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19巻
19-1
ナンバー11の守護者――イレブンから、瘴魔に支配された都市の攻略を依頼されたシン一行。
灼熱の砂漠地帯を突破し、溶岩が溢れ出るナンバー43の聖地に侵入したシンは、炎の瘴魔アングアイニとの決戦に挑む。
ゲーム時代を上回る戦闘力を持ったアングアイニを、仲間と協力して打ち倒すと、そこには滅多に入手できない魔法金属、キメラダイトの山が残されていた――。
キメラダイトを回収したシンは、周囲に目を向ける。
アングアイニの残骸は、元が鉱物系モンスターだからか、素材の宝庫だった。キメラダイトに気を取られていたが、改めて調べると、他にも様々な鉱物、鉱石がある。
鍛冶師であるシンは当然として、シンの鍛冶作業を手伝い、鍛冶スキルのレベルが上がったサポートキャラのシュニーも、素材調査に加わった。鉱物や鉱石の判別ができるからだ。
他のメンバーはティエラを中心に、瘴気に侵されたものが残っていないか聖地内を調査している。
『聖地の周りにいたモンスター、赤き核柱は、どれもコアが黒くなって地面に転がってるわ。アングアイニと何かつながりがあったのかもね』
壁の上に登って周囲を確認していた、サポートキャラのフィルマから連絡が来る。もしまだ残っているようなら、戻る時にもう一戦する必要があったが、手間が省けた。
「そういえば、この聖地にはコアがなくなったわけだが、放置なのか?」
なんとなく気になったシンは、近くで調査していた老紳士、ゲルゲンガーに問いかけた。
「島の掌握が終わるまではそうなります。いずれ主のコアから、この地を管理するため、権限を一部譲渡したサブコアが設置されるでしょう。聖地となる場所にはほぼ太い地脈が走っているので、守護者にとって非常に有用なのです」
この付近の地脈の乱れは徐々に解消されていると、エレメントテイルのユズハから聞いている。
「地脈か……」
ゲーム時代のプレイヤーは、地脈などあまり気にしなかった。
一方この世界では、様々な現象に地脈が関わっていることは、これまでの経験でわかっている。
獣王国ファルニッドでも多少調べたが、地脈について理解できているとは言いがたい。
一度しっかり調査する必要があるなと、シンは脳内メモに記しておく。
「それにしても」
つぶやきながら、シンは足元の残骸から青白い塊を引っ張り出した。
塊の正体はオリハルコンだ。これ以外にも、ミスリル、アダマンティン、ヒヒイロカネなど、貴重な金属がゴロゴロ出てきた。
キメラダイトがあったのだから、その生成素材とされているこれらが出てきてもおかしくはない。
ただ、アングアイニと戦っていた時は、切り落とした部位が消滅していたのに、とどめを刺した後はアイテムが残るというのも、妙な話である。
この件には瘴魔が関わっているので、正規の守護者とは違うのかもしれない。
しかし、レアな鉱物がこうも大量に出てくると、一欠片のオリハルコンを求めて山々を渡り歩いていたゲーム時代が、馬鹿らしくなってしまいそうだった。
また、スキルでわかったのだが、ここで採れた鉱石は、ほぼ精製状態と同じ高純度だった。
素材として手に入れた鉱物を、精製して純度を上げたり、他の鉱物と混ぜて合金を作ったりしていたゲーム時代には、あり得ないことだ。
まるでイベント報酬で配られるアイテムのようである。
一応、所々混ざったり層になっていたりするが、それは些細なことだった。
顔をしかめていたシンに、シュニーが問いかける。
「純度が高いほうが、守護者にとって、都合がよかったのでしょうか?」
「たぶんな。ドロドロに溶けてた時は、それこそ全身キメラダイトみたいな状態だったのかもしれない。純度が低い金属を混ぜると脆くなるのは、鍛冶師の間じゃ常識だしな」
守護者の持つ特殊な力か、はたまた地脈のエネルギーの影響か。そんな摩訶不思議なことが起こってもおかしくなかった。
とはいえ、守護者ナンバー43は倒してしまったのだから、悩んでも仕方がない。
シンはさっさと回収を終わらせようと、片っ端からアイテムボックスに収納していく。
ゲーム時代は、地面から掘り返して持ち上げられる状態にしないと、カード化もアイテムボックスへの収納もできなかったが、今ではその縛りもなくなっていた。
試しにやってみたら、同じ素材がまとめて収納できたのだ。
シンが触れている部分と物理的につながっている範囲、という制限があるようだが、いちいち掘り返さなくていいだけで作業効率は段違いだった。
シンがやっているのを見ていたシュニーも試したところ、同じように問題なく収納できた。本人は少し驚いていた。
「シュニーも知らなかったのか?」
「はい。こういった使い方をする機会がなかったので」
シュニーへの頼みごとと言えば、大抵が戦闘や植物にまつわる協力要請だった。
シュニーの戦闘力は知れ渡っているし、ハイエルフが植物に詳しいことは、この世界では常識である。こういった鉱物採集はドワーフの領分だった。
「『栄華の落日』後にできるようになったのか、私の鍛冶の技能が上がったからなのか。検証は難しいですね。もしかすると、アイテムボックスを持っている人の中には、この手段を知りながら隠している人もいるかもしれません」
この方法なら、鉱物の先端さえ見えていれば、掘り返さずに採取できる。普通はシャベルやピッケルで地道に掘らなければならないのだから、効率は比べ物にならなかった。
アイテムボックスの容量次第では、鉱脈の一部を根こそぎ回収、なんてこともできるかもしれない。それが希少金属なら、小出しに売るだけで一生安泰だ。
「シュバイドたちにも試してもらうか。ティエラもアイテムボックスが使えたらいいんだけど」
こちらの世界の住民がアイテムボックスを使うには、『拡張キット』というアイテムが必要だと、ベイルリヒト王国にいる魔槍使い、ヴィルヘルムから聞いた。
『拡張キット』は、ゲーム時代にシンも使ったことがある。
【THE NEW GATE】では課金アイテム扱いで、イベントやクエストの報酬でも多少は手に入るし、〇周年記念といった特別な時期に、プレゼントされることもあった。
アイテム保有の増加量が少ないとはいえ、価格が安く、効果を実感しやすい『拡張キット』は、プレイヤーが最初に手を出す課金アイテムだった。
シンはアイテムボックスの容量をとっくに最大にしていたので、余った『拡張キット』は貴重なアイテムとのトレードに使ってしまった。なので手持ちの在庫はない。
他の『六天』メンバーも同じようなものなので、ギルドハウスを回っても残されている可能性は低いだろう。
ゲーム時代は、一定以上の難度のダンジョンで、極稀に宝箱から手に入ることもあった。しかし、この世界ではどうかわからない。
手に入れるためには、持っている人物から譲ってもらうのが一番の近道か。
「あ、選定者なら『拡張キット』を持ってる可能性は高いんだっけ。ティエラはどうなんだろうな」
シンのかつての恋人、マリノの能力がティエラに宿っているのは間違いない。
マリノも、ティエラは自分の能力を受け継いだ選定者になるはずだった、と言っていたので、今はその状態に近づいているはずだった。
アイテムボックスが使えるようになっていてもおかしくはない。
「後で確認しておきましょう。実験用に、少し残しておきますか?」
「そうするか。片付けるのは大した手間じゃないし」
シンとシュニーは新しい回収方法を身につけている。ティエラが同じやり方で鉱物を回収できなくても、片付けは容易だろう。
「それにしても、こりゃ本当に素材だけっぽいな」
素材の回収は8割方終わったが、他には何もなさそうだった。
アングアイニは瘴魔だ。ドロップアイテムにこだわるわけではないが、素材以外にも何かあるのでは? と少し期待していたシンである。
ゲルゲンガーも周囲の調査を終えたようだ。
「皆様の戦いぶりを見て、この結果には納得しております」
ドロップアイテムがなくても、自分たちの安全を確保できたのだから、納得しているらしい。
しばらくしてフィルマたちが戻ってきたので、さっそくアイテムボックスについて聞いてみた。
「そんなやり方はやったことがないわね。そもそも、便利な収納箱って認識しかないし」
「私もフィル姉と同じかな」
フィルマとセティは、少し考えてそう答えた。
戦闘職ならそんなものだろうと、シンも納得する。
セティは多少生産もかじっているが、大量に採取して何かを作る機会はなかったという。
実際に試してもらったが、素材の表面が多少削れるくらいだ。フィルマたちならば、力ずくで掘ったほうがはるかに早かった。
そんな2人とは違い、シュバイドは記憶を探りながら話す。
「同じようなことを考えた者はいたが、あまり現実的ではないと、採用には至らなかったな」
シュバイドもフィルマたちと同じで、一気に収納することはできなかった。
ただ、シュバイドが国づくりに奔走していたころ、鍛冶師の選定者が同じように、鉱石を効率的に採取できないかと試していたらしい。
その際は、シンほど一気に大量の鉱石をカード化、もしくは収納ができなかったこと。
鍛冶師のアイテムボックスの容量に限界があり、別にアイテムボックス要員がいないといけないなどの問題が解決できず、一般には広まらなかった、とシュバイドは語った。
この世界の選定者は、アイテムボックスを使える者のほうが少ない。さらに容量も人それぞれ。
希少なアイテムボックス持ちからすれば、素材採取の補助要員などするよりも、稼ぐ方法はたくさんあった。
運送屋として働けば引く手数多。
また、アイテムをカード化する技能を、そのまま売りにしてもいい。自分で運ばなくても、大量のアイテムや素材を薄いカードにして運べるだけで、効率は段違いだ。
国や商会と契約して、アイテムをカード化する仕事についている者もいる。
選んだ仕事にもよるが、大抵は一般職と比べて、給金が最低でもひと桁違うだろう。
モンスターに襲われるかもしれない都市の外で仕事をやろうと思う者など、よほどの変わり者以外いないのだ。
「生産系の職やスキルを磨いている者の中でも、できる者は限られていた。範囲もせいぜい、見えている場所から20~30セメル程度だ。シンのように、広範囲をカード化などできる者はいなかった。いたとしたら、もっと大きく話題になっていただろう」
シュバイドは一呼吸置き、話がずれてしまうが、と言って続ける。
「実のところ、アイテムボックスを使った窃盗事件というのは、数は少ないが起こっているのだ」
収納してしまえば外からはわからないし、荷物検査も意味はない。収納にはほとんど時間がいらないので、現行犯逮捕も難しい。
今までで捕まったのは、不法侵入からの余罪追及だとか、犯人を尾行して盗難したものを具現化したところに踏み込んだ、といったものだ。
「言いにくいが、犯人の中にはシンと同じプレイヤーもいた」
「いたのか……プレイヤーのアイテムボックスは最初からそれなりに容量があったし、アイテムで容量増やすのは当たり前だったけどさ」
何やってんだよと、シンはぼやかずにはいられない。
元プレイヤーなら、ゲーム時代から受けついだ、知識なり戦闘力なりがあったはず。加えて、アイテムボックス持ちは勝ち組なのだ。わざわざ悪事に手を染める必要はないだろう。
「シンのように広範囲がカード化できるならば、この方法を用いて、鉱脈を掘り進めることもできるだろう。少なくとも、そういった話は聞いたことがない。だからと言って、誰もやっていないとは言えんがな」
横で話を聞いていたシュニーが同意する。
「私も聞いたことはありません。アイテムボックスは悪用されると、阻止するのはとても難しいですから、もし目につくことがあったらその時にどうするか決めればいいでしょう。我々の手には余る話です」
「それもそうか。なんかこう、今までできなかったことができるようになると、ついいろいろ考えちゃうんだよな」
シュニーの話を聞いて、シンは首を軽く左右に振った。
「あとはミルトができるのかってことと、ティエラが今の方法を使えるかだけ、聞いておきたい」
「今ちょっとやってみたけど、僕もほとんど同じだね。多少範囲が広いけど、それにしたって一回り程度」
フィルマたちよりは広いが、大きな差はないと、元プレイヤーのミルトが言った。
「ただ、連続で使えば結構エグイことできるよね」
そう続けて、ミルトは残骸に触れながら足早に移動する。
その様子を見て、シンはミルトの言葉の意味を理解した。ミルトが触れた部分にそって、残骸に溝ができている。
「範囲が狭くても、使い続ければ似たようなことはできるか」
「カード化して手元に出すのも、収納するのも、MPは使わないから、何時間でも続けられるね。僕たちみたいに収納するのに慣れていれば、鉱山を掘り進めるのは簡単だと思うよ。まあ、収納できるってだけで、分別はしてくれないみたいだけど」
ミルトが収納した鉱物を具現化すると、消えた鉱物がそのままの形で出てきた。
シンの収納とは異なり、複数の鉱物がくっついたり、混ざったような状態のものもある。
「俺の場合は、一種類がある程度塊になる。ミルトたちは本来の収納って感じで、俺のほうが特殊っぽいな」
モンスターを収納した場合、アイテムボックスは、自動で部位ごとに分類してくれる。
一方、素材は大抵そのままだ。そのルールは今回も有効らしい。
「さて、あとはティエラだな」
「うーん、私がアイテムボックスねぇ」
シンたちの話を聞いていたティエラだったが、まだ困惑しているようだ。
こちらの世界では、アイテムボックスを持つ選定者なら、生まれた時からそれを使うことができると言われている。誰に教わるでもなく、使い方が自然とわかるのだという。
シンのようなプレイヤーの場合、ゲーム時代と使い方が変わらないので、違和感なく使えている。
ティエラはある意味生まれ持った側だが、特殊な生い立ちゆえに、立ち位置としてはプレイヤーに近かった。
「とりあえず俺のやり方を教える。それでだめなら、別の方法を考えよう」
マリノの力を受け継いでいるなら、メニュー画面から使うこともできるのではと、シンは考えていた。自分と違いはないか、細かく確認しながら、アイテムボックスの使い方を教える。
「これを、こうして……あ」
ティエラの手から、練習に使用していた魔鉄の欠片が消える。
アングアイニの残骸の一部で、手ごろな大きさだったアイテムが、ティエラが慎重に操作すると、カードの状態で手の中に収まった。シンがアイテムボックスを使用した時と同じ現象だ。
ティエラはその状態から、再びカードをアイテムボックスに戻すと、今度は具現化した状態で出現させた。
「まさか、私がアイテムボックスを使えるようになるなんて……」
少しの間呆けていたティエラは、今度は興奮気味に魔鉄の欠片を出し入れしている。
「感動してるところ悪いんだが、そろそろ次に進んでいいか?」
「あ、ごめん。えっと、見えない部分の鉱石も収納できるか、試せばいいのよね?」
シンの言葉にハッとしたティエラは、アングアイニの残骸に近づいた。魔鉄と同じ要領で、カード化して見せる。
カード化できたのは、ティエラが触れていた場所を中心に、直径20セメルといったところ。深さは10セメルもない。フィルマたちと大差ないようだ。
「全然だめね」
肩を落とすティエラに、シュバイドが声をかける。
「いや、これが普通なのだろう。おそらく、生産職としての能力と、ステータスの高さが関係しているのではないか? シンは鍛冶師としての能力もステータスも高い。そして、収納の対象は鉱物だ。これほど相性がいいものもあるまい。鍛冶を手伝っていたというシュニーの収納範囲が我らよりいくらか多いのも、そのせいではないだろうか」
確かに、シュニーの収納範囲はシンを除けば一番広かった。
シュニーはシンの手伝いで鍛冶をいくらか習得しているし、料理のスキルレベルも高い。今のところ出番がないが、薬草の調合などもできる。
「そう言われると納得だな。とりあえず、俺はこの能力で鉱物採取とかする気はないし、こういうこともできると知っておく程度でいいだろ。どっちかっていうと、アイテムボックスの危険性のほうを覚えておかないとな」
これで、ユズハとカゲロウのモンスターコンビ以外は、全員がアイテムボックスを使える状態になった。ゲーム時代ならともかく、今の世界では珍しいのは間違いない。
「アイテムボックスを使えることは、あまり吹聴せずにいこう」
「こっちに来て何かあったの?」
ミルトが尋ねてきた。
「いや、そういうわけじゃないんだがな」
「アイテムボックスの技能を使って成り上がる! とか考えてなきゃ大丈夫だと思うけど。武器や防具と違って、目に見えるものじゃないし」
「そうなんだが、こう、こっちに来てから、イベントが寄ってくる体質みたいになってるからついな」
今までのことを振り返り、シンはなんとなく空を見上げた。こういった条件クリアのイベントがあると、新たなイベントが始まりそうな気がしてならない。
「遠い目しないの。ゲルさんも待ってるし、そろそろ行こうよ」
「それもそうだな」
ミルトが相手だと、ついゲーム時代のような反応をしてしまうと、シンは反省した。
アングアイニを倒して、気が緩みすぎている。シュバイドも皇国のことが気になっているはずで、検証など後回しにするべきだった。
ちなみにゲルさんとはゲルゲンガーのことだ。ミルトは聖地の攻略を始めてから、終始ゲルゲンガーをゲルさんと呼んでいた。
「一番の脅威は取り除かれていますので、お気になさらず」
気を使ってくれるゲルゲンガーに謝り、シンは残骸の残りをさっと回収して、移動を始める。
赤き核柱の攻撃も気にしなくていいので、ナンバー37の聖地まで、ゲルゲンガーに乗って飛行する。攻め入る時の苦労は何だったのかと思ってしまうほど、一行はあっさりと、隣の聖地上空に到着した。
「森がなくなってる?」
空から大地の様子を見たシンは、思わずそう口にした。
あたり一面を覆いつくし、燃やされながらも赤き土塊の侵攻を防いでいた森が、ほとんど消えていたのだ。
おかげで、森に呑まれた聖地を探す手間は省けたが、こんなに短期間で消えるものなのか、と疑問も残る。
「自然に生えた樹木ではありませんので、守護者の意思で、元に戻すことは可能です。もともと、以前は無理をしていた状態ですので、維持する理由はもうありませんから」
シンの疑問に、ゲルゲンガーが答えてくれた。
聖地の外壁の横では、巨大な樹木のモンスターがシンたちを見上げていた。手前には、ちょうどゲルゲンガーが着陸できそうな空き地がある。
「ヴァンウッドそのままの姿みたいだね。あの空き地は、そこに降りろってことかな?」
「大きさもちょうどいいですし、恐らくそうでしょう」
眼下の様子にミルトがつぶやき、シュニーが応じた。
木々が減って、聖地が見えるようになったとはいえ、他に降りられそうなところはない。
地面に立って改めて見ると、空から見下ろしていた時にはなかった威圧感があった。
なにせヴァンウッドは、聖地の外壁の高さを上回っているのだ。地上に降りれば見下ろされるのはシンたちである。
様々な太さの木々で構成されたヴァンウッドの巨体は、頭、胴体、二本の腕と足があり、全体としては人型に近い。
顔には、口のような裂け目はあるが、目や鼻はなかった。そんな頭部のシルエットは獅子に近い。背に葉が鬣のように生えているのが、そう見せるのかもしれない。
腕は全体的に細いが、肘から先が腕の数十倍に肥大化しており、鉤爪付きの手甲を装備しているような形だ。
足は二本だが、太い樹木をより合わせて、棒状にしてくっつけただけという見た目である。関節のようなものはないが、人の足のように曲がっている。
鈍重そうに見えるが機動力もあり、その防御力の高さから、素早いウッドゴーレムとも呼ばれていた。
足の木から生やした根を地面に突き刺し、周辺の索敵をすることもある。
有志のプレイヤーが調べた情報では、口らしきものはあっても、食事をするところが目撃されていないので、エネルギー補給も兼ねているのではないか、と言われていた。
環境によって特殊な能力を得る場合もあり、その場合は亜種扱いされていた。ただ素早いだけのゴーレムとは、厄介さが桁違いなのは間違いない。
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