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第二章 帰還勇者の事情
第一話 帰還
最後になったが、ユウキとサトシとマイが浜石岳のいつもの場所に転移してきた。
魔法陣の周りには、先に地球に来ていた勇者たちが待っていた。
勇者たちは、日本で10日ほど過ごすことにしている。
世界中で、子供が消えたという報道は、されていない。消えたのが、孤児が中心のために、消えてから3ヶ月程度の時間が経過していても、騒いでいる国は少ない。
「さて、ひとまず10日後に、集まろう。念話はオープンにしておくけど、”時差”を考えてくれよ!」
ユウキの宣言に、皆がうなずく。
これから、辛い現実を告げなければならない。その事実は変わらない。しかし、自分たちで決めたことだ。フィファーナで、自分たち以外が死んだと告げなければならない。実際には、何名かの勇者は生きている。しかし、ユウキたちの中では、仲間以外の勇者たちは『”魔物”になってしまった』と考えている。人の心が死んでしまっている。ユウキたちも、敵を殺している。仲間を犯した奴を、感情に任せて殺したこともある。自分たちの手が綺麗だとは思っていない。
だからこそ、”奴ら”とは違うと思っている。
”奴ら”は自らの快楽を優先した。性欲を優先した。捕虜とした人を、犯して殺した。殺したことを、犯したことを、奪ったことを、自慢した。
”奴ら”は、獣にも劣る。魔物と同じだ。
ユウキは、フィファーナのスキルを考えていた。勇者たちは強力なスキルを持つ。これは、召喚されたときに教えられたことだ。そして、勇者たちが持つスキルは、唯一の物だと言われている。実際に、29名が、別々のスキルを持っている。汎用スキルと呼ばれる物も存在している。魔法系のスキルや、鑑定やアイテムボックスや転移が、汎用スキルに分類されて、鍛錬や他のスキルを磨くことで得られる。
人が死んだ場合に、スキルオーブが現れる。そのオーブにも複数の種類が存在している。勇者が持つスキルはオンリーワンで、スキルオーブになっても一回で砕けてしまう。オンリーワンではないスキルは、砕けない。”魔物の王”や直接の眷属も、オンリーワンのスキルを持っていた。今は、ユウキが持っている時空転移のスキルは、”魔物の王”に受け継がれるオンリーワンのスキルだ。似たようなスキルが無いとは思わないが、ユウキたち以外の勇者が使えるとは思えない。
「ユウキ!」
エリクがユウキを呼び止める。
「エリクとアリス?ドイツには帰らないのか?」
「マザーはもう居ない。墓も無い。だから、アリスと俺は、時が来るまで、馴染みがある日本に居ようと思う」
「そうか、どこかに・・・。そうか、無いから俺に声をかけたのだな」
「さすがは、ユウキだな。サトシでは・・・。それで?」
「正直、俺にもわからない。父さんと母さんなら、二人を気持ちよく迎え入れてくれるとは思うけど・・・」
「大丈夫だ。ダメなら、そのときに考える」
「わかった。ひとまず、ついてきてくれ」
「助かる。アリス!」「うん。ユウキ。ありがと」
ユウキたちは、すぐには施設には向かわない。
自分たちが消えてからの日数を確認した。4ヶ月が経過しているのが解った。
「ユウキ。どうする?」
「もう少しだけ情報が欲しいな。それに、移動だけなら、それほど時間はかからないだろう?」
田舎町だ。
夜中に移動すれば、人に見られる可能性は低い。夜中に移動して、施設内に潜り込んで、朝になったら、姿を表せばいいと思っていた。
「それで、どうする?学校にでも忍び込むか?」
「辞めておこう。前に、認識阻害を行った状態でも、自販機には見つけられてしまったから、監視カメラには写ってしまうと考えたほうがいいだろう」
「そうか、地球ならではの技術に関しての検証は出来ていないよな」
「あぁ」
「ユウキ。弥生のことは」
「俺が話す。俺が話さなければ・・・」
「わかった」
サトシは、自分ではうまく説明が出来ない。でも、マイやヒナには・・・。サトシは、ユウキに”甘えている”と自覚している。このままではダメだという気持ちも強い。
「夜になるまで、適当に時間を潰すか?」
「そうだな。レイヤ!ヒナ!どうする?学校に行くか?」
サトシが言っているのは、自分たちが通っていた学校ではなく、廃校になった、レイヤとヒナが通うはずだった学校だ。
「あ!そうだな。あの学校なら、家にも近いから都合がいい」
「たまには、サトシも、”まし”な提案をするのね」
「そうだろう!って、ヒナ!」
皆のテンションが少しだけ普段と違っている。
久しぶりに帰ることへの緊張なのだろう。そして、自分たちだけが帰ってきてしまったことへの負い目もある。
「ヒナ!サトシも、いい加減にして、移動するぞ?」
「ユウキ。転移するのか?」
「いや、山沿いに移動しよう。転移して、学校に誰かが居たら目立ってしまう」
「そうだな」
エリクの問いかけに、ユウキが明確な返答をする。
それから、山道を廃校に向けて移動した。ユウキたちから見たら、獣道でもあれば十分な道として認識できる。身体能力を上げるスキルを発動しなくても、地球に居た時の10倍から20倍ていどの速度で移動できる。
「俺たちが、オリンピックに出たら、全部の金メダルを獲得できるな」
「どうかな・・・。技術が居るような競技もあるからな」
「確かに!サトシは、陸上だけだろうな」
「ハハハ。違いない」
皆が走りながら軽口を叩きあっているが、走っている場所は獣道ですらない場所だ。木々の間を縫って走っている。時速で言えば、3-40キロは出ている。右に左に木々を避けながら、軽口を叩いているのだ。身体能力では、通常の4-50倍だろう。身体能力を上げるスキルを併用すれば、100倍以上にはなるだろう。
技術を凌駕できる身体能力だと言える。
「オリンピックは無理だろう?ドーピングを・・・。疑われても困らないな」
「だろう。レイヤは、何か出るか?」
「出るなら、サッカーだな。中学3年生の”天才”現れるとか・・・。柄じゃないな」
「意外と似合いそうだけどな。ヒナもそう思うだろう?」
「うーん。無理。レイヤじゃない」
ヒナが、サトシの妄想を一刀両断する。
表舞台が似合うのは、やはりサトシだ。皆が同じ気持ちだ。
「一度は、スキルの有用性を示す意味で、デモンストレーションはするけど、それ以降は隠すからな」
「大丈夫だ。ユウキ!それに、見せるスキルの検証も終わっているし、新しく作ったスキルなら大丈夫だろう」
仲間の一人が持っているスキルが、低級のスキルを生み出す能力だ。
それを使って、”制限を付けた”スキルを生み出した。一般人の4-5倍程度に力が制限されてしまうスキルだ。それを使えば、”少しだけ”力が強くなった少年や少女となる。魔法に関しては、初級から中級程度だけにしておけば問題はないだろうと結論が出ている。
本命は、信頼できる人にだけ明かすことにしている。ユウキたちは、施設を仕切っている老夫婦だ。
ユウキたちに取っては、母親であり、父親だ。本当の両親のように思っている。
「ここか?」
「そうだ」
山道を、1時間ていど走ってついたのは、学校と言われたら学校だと思える程度の場所だ。
グラウンドもあるが、使っていないのか荒れている。車が走った痕が残されている。
「ここで、夜中になるまで時間を潰そう」
「ユウキ。夕飯は?」
「持ってきたものを食べようと思っている」
「それなら、河原に行かない?確か、グラウンドの先に、川が流れていわよね?」
「そうか?覚えてない」
「流れているぞ」
レイヤは、しっかりと覚えていた。
河原に移動して、焚き火を行うことにした。効果が無いかもしれないが、結界を張っておくことにした。
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