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15さい
65話 意地悪な令嬢①
しおりを挟むーーーーーーと、思ってワクワクしてたのに……。
国王様達との話が終わった後、先程の令嬢に対する行いについて俺はラディに怒られたのだった。
「リツ、さっきバルディン伯爵令嬢の口車に乗せられて突っかかろうとしたよね?」
「うっ!……だ、だってアイツが俺の事チビって……」
「だとしても、国王様主催のパーティーで喧嘩していいわけではないでしょ?」
「うぅ……そうだけど……」
ぐっと口を閉じて俯く俺に、ラディは腰を落として俺を見上げる。
「リツ…確かに先に意地悪を言ってきたのはバルディン伯爵令嬢だけど、この場で騒ぎを起こせば周りの人は今日初めて見たリツよりも、長年交流のあったバルディン伯爵家の肩を持つかもしれない」
「……うん」
「社交界って言うのは煌びやかな見た目とは裏腹にとても怖い所なんだ……何気無い1つの行動で命の危険に晒される事もある。いくら気に触る事を言われたとしても後先考えずその時の感情で行動してはいけないんだ。お利口さんなリツなら分かるよね?」
「……うん…分かった……ごめんなさい」
頭上の耳を力無く垂れ下げ俺はコクリと頷く。
「ん、良い子だね。ありがとうリツ……僕の方こそごめんね、ちゃんと傍に居てあげられなくて……僕はリツが思っている以上にリツが大切で…その分心配なんだよ」
ギュッと抱きしめて頭を撫でてくれるラディ。
俺はそんなラディの肩口に顔を埋めた。
「さぁ、リツ……お菓子でも取りに行こうか」
「っ!!うん!!お菓子!早く行こ!!!」
ラディのその言葉に瞬時に顔を綻ばせた俺を見て「全く……切り替えが早いんだから」とラディは笑った。
俺がそんなラディの手を引いて先程のスイーツコーナーへ連れて行く最中、ラディはされるがままに着いてきてくれたのだった。
「どれにしようかなぁ~。なぁラディ!ラディはどれがいい?」
「僕は何でもいいよ。リツが選んで」
「んぉ?そうか?う~ん……それじゃあラディはこれね!あんま甘そうじゃないやつ!!」
ラディは甘い物があまり好きじゃないから、俺は小さなパイ生地にブラックチョコレートに似た黒いチョコが入っているものをお皿に乗せた。
「ありがとね、リツ」
「えへへ~、あっちで食べよ!」
優しく大きな手で撫でてくれるラディに無邪気に微笑んで見上げると、ヒョイと俺の持っていたお皿を持ってくれた。
……そんな所もイケメンで本当、凄いよラディ……。
俺もラディを見習ってもっとカッコイイ男にならないと……と心の中で意気込む俺だったがーーーーーーー。
瞬間ーーーー誰かにぶつかった衝撃と同時にビシャッと言う音が耳を掠める。
じわじわと冷たくなる俺の左肩と女性の声。
「わぁ!す、すみません!!大丈夫でしょうか!?」
「え?う、は、はい……大丈夫です」
一瞬何が起こったのか全然分からなかったが、どうやらぶつかった拍子に何処ぞの令嬢が持っていた飲み物がかかった様だった。
「リツ、平気?怪我はない?」
「う、うん……でも折角貸してくれた服……」
「そんなのどうでもいいから。ちょっと拭くもの持ってくるから絶対に此処で待ってて」
慌てている令嬢には目もくれず、俺を心配そうに見つめたラディが近くにいる侍従の元へ歩く。
……ラディ、少しくらい令嬢も心配してあげればいいのに、本当に無表情なんだから……しょうがない!俺が優しく宥めてあげよう!
そう思って振り向いた俺は、ぶつかって来た令嬢を見て硬直する。
……あれ?何でこの人、俺の事睨んでるんだ?
「あ、あの……」
「……獣人のくせに……」
「……え?ーーーーうわ痛っ!」
俺を睨みつけ、ボソッと小さく呟く令嬢に強く腕を引かれ、無理やり連れ出される。
そんな状況に慌てて身体の力を入れるも、俺より身長の高い令嬢はビクともしなかった。
……あれ?なんかこれヤバくね?
あぁ、ラディ!!俺またラディに怒られるじゃんか!!もう嫌なんだよぉぉ!!
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