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0. 使命
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――自分の役目を果たしなさい。
その声を聞いた時、すべてを悟った。どうして自分がこの世に生まれて、どうして今ここにいるのか。そしてこれから自分が歩むべき未来もすべて――
けれど、そんな中で一つだけ、一つだけ納得できないことがあった。いや、理解したくないと拒む自分がいた。
みすぼらしい自分に微笑みかけ、いつも手を差し伸べてくれた人。好きだと告白して、結婚までしたいと言ってくれた人。
どうしてそんな相手と自分を巡り合わせたのか。
何も知りたくなかった。人を愛する喜びも、愛される幸せも、すべてを失わなければならないのならば、最初から与えて欲しくなかった。
――それなのにどうして……
あまりにも残酷な仕打ちだ。自分が一体何をしたというのだ。ただ愛しい人のそばにいて、ささやかな生活を送りたかっただけ。ただそれだけなのに……
それすらも、主は許さないというのか。
きっとそうなのだろうと思った。
これは天罰なのだ。大勢の者を救うという使命を忘れ、ただ己の幸せを求めた自分への罰なのだ。
――ああ、もう逃げられない……
あの人に別れを告げなければならない。優しいあの人はきっと最後まで反対して、自分を愛そうとしてくれるだろうが、周囲は決して許してくれないだろう。みんな、そうだった。
それでもどうか、最後に一つだけ、あの人の最愛の人として願うことを許してほしい。
――どうか、幸多からんことを……
自分のことは忘れて、幸せになって欲しい。いつか自分の以外の誰かを愛しても、笑っていて欲しい。
沈んでゆく感覚に身を委ね、意識が途切れるまで、何度もそう祈り続けた。
その声を聞いた時、すべてを悟った。どうして自分がこの世に生まれて、どうして今ここにいるのか。そしてこれから自分が歩むべき未来もすべて――
けれど、そんな中で一つだけ、一つだけ納得できないことがあった。いや、理解したくないと拒む自分がいた。
みすぼらしい自分に微笑みかけ、いつも手を差し伸べてくれた人。好きだと告白して、結婚までしたいと言ってくれた人。
どうしてそんな相手と自分を巡り合わせたのか。
何も知りたくなかった。人を愛する喜びも、愛される幸せも、すべてを失わなければならないのならば、最初から与えて欲しくなかった。
――それなのにどうして……
あまりにも残酷な仕打ちだ。自分が一体何をしたというのだ。ただ愛しい人のそばにいて、ささやかな生活を送りたかっただけ。ただそれだけなのに……
それすらも、主は許さないというのか。
きっとそうなのだろうと思った。
これは天罰なのだ。大勢の者を救うという使命を忘れ、ただ己の幸せを求めた自分への罰なのだ。
――ああ、もう逃げられない……
あの人に別れを告げなければならない。優しいあの人はきっと最後まで反対して、自分を愛そうとしてくれるだろうが、周囲は決して許してくれないだろう。みんな、そうだった。
それでもどうか、最後に一つだけ、あの人の最愛の人として願うことを許してほしい。
――どうか、幸多からんことを……
自分のことは忘れて、幸せになって欲しい。いつか自分の以外の誰かを愛しても、笑っていて欲しい。
沈んでゆく感覚に身を委ね、意識が途切れるまで、何度もそう祈り続けた。
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