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事例3 正面突破の解放軍【解決篇】

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 縁が真犯人の名前を口にした途端、周囲の空気が凍り付いた。尾崎は信じられないといった様子で、縁と中嶋の間に視線を往復させる。楠木はただただ深い溜め息を落とした。この空気を楽しんでいるかのごとく、坂田はただただニタニタと笑みを浮かべる。レジスタンスリーダーだと指摘された中嶋本人は言葉を失っているようだった。いいや、ショックのあまり言葉を失っているように振る舞っている――と表現すべきか。

「ちょっと待ってくれ……」

 凍り付いた空気を払拭すべく、倉科が口を開く。恐らく、この時点では誰も真実を受け入れていない。もちろん、縁だって明確な根拠などがなければ、中嶋がレジスタンスリーダーであるなんて信じられないだろう。事実、こうして確信を持っている今でさえ、何かの間違いであって欲しいと思っているのだから。

「もう一度確認しておきたい。解放軍が食堂を占拠したのはいつ頃の話だ?」

 倉科は最初から事件に関与しているわけではない。大まかな流れは確認しているだろうが、事件が起きた直後のことを、もう一度だけ確認しておきたいのだろう。

「えっと――。お昼休憩に入って、それからお昼の終わりを告げるチャイムが鳴る前に食堂が占拠されたっすから、正午から午後一時の間だと思うっす」

 倉科は尾崎の言葉に大きく頷くと、念のためといった具合で縁に「それで合ってるか?」と聞いてくる。

「えぇ、正午のチャイムから休憩の終わりを告げるチャイムの間に、食堂は占拠されました」

 縁の言葉を聞いた倉科は、大きく溜め息を漏らした。

「その食堂が占拠された時に、中嶋もその場にいたと言うんだな?」

 念を押すかのように、やや語気を荒げて問うてくる倉科。縁は頷いた。食堂が占拠された時、中嶋は食堂にいた。もちろん、頭からラバーマクスを被ってだ。

「えぇ、私の推測が正しければ、そういうことになります」

 こんなことを願うのは変な話であるが、この推測を崩せるものなら崩して欲しい。縁自身がたどり着いてしまった答え――それが間違いであることを証明して欲しい。縁はまだ覚悟を決めることができなかった。

「だったら中嶋に犯行は無理だな。今日の昼、中嶋は俺と飯を食ってたんだ。それこそ正午から午後一時過ぎまでな――。つまり、アンダープリズンが占拠された時、中嶋はアンダープリズンにいなかったことになる。俺と中嶋が午後一時過ぎまで一緒にいたことは、俺が保証するよ」
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