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【本編】5さい
6話 サンドイッチ
しおりを挟む数日も飲まず食わずだった俺の目の前にいきなり美味しそうなサンドイッチが登場して、俺の気分は一気に上昇した。
「ピッ!ピピッ!!」
(ごはん!ごはんだ!!)
目が覚めてからと言うものずっと木の皮で過ごし、疲労が溜まってきてからはそれすらも食べれなかった為、何日もろくに食べれてなかった俺のお腹はギュルギュルと鳴りヨダレが垂れる。
そんな俺に「ふふっ」と笑みをこぼした人間は「一緒に食べよう?」とサンドイッチを一口サイズに小さくちぎって目の前に差し出した。
俺はすぐさまサンドイッチにかぶりつきたい気持ちを抑え、残る僅かな警戒心でクンクンと小さい鼻を動かし、変なものが仕込まれていないかを確かめた。
「大丈夫、何も入ってないよ?」
そう言って人間は先程ちぎったサンドイッチを食べて見せた。
人間が飲み込んだところを確認し、漸く俺は目の前に出されたサンドイッチにかぶりつく。
「ピュ!!!」
(う、うま!!!)
久しぶりに口に入れる味のある食べ物。
口の中に広がる野菜と肉とチーズの味。
ごくんと飲み込むと、すぐさま身体がエネルギーを吸収しようとするのが分かる。
「ピュ!ピュ!」
(もっと!もっとちょうだい!)
「うんうん、いっぱい食べな」
人間は何度もサンドイッチをちぎって俺に食べさせてくれた。
食べ終わり、お腹が満足する時には既に警戒心なんて1つもなくて、俺はこの人間に少しだけ心を開いた。
ん?なに?チョロいって?だって俺まだ5歳だもん……。
またお腹がすいた時のために頬袋にもサンドイッチを貯蓄すると、ぷっくりと頬が膨らむ。
それを見た人間が「可愛い」と微笑みながら俺の頬を人差し指で優しく撫でた。
この人間の手はとても気持ちいい。
よく見ると、この人間は優しいだけでなく、まだ子供なのに顔がとてつもなく整っていて、金髪蒼眼の王子様のような見た目をしていた。
俺はお礼も兼ねて、人間の手に擦り寄ると甘える様に「キュルキュル」と鳴いてみせる。
「僕の事信用してくれたのかな?ありがとう」
「ピッ!!」
(うん!おれ、おまえのことすき!)
暫くスリスリと人間にすり付いていると、人間は俺の首元に巻かれたスカーフに気付く。
「可愛いスカーフをしているなって思ったら、何か刺繍がされているね……えっと…リ、ツ……リツ?」
「ピュー!!」
(おれのなまえ!!)
小さく短い手を勢いよくあげると、人間は驚いた表情を浮かべた後直ぐに「ぷっ」と吹き出して笑った。
「ふふっ……ごめんごめん、あまりにも勢いが良かったから。そうか、リツって言うのか。とてもいい名前だね。改めまして、俺はラディアス……ラディアス・グラニードって言うんだ。リツにはラディって呼んで欲しいな。よろしくね、リツ」
笑顔で自己紹介したラディは両手に俺を乗せると、俺の頭上にちゅっとキスを落とした。
その行為に嬉しくなった俺はそのままラディの頬へ擦り寄ったのだった。
暫くじゃれていた俺だったが、身体の疲労と痛みが戻ってくると直ぐに睡魔に襲われた。
「まだ疲れているだろうからゆっくりとおやすみ、ずっと一緒にいるから」
「ピュ…ピュィ……」
(ぜったいだからね、やくそく……)
俺はラディの指に抱きつきながら静かに寝息をたてた。
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