リス獣人の溺愛物語

天羽

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17さい

111話 ラディのために

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「ーーーラディ!!!!」



駆け足で中庭へ行くと俺は大きな声でその名前を呼ぶ。



「っ!リツ……どうしたの?何かあった?」


俺をその綺麗な瞳に映した瞬間、ラディの表情はぱぁっと明るくなり、周りを囲む他の生徒を放って瞬く間に俺の元へと近寄る。




俺は眉を寄せ近付いたラディをじぃーっと見つめる。


……最近、まじまじとラディの顔を見る事が無かったから気付かなかったけど……ラディ本当に疲れた顔してる……。


今だって、中庭で騎士科の生徒達に囲まれて話をしていた様だし……きっとラディはどこへ行っても休まる場所が無いんだと、その時俺は初めて気付いた。

こんなにもラディと一緒に居るのに……俺はラディの恋人なのに……大好きなラディの体調1つ気付いてやれないなんて……本当に俺は馬鹿だ。


俺は眉を下げて背伸びをし、ラディの頬に自身の小さな手を添える。



「ラディ……何かあるのはラディの方じゃん」


「……リツ?」


「俺だってラディの力になりたい……どんな小さな事でも全部俺に言って欲しい、ラディは俺の恋人でしょ?」


俺は頬に添えた手をそのままラディの額に当てる。


……少し…熱い気がする。
何かあったら絶対に自分に言ってっていつも口酸っぱく言うクセに……自分の事は全く言わないラディ。

俺に心配かけさせないつもりなんだろうけどさ……俺だって何も言われないと……寂しいんだからな。


……だから……。


俺はラディの制服をギュッと掴み、引き寄せる。


「……っっ!!」


ラディの顔が俺へと近付き、その瞬間周囲が少しだけザワついた様な気がした。


「……リツ?」


「ラディ……今日!絶対早く帰ってこいよ!!!!」


「……え?」



俺の言葉に唖然とするラディ。それと共に、昼休憩終了のチャイムが校舎全体に鳴り響く。


「あ!やばっ俺次移動だから!!じゃあラディ、約束だからなーー!!!」


「ちょ、リツ!……はは、全く……」


俺はニカッとラディに笑みを向け手を振りながら、呆然と俺達のやり取りを見つめていた生徒達をお構い無しに駆け足で中庭を後にしたのだった。








。。。。。。。。。






「……ぜぇ、はぁ……よ、よし……材料はこのくらいで大丈夫だな……」



2つの大きな袋を両手に持ち、それを部屋へと持ち帰る頃には荒い呼吸を繰り返す俺は、自身の体力の無さを嘆いた。
授業が終わったあと直ぐに学園寮近くのマーケットで必要な材料を買い、俺は息を整えながらもキッチンへと買った材料を置いていく。


……俺がラディに出来ることなんて数少ない。
だけど、少しでも助けになりたくて……だから……俺が出来る事で何かをしようと思った。


元々学園生活に慣れて落ち着いたら俺だって弁当とか自分で作ろうと思ってたし、いい機会だと思いながら俺は着替えたスウェットの袖をめくる。



「ラディ体調悪いみたいだし……栄養があって消化のいいものが良いよな……うん、よし!!」



俺は気合いを入れると、包丁片手に慣れた手つきでニンジンやタマネギ、ハクサイや大根を微塵切りに切り、ベーコンは1口サイズに切っていく。

オリーブオイルを引いた鍋に、切った具材を全て入れ炒め、ある程度炒めたら水とコンソメ……そして俺の大好きな白米を入れる。

塩、コショウなどなどで味を整えて……煮だったら溶き卵を入れてトロトロ半熟くらいで火を止める。

最後にアオネギとゴマをパラパラしたら……。



「出来た!ガオルグさんお墨付き!タマゴのスープリゾット!!!」


味見したけど我ながらいい出来で、上機嫌に頭上の耳が無意識にピクピクと動く。



「へへっ!やっぱり俺って才能あるかも……」


そう自画自賛しながら鍋に蓋をした時、ガチャと部屋のドアが開いた音がして、俺はすぐさま玄関へと軽い足取りで向かう。



「ラディ!!お帰り、約束守ってくれてありがとな!」


「ただいま。今日は特に予定無かったしーーーーって……すごくいい匂いがするね、リツが作ったのかな?」


ラディは靴を脱ぐとそう言いながら俺にギュッと抱きついた。


「うん、ラディの為に作ったんだ……ラディがきちんと食事をしていないと報告がありましたので」


少し不貞腐れてそう言うと、ラディは少しだけ驚くも直ぐに表情を綻ばせ、俺の頬に軽くキスを落とす。


「ふぇ!ら、ラディ!!」


「あはっ、ごめん凄く嬉しい……ありがとう」


素直な気持ちがどこか恥ずかしくて、俺は咄嗟に目線を逸らす。


「ら、ラディ……先にお風呂入ってきなよ、ご飯はそれから!」


「うん、リツも一緒に入ろ?」


「え!?……お、俺も?」


「ん?……なんでそんなに恥ずかしがってるの?別に初めてじゃないんだし、いつもはもっと恥ずかしいこーーー」


「わわわぁーーー!!!分かったから!!それ以上言うなぁ!!!」



顔を真っ赤にした俺は、慌ててラディの背中を押して風呂場へ直行したのだった。








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