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第2章事前対策
悪役令息の事考えてたら兄が話しかけてきた
しおりを挟むアウステル公爵家惨殺事件から5日がたった。あの後、私の捜索に来た自警団と傭兵の協力により、アウステル公爵家から発生した火事は森林に広がる事なく消化された。
ライザがウェルネ公爵家に帰ると、いつもは甘い両親にかなり怒られたが、アウステル公爵家の話を自警団から聞いた途端に顔を真っ青にして私を抱きしめ、何度も無事を確かめられた。
因みに、この時は私の事を嫌っている兄も私の様子をちらりと見に来た。この兄についてはまた後日語ろう。
そして気になる悪役令息ルイスだが、現在国内の親戚の家に身を寄せているとか。
ゲームの通りならこの後、父方の妹、つまり彼から言えば叔母、この方は隣国伯爵家に嫁いでるが、わざわざ夫婦共々この国に来て、成人までの身元引き受け人となる。
夫婦で公爵家まで来て(隣国伯爵家は次男に任せてくるらしい。)アウステル公爵家の舵取り一切合切やってくれたそうだ。
だが、この隣国の叔母夫婦にも何か秘密があったようだ。それを知ったルイスは更に人間不信を深め、叔母夫婦を公爵家から追い出す。
何故こんなに詳しいかと言うと、この叔母夫婦もルイスの闇を作る出来事である為、ルイスルートで上記のように語られていた。叔母夫婦の秘密が何かは語られ無かったけど。
(公爵家乗っ取りでもしようとしたのかな?)
そんな事もあり、ルイスは学園入学時には若くして公爵家当主として自立し、誰にも心を許さず、誰にも陥れられたくはないと考えの元、母方の縁者で従兄弟の第2王子の手下になり陥れる側になろうとする。
そして皇太子を陥れる側になる。
ルイスルートではヒロインによって徐々に心を浄化されて、最後に第2王子ではなく皇太子の味方に付くみたいだ。
これから悪役令息は家も燃えたから邸宅を建て直さなくてはならないし、身の振り方を本人が考えるのか、周りの大人が考えるのかはわからないが…(本人は考える余裕は今ないだろうな…)
犯人が誰なのかわからない現状色々不安だろうと思う。(ゲームでは犯人は誰なのか、その後どうしたのかは語られてない。)
私としては、彼のルートに行くと私が死亡するエンドもあるが、事件を未然に防げたら悪役令息の誕生回避出来るかと思ったけど。気付いて行動したのが遅かった…
「ライザ。」
「!お兄様!」
私の兄が話しかけてくる事が最近無かったので急に話しかけられて驚いた。
彼の名はグレイ・クラエス このウェルネ公爵家の跡取りだ。
私の兄、グレイは黄金色の髪に翡翠の瞳をしている。腹違いの兄妹で、前妻の子だ。2つ年上で真面目過ぎる人間。金遣いの荒いウェルネ公爵家の両親と、その中でも飛び抜けて高慢で金遣いの荒かった私を嫌っている節がある。
その反動により、謙虚で質素倹約のヒロインに惹かれるのだろう。
「ライザ、おまえは何で昨日夜に馬を走らせて隣の領土に行ったんだ?」
「私が馬に乗って駆けまわろうが、お兄様には関係ないでしょう?」
ライザとして接してきたせいで、仲良くする方が得策とは思いつつも思わずツンっと返してしまった。
「…時間が時間だぞ。おかしいだろ。おまえは女なのだからちゃんと考えろ。しかも炎の中に飛び込んで見知らぬ人間を助けただと?頭を打っておかしくなったのか?」
「私、頭を打ったのですか?」
「ぁあ、転んで凄い音がしたかと思ったら、それで2日寝込んでいた。そしたら目覚めた途端に馬に跨り隣の領土へ走らせ、炎に飛び込んだ。どれだけ強烈に頭を打ったらそうなるのかと、医者もびっくりしていたぞ。」
成る程…。通りで後頭部にタンコブのような盛り上がりがあるとは思ってた。髪をとかされる度に痛かったし。
「心配してくださっているのですか?」
「…。おまえが人の為に命をかけたなんて、信じられないだけだ。」
「命をかけたなんて…大袈裟ですわ。ちょっと火が激しく燃ゆる中にいる人間を迎えに行ったくらいで。」
「それがちょっとと言うなら、命がいくらあっても足りないから今後は慎めよ。」
「善処致します。ですが、お兄様もあの場にいれば同じ事をした様に思います。」
そう言った私に向けて、何故か兄は翡翠の目を見開いて驚いた顔をしていた。
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