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15さい
59話 パーティーの準備
しおりを挟む5年前の魔獣の一件で、俺に神聖魔法の素質がある事が判明し、それから一度オルビセリア国の王都へ赴き、国王様と王妃様にお会いした事がある。
ハビー先生が教えてくれた通り、神聖魔法の一つである治癒魔法が使えるだけでも珍しいのに、俺は浄化魔法の適性もあり尚且つ魔力量も高かった為、オルビセリア国の王様直々にお手紙が届き、カオン様とラディと共に向かったのだ。
獣人化できてまだ日も浅く、尻尾すら仕舞えない状態だった俺はいつもの様に人見知りを発揮して、ラディやカオン様に隠れて震えていた。
……だが、目の前に佇む王様は、俺が想像していた厳つくて怖そうな王様とは打って代わり、王様も王妃様もとても優しく笑顔で迎え入れてくれたのだ。
それから俺は拙い話し方で、あの一件を王様と王妃様にも話したり、王様や王妃様のお話を聞いたりして初めての謁見は終了した。
王妃様は男性の小さな犬の獣人で、王様との間に息子が2人いるらしい。
次会う時は息子とも会ってほしいと言われたが、それから日程が合わずらあれっきり一度も会っていないのだった。
だから今日のパーティーで久しぶりにお会い出来るのが少しだけ楽しみだったりもする……。
……ちなみに尻尾の仕舞い方はその時王妃様から教えてもらったんだ!
俺の尻尾は大きくて、獣人の姿だと邪魔だなぁって思っていたんだけど、魔力操作で尻尾だけは仕舞う方法があるみたいで、これが結構簡単だった!!
だから15歳になった獣人姿の俺の尻尾は綺麗に仕舞われていて、穴あきズボンを履かなくても良くなったのは嬉しい事だ。
それに、尻尾を触られるとゾクゾクして変な感じにもなるから……。
就寝前いつだったか……ラディが執拗に尻尾や耳を触ってきた時の事を思い出して俺は身体を震わせた。
「ーーーーーリツ!!!……はぁ、見つけた」
「うわぁ!!ら、ラディ!?」
背後から気配もなくギュッと抱きつくラディに驚く。
「庭園に行ってから帰りが遅いと思って見に行ったらリツはもう居ないし……探したんだからね」
「ご、ごめん……」
俺はラディに向き直り見上げると心配させた事を素直に謝った。
「まったく、毎回目を離すと居なくなるし…本当に悪いと思ってるのかなぁ?」
「うん!思ってる思ってる!もうしないから!!」
ラディの説教は長くて出来れば聞きたくない。
だから俺はラディを見上げて強く頷いた。
そんな俺を見て意地悪に笑うラディは人差し指を形の良い唇に当てた。
「ねぇ、リツ…本当に悪いと思っているならどうしたらいいか教えたよね?」
「う……え、え~と……」
「まさか、できないなんて言わないよね?僕の言った事が聞けないんだったらリツに分かるようにもっと沢山お話しなくてはいけないんだけどーーーーーーー」
「わ!分かったから!……ちょっとしゃがんで……」
顔を赤くしてそう言うと、それを見て微笑んだラディが素直に手を膝に当て腰を屈め、瞳を閉じた。
俺はそんなラディの顔を両手で包むと背伸びをして顔を近づけ……チュッと軽く唇を合わせる。
「はぁ、これでーーーーーっうおっ!……んっ……ふ……んぁ」
軽くキスをして直ぐに顔を離す俺の後頭部に、瞬時に大きな手が添えられ一気に深く唇が重なる。
「ん……ふぁ、んっ……ちゅく……むぅーーーーはぁ、はぁ……」
ちゅくちゅくと扇情に響く音を耳で感じながら、舌で俺の口を何度も翻弄したラディは、ゆっくり唇を離すと、呼吸を乱し涙目になった俺の額を自身の額にくっつけ満足そうに微笑んだ。
「ん、いい子だね……今度からは気を付けてね?分かった?」
俺はただコクコクと頷く。
……うぅ、こんな階段の踊り場で堂々とキスして誰かに見られてたらどうするんだよ!!!
そう思うも、今の俺の状態では声に出す事すらままならなくて泣く泣くその言葉を飲み込んだ。
「さぁリツ、パーティーに行く準備をしないと。
リサとミーナとマオンが張り切ってるぞ」
「え?なんーーーーーうあぁっ!!」
コテンと首を傾げて見上げた瞬間、ラディに横抱きにされて目を見開く。
「え?な、なに!?」
「目を離すとまた直ぐどこかに行ってしまいそうだから僕が連れていく」
「だ、大丈夫だって!だから恥ずかしいからぁ!!降ろして~!!!!!!」
グイグイとラディの胸を押す俺だったが、体格の良いラディに叶うはずもなく、横抱きに抱かれたまま俺は連れて行かれるのだった。
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