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10さい
41話 俺が守る
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※流血表現があります。ご注意下さい!!
小さな身体で声の方向へと走る。
なかなか進まない距離に俺は息を切らしながら、それでも走り続ける事を諦めずに進む。
次第に声が鮮明に、大きく聞こえるようになって来て、近付いていることを確認した俺は周りをキョロキョロと伺いながら耳を澄ます。
【タ、タスケ……イタイ…イタイ】
(痛い?……怪我をしているのか?)
一刻も早く見つけてあげなければと身体に力が入る。
森の奥へ進むに連れて、不穏な空気が漂うのが分かり足が震える。
……怖い。
俺が捨てられたあの枯れ果てた森のように……空気が冷たく暗い。
先程まではあんなにも明るく豊かだった森が次第に枯れ果てた森へと変貌していく。
思い出す……あの時の記憶。
嫌だ、1人になりたくない、辛い、逃げたい……。
【タスケテ……タス、ケテ……】
逃げてちゃダメだ……俺は……俺は!ラディを支えていくんだ!ラディの助けになるんだ!……こんな所で立ち止まっちゃ行けないんだ!!!
ーーーもうすぐだ、もうすぐだから!!
足を踏ん張り、俺は走る。
助けを求める声の元まで。
「ピュピュ……ピュイ!!」
(はぁ、はぁ、……あそこだ!!)
声が近くまで聞こえ俺は確信し、そのまま一気に距離をつめる。
「ピピッッ!!?……っっ!!ぴァ……」
(大丈夫か!?もうへいーーーーーへ……あぁっっ……)
……な、なんだ……コイツ。
声の主の元まで行くとそこには……デカい魔獣。
俺より何千倍も大きな狼の様な形をした魔獣。
黒いモヤを纏い、身体全体はぐにゃぐにゃと歪み暗闇の様に真っ黒だった。
精気の無い虚ろな目に鋭い牙と爪……舌は口の端から垂れヨダレが地面にボトボトと落ちる。
「ピ、ピピ……」
(な、なんで……ここに……あの、声は……)
身体が震え、冷や汗が流れる。
浅はかな行動に悔やむも既に遅かった。
……俺……ここで死ぬ……のか?
涙が出る。
嫌だ、死にたくない。
【タスケテ……コンナコト…シタ、クナイ……】
「ピュッッ……」
(な、なんだ……コイツ苦しそう……)
よく見たらこの魔獣は涙を流している。
それに、すごく辛そうだ。
「ピィッッ!ピピピ!!!!」
(どうしたんだよ!!何が苦しいのか言ってくれなきゃ分からないよ!!!)
【ウ……ゥゥゥ……】
その場で蹲り静かになった魔獣はーーーー瞬間、大きな悲鳴に似た遠吠えを上げ、地面が揺れた。
【ア……アァ……イヤダ、ボクジャ……ナクナ……ル……アアアアアア……ウワァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!】
声を上げると共に俺に突進してくる魔獣に俺は目を見張り避けようと身体を動かすーーーーーーが、恐怖で腰が抜けたのか身体が思う様に動かない……。
……ひっ!……やばい、間に合わないっっっ!!!
ギュッと強く目を瞑った瞬間ーーーーーーー。
「ーーーーーっっ!リツっっっっ!!!!!!!」
大好きな声が聞こえた。
この声を聞けば俺はもう安心だと思った。
……でも、それは違った。
ーーーーガリッッッッッッ!!!!
「くっっっ……!!ーーーーかはぁっっ!!!!」
何かを切り裂く音と共に聞こえた、大好きな人の潰れた声……。
俺は強く瞑った目を開く。
……そして、その光景に言葉を失う程の衝撃を受けた。
ーーーーーえ……。
「リ、ツ……だいじょ……はぁ……かはぁっ!」
目の前には真っ赤に染まったラディ。
ラディは俺を守るように覆いかぶさっていた。
「ビュ……ビ、ビィ……」
(ら……ラディ、そ、それ……)
俺を潰さないように逸れて倒れ込んだラディの背中は、魔獣の爪痕状にパックリと裂けていた。
そこから体外に大量に流れ出る真っ赤な血。
……え?何で……何でラディが?……嫌だ、ラディ……嫌だよ……。
また俺のせいで大好きな人を失うのか?
……俺のせいで。
なんでだよ……ラディの助けになるって言ったじゃんか……何で負担にしかなっていないんだよ……なんで、俺なんかを助けるんだよ……こんな何にも出来ないリスの俺をーーーーー。
「ピ……ピピ……」
起きて……起きてよ……。
そう願いながらラディに擦り寄ると、まだ意識があるみたいで、顔だけを俺に向け苦しそうに……でも俺を心配させまいと弱々しく笑ったラディ。
「……リ、ツ……だ、いじょ……ぶ、けが……な、い…?」
「ピ……ピピ」
(うん、うん……ラディ……)
口からも大量の血を吐くラディ。
俺の目からは大量に涙が零れた。
……失いたくない。ラディを……俺の大切な人を。
【カ、カラダガ……イタイ……イタイイタイイタイーーーーーーーーーーーーグワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!】
魔獣が俺とラディに向かって突進してくる。
絶対にこんな事有り得ないのに、今だけは全ての時間がゆっくり流れているように俺の目にはハッキリと見える。
「ーーーっっ!!ラディアスっっ!!リツっっ!!ーーーーくそっ!!間に合わねぇ!!!!!」
広い森を手分けして探していたのだろうか、ガロウィさんが来たようだ。
魔獣に向かって剣を振り上げているが、数秒遅い。
……あぁ、俺死ぬんだ。
命の恩人までも犠牲にして。
ーーーーーねぇ、俺はそれでいいの?
ーーーーーラディを支えていくんじゃないの?
ーーーーー母ちゃんとの約束も諦めるの?
ーーーーーまだ何もやれてないのに、本当にいいの?
ーーーーーいいわけ……ない。
ーーーーーいいわけないだろ!!!!!!
俺だってまだやりたい事が沢山ある。
もっと色々な世界の事だって知りたい。
獣人化して魔法だって使いたい。
ライオネルやボブ、ヘレスや屋敷の皆ともっと仲良くなりたい。
ーーーーーラディともっと一緒にいたい。
絶対にここでは終わらない!!!!!
「ビュュュュュ!!!!!!!」
俺はラディを守るように小さなリスの身体で前に立つ。
そして、強いブロンドの瞳で魔獣を捉える。
【ギャァァァァァァァ!!!!!!!】
間近に迫る距離、だけど恐怖は感じない。
ドクドクと心臓が脈打ち、身体がすごく熱い。
大丈夫……ラディは絶対にーーーー俺が守る!!!!
【グワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!】
「ビュィィィィィィィィ!!!!!!!!!」
(俺達に近づくんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)
ガシャンッと何かが外れた様な音を感じたと同時に、ふつふつと身体の中で何かが膨れ上がる。
……何だろう、この感覚……力が漲るーーーー。
身体が最高潮に熱くなった瞬間ーーーーー俺の身体は眩い白い光を放ち、広大な森を覆った。
その光を浴びた魔獣は苦しみ悶え、次第に白色に光る粒子へと変わり砂の様に溶かされていく。
【グ、クワァ……コレ、デ…ヤット……スマナイ……タス……カッタ、リュウノ……コヨーーーーー】
シュワシュワと魔獣が白い粒子となり、風に運ばれて消えていくと、俺から放たれる光も俺の中に吸い込まれる様に消えていった。
ーーーー何が起きたのか。
ボロボロな身体に理解が追いつかない真っ白な頭。
(そうだ!!ラディ!!ラディの怪我をっっ!!!)
早く処置をしなければラディは死んでしまうーーー。
緊迫した気持ちで振り向く俺だったが、ラディの状態を見て唖然とする。
うつ伏せで意識を失い倒れるラディの背中には、先程まであった酷い傷はどこにもなく、服だけが血まみれで無惨に破かれているだけだった。
呼吸も、少し乱れているけど正常だ。
「ピュ……ピ、ピィーーーーー」
(な、何で?……でも、無事ならよかっーーーーーー)
安心すると同時に視界が歪み、俺も意識を失う。
「おい!リツっっ!!!ラディアスも!!!一体何が起きたんだよ……くそっ……無茶しやがって!!!!」
枯れ果てた暗い森は、いつの間にか自然豊かな森に戻っていた様で、ガロウィさんの声が明るく照らされる森に響く。
ーーーー俺、今度は大切な人守れたかな?
ーーーーねぇ、母ちゃん見てる?
ーーーー俺……頑張ったかな?
ーーーー母ちゃんが生きてたら沢山褒めてくれたかな?
ーーーーねぇ、ラディ。
やっぱり、怪我を負わせた俺の事……嫌いになっちゃったかな……?
もし、俺の我儘な願いが叶うなら……頑張ったねって…もう一度だけ優しい手で抱きしめてほしいな……。
小さな身体で声の方向へと走る。
なかなか進まない距離に俺は息を切らしながら、それでも走り続ける事を諦めずに進む。
次第に声が鮮明に、大きく聞こえるようになって来て、近付いていることを確認した俺は周りをキョロキョロと伺いながら耳を澄ます。
【タ、タスケ……イタイ…イタイ】
(痛い?……怪我をしているのか?)
一刻も早く見つけてあげなければと身体に力が入る。
森の奥へ進むに連れて、不穏な空気が漂うのが分かり足が震える。
……怖い。
俺が捨てられたあの枯れ果てた森のように……空気が冷たく暗い。
先程まではあんなにも明るく豊かだった森が次第に枯れ果てた森へと変貌していく。
思い出す……あの時の記憶。
嫌だ、1人になりたくない、辛い、逃げたい……。
【タスケテ……タス、ケテ……】
逃げてちゃダメだ……俺は……俺は!ラディを支えていくんだ!ラディの助けになるんだ!……こんな所で立ち止まっちゃ行けないんだ!!!
ーーーもうすぐだ、もうすぐだから!!
足を踏ん張り、俺は走る。
助けを求める声の元まで。
「ピュピュ……ピュイ!!」
(はぁ、はぁ、……あそこだ!!)
声が近くまで聞こえ俺は確信し、そのまま一気に距離をつめる。
「ピピッッ!!?……っっ!!ぴァ……」
(大丈夫か!?もうへいーーーーーへ……あぁっっ……)
……な、なんだ……コイツ。
声の主の元まで行くとそこには……デカい魔獣。
俺より何千倍も大きな狼の様な形をした魔獣。
黒いモヤを纏い、身体全体はぐにゃぐにゃと歪み暗闇の様に真っ黒だった。
精気の無い虚ろな目に鋭い牙と爪……舌は口の端から垂れヨダレが地面にボトボトと落ちる。
「ピ、ピピ……」
(な、なんで……ここに……あの、声は……)
身体が震え、冷や汗が流れる。
浅はかな行動に悔やむも既に遅かった。
……俺……ここで死ぬ……のか?
涙が出る。
嫌だ、死にたくない。
【タスケテ……コンナコト…シタ、クナイ……】
「ピュッッ……」
(な、なんだ……コイツ苦しそう……)
よく見たらこの魔獣は涙を流している。
それに、すごく辛そうだ。
「ピィッッ!ピピピ!!!!」
(どうしたんだよ!!何が苦しいのか言ってくれなきゃ分からないよ!!!)
【ウ……ゥゥゥ……】
その場で蹲り静かになった魔獣はーーーー瞬間、大きな悲鳴に似た遠吠えを上げ、地面が揺れた。
【ア……アァ……イヤダ、ボクジャ……ナクナ……ル……アアアアアア……ウワァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!】
声を上げると共に俺に突進してくる魔獣に俺は目を見張り避けようと身体を動かすーーーーーーが、恐怖で腰が抜けたのか身体が思う様に動かない……。
……ひっ!……やばい、間に合わないっっっ!!!
ギュッと強く目を瞑った瞬間ーーーーーーー。
「ーーーーーっっ!リツっっっっ!!!!!!!」
大好きな声が聞こえた。
この声を聞けば俺はもう安心だと思った。
……でも、それは違った。
ーーーーガリッッッッッッ!!!!
「くっっっ……!!ーーーーかはぁっっ!!!!」
何かを切り裂く音と共に聞こえた、大好きな人の潰れた声……。
俺は強く瞑った目を開く。
……そして、その光景に言葉を失う程の衝撃を受けた。
ーーーーーえ……。
「リ、ツ……だいじょ……はぁ……かはぁっ!」
目の前には真っ赤に染まったラディ。
ラディは俺を守るように覆いかぶさっていた。
「ビュ……ビ、ビィ……」
(ら……ラディ、そ、それ……)
俺を潰さないように逸れて倒れ込んだラディの背中は、魔獣の爪痕状にパックリと裂けていた。
そこから体外に大量に流れ出る真っ赤な血。
……え?何で……何でラディが?……嫌だ、ラディ……嫌だよ……。
また俺のせいで大好きな人を失うのか?
……俺のせいで。
なんでだよ……ラディの助けになるって言ったじゃんか……何で負担にしかなっていないんだよ……なんで、俺なんかを助けるんだよ……こんな何にも出来ないリスの俺をーーーーー。
「ピ……ピピ……」
起きて……起きてよ……。
そう願いながらラディに擦り寄ると、まだ意識があるみたいで、顔だけを俺に向け苦しそうに……でも俺を心配させまいと弱々しく笑ったラディ。
「……リ、ツ……だ、いじょ……ぶ、けが……な、い…?」
「ピ……ピピ」
(うん、うん……ラディ……)
口からも大量の血を吐くラディ。
俺の目からは大量に涙が零れた。
……失いたくない。ラディを……俺の大切な人を。
【カ、カラダガ……イタイ……イタイイタイイタイーーーーーーーーーーーーグワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!】
魔獣が俺とラディに向かって突進してくる。
絶対にこんな事有り得ないのに、今だけは全ての時間がゆっくり流れているように俺の目にはハッキリと見える。
「ーーーっっ!!ラディアスっっ!!リツっっ!!ーーーーくそっ!!間に合わねぇ!!!!!」
広い森を手分けして探していたのだろうか、ガロウィさんが来たようだ。
魔獣に向かって剣を振り上げているが、数秒遅い。
……あぁ、俺死ぬんだ。
命の恩人までも犠牲にして。
ーーーーーねぇ、俺はそれでいいの?
ーーーーーラディを支えていくんじゃないの?
ーーーーー母ちゃんとの約束も諦めるの?
ーーーーーまだ何もやれてないのに、本当にいいの?
ーーーーーいいわけ……ない。
ーーーーーいいわけないだろ!!!!!!
俺だってまだやりたい事が沢山ある。
もっと色々な世界の事だって知りたい。
獣人化して魔法だって使いたい。
ライオネルやボブ、ヘレスや屋敷の皆ともっと仲良くなりたい。
ーーーーーラディともっと一緒にいたい。
絶対にここでは終わらない!!!!!
「ビュュュュュ!!!!!!!」
俺はラディを守るように小さなリスの身体で前に立つ。
そして、強いブロンドの瞳で魔獣を捉える。
【ギャァァァァァァァ!!!!!!!】
間近に迫る距離、だけど恐怖は感じない。
ドクドクと心臓が脈打ち、身体がすごく熱い。
大丈夫……ラディは絶対にーーーー俺が守る!!!!
【グワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!】
「ビュィィィィィィィィ!!!!!!!!!」
(俺達に近づくんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!)
ガシャンッと何かが外れた様な音を感じたと同時に、ふつふつと身体の中で何かが膨れ上がる。
……何だろう、この感覚……力が漲るーーーー。
身体が最高潮に熱くなった瞬間ーーーーー俺の身体は眩い白い光を放ち、広大な森を覆った。
その光を浴びた魔獣は苦しみ悶え、次第に白色に光る粒子へと変わり砂の様に溶かされていく。
【グ、クワァ……コレ、デ…ヤット……スマナイ……タス……カッタ、リュウノ……コヨーーーーー】
シュワシュワと魔獣が白い粒子となり、風に運ばれて消えていくと、俺から放たれる光も俺の中に吸い込まれる様に消えていった。
ーーーー何が起きたのか。
ボロボロな身体に理解が追いつかない真っ白な頭。
(そうだ!!ラディ!!ラディの怪我をっっ!!!)
早く処置をしなければラディは死んでしまうーーー。
緊迫した気持ちで振り向く俺だったが、ラディの状態を見て唖然とする。
うつ伏せで意識を失い倒れるラディの背中には、先程まであった酷い傷はどこにもなく、服だけが血まみれで無惨に破かれているだけだった。
呼吸も、少し乱れているけど正常だ。
「ピュ……ピ、ピィーーーーー」
(な、何で?……でも、無事ならよかっーーーーーー)
安心すると同時に視界が歪み、俺も意識を失う。
「おい!リツっっ!!!ラディアスも!!!一体何が起きたんだよ……くそっ……無茶しやがって!!!!」
枯れ果てた暗い森は、いつの間にか自然豊かな森に戻っていた様で、ガロウィさんの声が明るく照らされる森に響く。
ーーーー俺、今度は大切な人守れたかな?
ーーーーねぇ、母ちゃん見てる?
ーーーー俺……頑張ったかな?
ーーーー母ちゃんが生きてたら沢山褒めてくれたかな?
ーーーーねぇ、ラディ。
やっぱり、怪我を負わせた俺の事……嫌いになっちゃったかな……?
もし、俺の我儘な願いが叶うなら……頑張ったねって…もう一度だけ優しい手で抱きしめてほしいな……。
応援ありがとうございます!
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