愛なんかいらない。幸せになれなくても、復讐さえ出来ればそれでいい。お母様、悪いけど私のために悪者になって

 父は母を全力で愛していた。
 愛する人を失った悲しみから父は私を忘れ孤独の中で生きるように。
 そんな父に好かれようと私は努力を惜しまなかった。
 いつか私を見てくれると信じて……

「新たな家族だ」

 ある日、父は後妻だけでなく義兄と義妹となる人物を連れてきた。
 父は愛していた母を忘れ理想的な幸せ家族を手に入れ、私は遠く離れた場所から四人を眺めるようになった。

「私も王子の婚約者候補ですか?」

 王子の婚約者候補の一人として私の名も上がり、王子の婚約者になれば父に認めてもらえるかもしれないと意気込んだ。
 必死になるも空回りで上手く行かず、義妹の方が相応しいと囁かれる。

「あの方、義妹に嫌がらせしているそうよ」

 追い詰められていく私は、知らないうちに義妹にやつあたりをしていたらしい。
 私も知らない私の噂に雁字搦めになり、私はおかしくなってしまったのかと思うまでになっていた。

「君は自身が私の婚約者と吹聴し、周囲を黙らせていたそうだなっ。私が誰を選ぶかは私が決める。君を選ぶことは無い」

 そして卒業パーティーで王子と義妹の婚約が発表されると同時に、私の醜態も公表された。
 身に覚えもないことだが、周囲も頷いているので私は義妹に対して知らないうちに酷いことをしてしまっていたのだと受け入れるしかなかった…

「お前は必要ない」

 屋敷に戻るも父により貴族を除籍され屋敷からも追い出され捨てられた。
 平民となり行く宛もなく逃げ込んだのは今にも崩れそうな小屋。
 そこで私は体調を崩し呆気なく死んだ。
 途切れ行く意識の中、母の死は私が産まれたからだと思い出す。
 母を誰よりも愛する父に嫌われる理由は、私が生れたからだったと思い出し死んだ…

「私なんか……産まなきゃよかったのに……」

 死んだ…
 はずだったのに、私はあの人達が訪れる前の過去に戻っていた。
 いくら努力しても報われない。
 努力なんて意味がないのを知らないあの頃に。
 何をしてもダメなら何もしない。
 いや、望まず私なんかを生んだ女の名誉を傷付けてやると決意。
 そして、あいつらにも……

「あんたの大事なもん、ぶっ壊してやる」

 愛なんかいらない、幸せになれなくてもいい。
 復讐さえ出来れば……私は……幸せ……
 それが私の……幸せ……
 誰にも愛されなくたって悲しくなんてない。
 お願い、こんな私に優しくしないで…

*タグは最小限にしておりますので、ラストがどうなるか……
 お気を付けください。
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