リス獣人の溺愛物語

天羽

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15さい

88話 求めるのは

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ラディ……。

会いたい、寂しいよ……怖い、早くその大きな腕に包まれて、優しくて落ち着く匂いをいっぱいに吸い込んで……そして、この昂る熱を沈めて欲しい。


それは、ラディじゃないと嫌だ。
ラディ、ラディ……早く俺を触ってーーーーーーー。







「り、リツ……?」



その声にはっと意識が覚醒し、目の前の存在を見て目を見開く。



「ラ…オ……」



「リツ……苦しいの?それって……は、発情期だよね?」


そこには眉を下げ、頬を赤く染めたライオネルが居て、ドアの近くにはバセスさんも心配した様子でこちらを見つめている。


……え?な、んで?


自分の体勢を見ると、俺はベッドに乗り上がったライオネルの首にギュッと抱きついていて、顔を赤く染めたライオネルは至極困惑している様だった。

それでも、発情期のせいかフワフワと朦朧する頭ではその状況を深く考える事が出来ない。



……でも、これだけは分かる。




俺が求めているのは、この存在ライオネルじゃないーーーーー。




声や匂い、体温……全てが違う。
俺の身体が……心が求めているものは……俺が今この世界で一番大好きで、一番安心できる存在…ただ1人だけなんだ。



「ご、ごめんラオ……大丈夫だから、1人にしてほしい……」



俺は回していた腕をラオの首から離し、両手で密着する肩を強く押す。



「リツ……でも苦しいならーーーーーー」


「お願い……ひとりにーーーー」


「リツっ!!」


「……っくぅ、はっ…はぁっ……ふっ……」


次第に身体が熱くなり始め、呼吸も苦しくなってくる。
俺は、荒く熱い吐息を吐く。
これ以上一緒にいたら……俺は……。


「ごめん…ラオ……お願い……っ……」



俺は大きな瞳から静かに涙を流し、弱々しく呟いた。
ーーーこんな姿、見られたくない……。

自分が自分じゃないみたいで、それが凄く気持ち悪い。




ライオネルはそんな俺を見ると、くっ…と唇を噛み悲しみの滲む表情を向けると、ベッドシーツを強く握りしめた。



「……分かった。授業は俺から国政の先生に言っておくから気にしないで……本当に苦しかったら絶対に兄さんを呼ぶんだよ。どうせ迷惑だとか考えてるんだろうけど、あの兄さんがリツにそんな事思うなんて万が一にも無いから……それと……困らせて…ごめん……」



言うが早いか、俯いたまま部屋を出ていくライオネル。
一緒に居たバセスさんも心配気に俺を一瞥した後、素早くお辞儀をして部屋を後にした。


……シン……と静まりかえる部屋。


俺の熱い吐息の音だけが響く。




……ラオ、心配して来てくれたのに……あんな追い出す様な言い方して……本当に俺は最低だ……。







ーーーーーーでも、嫌だった。
ゾワゾワと毛が逆立つ感覚……獣の本能で、ライオネルを警戒していた。

だから、もっと近付かれるとライオネルをあからさまに拒絶してしまいそうで、傷付けてしまいそうで……怖かった。
兄弟の様に思っているライオネルを傷付けたくない。
そう思って言ったのに、部屋を出て行ったライオネルは酷く傷付いた顔をしていた気がしてならないーー。



……発情期が終わったら、ラオに謝ろう。





そう思い、俺は熱く火照った自身の身体を震える手で抱きしめた。


ーーもう、我慢するのも限界に近い。

まだ満月の日まで5日あるのに、どうして俺の身体はこんなにも熱いのだろうか……。


「う、うぁ……ん……くぅ……はぁ」


布を押し上げ窮屈に感じる下半身は、熱を持ち先走りが出ているのかパンツが濡れているようだった。


俺は自身の手をゆっくりスボンの中に入れて、自身のそれをやんわりと握る。



……ラディがやってくれた様にやれば、俺も……。



俺はそのままゆっくりと上下に擦り上げる。
手を早くしたり、亀頭を指の腹で撫でたり、ラディにやられて気持ち良かったことを思い出しながら必死に手を動かす。



「ふ……ふぁ、ら……らでぃ、んっ……はぁっ……な、なんでぇ……?」



でも、ラディがやってくれるのと全然違う。



ーーーーー全然気持ちよくない。



「ふぇ……で、できな……らでぃ、らでぃ……」



ラディに会いたい。
ラディにキスしたい。
ラディの手で気持ちよくなりたい。


早く、早くこのどうしようもない昂りを鎮めて欲しい……。




迷惑だって思って我慢してた。
こんなにも早く助けを求めちゃいけないって……自分で何とかしないとって……。





……でももう、我慢……出来ない……。





「ふはっ……うぅ、ごめん、なさ……らでぃ……」





朦朧とする頭と涙で歪んた視界の中、俺は首に掛けられた魔法石をギュッと握りしめ、微量の魔力を流したーーーーーーーーー。












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