は全身を震わせながら涙目になって英成に顔を向け……
「し、志鋼くぅん……こちょばいよぉ……」
蕩けた表情で抵抗する力もなくなっている。
英成が雛川の股間の筋……マン筋やブラの上から胸を撫でるのも、首筋へのキスも、防ごうという気力を失っていっている。
そこまでくればと、英成は蕩けた雛川に顔を近づけ……
「んっ……」
「――――――ッ!?」
唇に軽いキスをした。
驚いたように目を大きく見開く雛川。
だが、体を強張らせたり、泣きだして逃げたりするわけでもなく、キスを終えて顔を離した英成をジッと見つめて……
「……だめっていったのにぃ……私の……ファーストキスだよぉ……ひどいよぉ……」
自分は嫌だった……と、まるで説得力のないトロトロの表情の雛川。
英成がまた顔を近づける……が、今度は唇を重ねない。
雛川の唇に触れるギリギリところで寸止め……
「……雛川は……言われ慣れているかもしれないけど……かわいすぎるのでごめんなさい」
「……ふぇ……ぷっ……も、もう……なにそれ……」
ボソボソと、しかし吐く息は雛川の唇にかかるように、英成がそう呟くと。
ポカンとした涙目の雛川が噴き出した。
「言われ慣れてないもん……私……彼氏とかいないし……」
「でも、告白いっぱいされてるし、不良が誘拐しそうになるほど犯罪的な可愛さだし……何より俺がドキドキしてる」
「も、も~~~、あはは、もう、志鋼くんってばァ!」
乱暴に、無理やり、そして雰囲気に流され……そうになったところで、英成の予想外の言葉に、強張っていた肩の力が抜けて笑ってしまった雛川。
すると不思議なものだった。
別に目の前にいるのは好きでも嫌いでもない、会話したのも今日が初めての男だというのに、僅かなギャップで壁が崩れて……
「志鋼くん……色んな女の子にそんなこと言ってるの?」
「お前ほど可愛い奴がこの世にいっぱいいてたまるか」
「……んもう、そんなこと言っても騙されないもん……調子良すぎじゃないかなぁ? わたし……そんなに可愛い可愛いなんて軽く言われても信じないもん」
「じゃあ、どうすれば信じてくれる?」
「う~ん……エッチなことやめてくれたら……信じるかも」
「じゃあ、俺を押しのけろ……俺は和姦じゃないとって言っただろ?」
「無理だもん……志鋼くん強いもん……だから、私……和姦じゃないもん、犯されちゃうんだもん」
「嫌なら言えって言え……」
気づけば雛川は目を閉じて、眼前にあった英成の唇に自ら顔を寄せてキスをしていた。
「ん、ちゅっ、ん♥」
「雛川、ん、ちゅっ、ちゅぷ」
軽く唇が触れ、しかしまたくっつけて、重ねるだけのキスを繰り返し、繰り返し、気づいたら雛川はベッドの上に仰向けになっていた。
「あ……ん♥ ん、ちゅぷっ、ん♥」
雛川のファーストキス。しかし余韻に浸る間もなく次々とキスの雨が降り注ぎ、しかも感覚がドンドン速く、一方で一回のキスが徐々に深く唇に重なり合うようになる。
だが、それも雛川はもう拒否することなく、ぎこちないながらも自ら唇を突き出して、キス待ちするのではなく、自らキスへと英成に応える。
「……エッチしたいなら素直にエッチしたいって言ってよ……」
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嫌がりながらも雰囲気に流れたのか、雛川は両腕を英成の頭に回して――――
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