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遠征で気を張り続けて居ると家のありがたみが凄くわかる

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 なんとなくだけど、俺が開けるとチップ、小さいヤツはポーション、大きいヤツは装備が出やすいと思う。タララは言わずもがなの金目の物だ。

「それ、前見えんのか?」

「どうでしょう…」

 見た目、立派な角の生えた黒牛の頭だが、カパッと後頭部の観音開きを開くと首からすっぽり覆われた兜になっているようだ。

「視界はかなり良好です。ゲイン様も装着なさいますか?」

「どうせ入らないわよ」

「いやいや、さすがに入るだろそれは。けど良いや、持ってけ」

「鑑定前に被るのはよしといた方が良いですよ?呪いはありませんでしたが。カウマスクだそうです」

 鑑定の結果、カウマスクだそうで、まんまだなと思った。買取価格も150万だそうな。

「迂闊でした」

「ねえゲイン。これで変装もできたし、街に入れるかな?」

「無理だろ、普通に警戒されるわ」

「ゲイン様!」

「何だ?」

「見てください。角を下げると口が出ます」

ガパッ、ガパッ

「お、おう…。飯が食えるな」

 嬉しそうに角を上げ下げする大きいヤツだが、何だそのギミックは!?

「アンテルゼ嬢がアントルゼ嬢になって、エリモア嬢はエリモー嬢?カウモア嬢ですか」

「その名前で再登録しようかしら」

「登録の変更で問題ないかと」

「できる?いくら?」

「え、まあ出来ますよ。結婚して名前が変わる人もいますからね。料金はかかりませんがコロコロ変えてると名前を覚えてもらえなくなります」

「今の私達には丁度良いわね」

「確かに…」

 ならそれで、と言うが帰るのも変えるのも、もう少し後になってからだぞ?

 熊、牛、アリ、そのうち俺もこの動物園の仲間入りを果たすのだろうか。次の階層は熊だらけだし、熊の装備が出たらタララに装備させよう。
 長い階段を昇りフィールド型の階層に着いた。石畳の外で3匹の熊が威嚇してるが、タララの方が怖いので何とも思わん。

「アリ、牛、タララ。俺とメロロアは感知で階層を見るから敵を殺っといてくれ」

「呼びやすくなったわね」

「そうですね、アリ」

「やっぱり無しで」

「1人じゃ殺れなそうだから3人でやるよー」

「はいはい」「了解です」

 俺とメロロアは感知系スキルで階層全体を見回す。箱はまた発生してるな。開けられたかどうかは分からないが近くに熊が居るので手付かずだろう。敵の姿を見逃さないように、ゆっくりと視線を動かして全体を確認した。

「ゲインさん、異常は無さそうです」

「俺もだ」

「ゲイーン、殺ったよー」

 丁寧に見回していた時間で3匹の熊を殺り切れたようだ。チップと魔石がまた増えた。

「んでさ、箱開けに行く?ちょっと遠回りだけど」

「良いけど装備が出たらタララが着けろよ?」

「なんでよ?」

「アリは顔を隠すため、牛はそれと同時に防御力を上げるため、タララは防御力を上げて欲しいからだ」

「ゲインは?」

「俺はこの中で怪我をしにくい方のメンバーに入るからな。優先度は下げるべきだろう。本も貰っちゃったし」

「メロロアさんは?」

「ギルドで着けたまま仕事するならあげても良い」

「謹んでご遠慮します。美人職員が顔隠しても損しかしませんよ」

「……さあ、箱開けに行こうか」

 遠回りになるので無駄話なんてできない。とっとと箱を取って上に行かねば。箱までの道中、何度か単発の熊との戦闘になったがアリと牛が強くなった気がする。
 アリは射撃の威力が増した。熊の顔を確実に勝ち上げる事ができるようになった。牛の方は、熊の丈夫な皮を刺突剣で一突きにできるようになった。元々できたのかもしれないが、ヒットアンドアウェイが早い。人なら場所次第で即死するな。熊であっても顎下から脳みそ突かれて煙になってた。
 近接アタッカーが居るおかげで他の者は熊の顔を勝ち上げて怯ませる程度の作業で済む。変に頭を使わずに戦えるのでとても楽なのだ。

「牛ちゃん、開けてよ」

「さすがに3度も装備が出るとも思えませんが…」

「熊ヘルムとか出してよ。ゲインに着けるんだから」

「ベアマスクですね。資料では見た事あります」

「タララよ、俺はお前の事を思って着けて欲しいんだ」

「ゲイン様、皆様も、取らぬ狸の皮算用と言いますよ?」

「開けたら分かるさ。さあ開けれ」

 牛が箱を開けると…。

「何それ、お皿?」

「盾のようですね」

「珍しく普通の物が出ましたね。ラウンドシールドですよ。呪いは無いと思います」

「移動中はこれを着けるべきだな、タララ?」

「はぁ、熊ヘルムじゃないだけいっか」

「早速着けてみ。この階層だとタワーシールドじゃ走れないしな」

「あーいよー。…ん、軽ぅい」

 そりゃそうだろ。直径60ドン程のラウンドシールドと身長を超える程のタワーシールドを比べたらそうなるわな。
 軽くなったおかげで移動が早い。体力不足のアリに合わせられるくらいの速さで移動できたよ。

「ゲインさん。なんか、早過ぎません?」

 スタスタ早足していると、メロロアが変な事を口走る。

「タララの事か?あいつ、元々足は遅くないんだよ。あの盾重過ぎて移動に向いてないんだ」

「それでも金属装備ですよ?」

「それは俺もだけど?足回りは皮だし、動きが阻害されにくいからな」

「ウサギのチップも使ってるもんね!」

「走るスキルは偉大だな」

「…そんなモンでしょうか…?簡易鑑定に出ない効果があるのかも知れませんね」

 単発の熊を数匹屠って階段に到着。熊のチップはいずれまた取りに来よう。次は地下2階。箱いっぱいの階だ。

 箱は8個。メロロアとタララ、奴隷達と俺の二手に別れて4個ずつ回収した。ミミックは出なかったが、これもフィールドボスみたいな扱いなのかな?中身はいずれもポーション等で、タララはほっとしてた。

「確かここ、壁の向こうに敵がいるわよね」

「そうだな。気を付けて行こう」

 休憩と間食を摂って、出口の壁に全員で穴を開け、一気に飛び出し正面と左右を警戒する。感知系スキルで左右に10ずつ。左を見るメロロアがウォーターウォールをかけたので、右を見る俺と奴隷はブロックで道を塞ぐ。飛び道具を使って来る敵はいないのでみっちり塞ぐ必要は無い。上なり隙間から抜けられなければそれで問題ないのだ。
 メロロアとタララの方は水壁から抜けて来る敵にブロックを飛ばしながら道を塞ごうとしていた。

「加勢するぞ」

「あんがとー」

 捨て忘れのブロックを全て使って道を塞ぐ。この先また切り出すので空荷にしておきたいのだ。

「余ったブロックで罠を暴発させたらいかがでしょう?」

「それもそうか。足りない分は壁から取るとして、ちまちま道を切り取って行くのも時間が勿体ないな」

「それなら私の手持ちを使ってください。私は切り取るのも投げるのもできないので」

 メロロアの出すブロックを収納し、通路の右側からまっすぐに撃ち出すと、ドカッと着地してガツガツ罠が暴発する。隙間ができても二重になっても気にせずに、ドバドバ撃って道を作り、道を塞いだ分以外のブロックを使い切った。吊り天井もしっかり暴発したし、ブロックの上なら安全に移動出来そうだ。足りない分は横から切り取り投げ飛ばす。1から通路を作るよりは早く抜ける事ができたよ。

「階段を上がってすぐに敵がいるハズだ」

「ブロックは確保したわ」「こちらもです」

「俺とメロロアは感知に集中するからよろしく頼む」

 上がった先の敵は強くない。目的は真の敵がいるかどうかだ。ぜひとも居ないでいただきたい。
 階段を昇り、雑魚をタララがドバドバ蹴散らして、落とし穴まで進んでく。

「ねえ、ゲイン」

「どうした?」

 上への階段を作っていると、通路を警戒しているタララが声を上げる。

「多分だけど、そろそろ夜かも?もう夜かも知んないけど」

「街に入れない、か」

「かもね」

「夜だと聞くとお腹が空いた気になるわね」

「夕飯はもう少し我慢してくれ。夜の闇に紛れて移動出来るのは逆にありがたいな」

「皆さんならゴブリンやウルフ程度なら問題ないでしょう」

「弾があればな。こまめに弾の補充はするが、なるべく温存してくれよ」

「あーい」

「ねえ、私の武器、棒なのだけど、コレでゴブリンと戦えるの?」

「守りに徹するべきだろうな。小石を分けてやるから良きタイミングで使えよ?」

 小石中を100個、アリに収納させて縦穴を登る。上ではすでにメロロアが矢の射出口にブロックを並べて無力化していた。

「外に気配はありません」

 静かに喋るメロロアに手で合図する。タララ、アリ、牛と上がって来るのを待ち、静かに隠し扉を開けて通路に出た。左に進むと正面にドアが見える。東の出口だ。

「メロロア、頼むぞ」

「お任せください」

 積み上げたブロックに隠れてメロロアの反応を待つ。メロロアはドアの前で天井に張り付き、姿を消した。
 音も無く、ドアが小さく動き、わずかな隙間が開かれる。誰かが唾を飲む。長く感じるほんの少しの時間でメロロアが姿を現した。手で合図を送って来る。どうやら外には誰も居ないようだ…。

 メロロアが開けたドアから、慎重に外に出ると、外は暗闇だった。湿った土の匂いがするのは雨が近いからだろうか?

「人もモンスターも今はいませんが、できるだけ触らないように行きましょう」

 メロロアが耳元で囁く。ランタンを仕舞い、感知系スキルを張り巡らせて、夜の山を静かに降りて行く。
 メロロアを先頭に、タララ、アリ、牛、そして俺の順で進む。街道を横切り、森の中を南に進んで行くと、曇天の空がグズりだした。

「雨具を着けろ。風邪を引くと死ぬぞ」

 奴隷達は自前のマント、俺とタララはドロップ品のコボルトのマントを身に着ける。2人して雨具を用意していなかったのだ。メロロアは裾の長いフードの着いたコートに袖を通していた。

「ゲインさん、これではあまり進めそうにありませんね」

 雨足はすぐに強くなった。早く雨宿りしないと体が冷えて風邪をひきかねん。

「モンスターに見つかりにくくなっただけでも儲けもんか…」

 感知系スキルに、敵の姿は無い。少し先に斜面があるのでそこまで頑張って歩いてもらおう。

「ぬっ、ぬかってて、滑る!歩きにくっ」

「緊急時だ、靴以外の鎧を外して身軽になっとけ」

「うん…」

 急な斜面に雨が降り、水が流れている。前の者のマントを掴みながら降りて行き、中程でブロックを切り出す。人が屈んで入れる程の入口から中をくり抜き、少しずつ居住スペースを広げて行き、5人が入れるだけの空間を切り出せた。

「やっと雨がしのげるぜ…」

「狭いわ」

「広い空間を作ると崩れるかも知れません。小さな部屋を作って行きましょう」

「成程。石窟墓のようですね」

 牛が一段高い所からブロックを切り出して、椅子兼ベッドを拵えた。亡くなった聖職者をここに安置するのだと言う。マットを敷いてアリを並ばせ腰を下ろす。俺も真似て作ってみたらタララとメロロアが座ったのでもう1つ作る羽目になった。

「ゲインさぁん、3人仲良く座りましょうよう」

「いずれまた機会があればな」

「ゲイン、疲れてる?」

「みんな疲れてる。入口を塞ぐからメロロアは火を熾してスープ作ってくれ。他の奴は服と体を乾かして、メロロアと交代してやれ」

「あーい」「わかったわ」「了解です」

 女達がマントに全裸と言う変態的な格好になっているが、こちらはそれ所ではない。雨水が貯まらないように溝を掘り、ベッドの合間に細道を作って個室を作る。そして垂直に深い穴を開けて溝と繋げた。要するに、トイレに流れ込むようにしたのだ。

「デリートウォーター、デリートウォーター」

 タララがみんなの服を乾かしてる。トイレから部屋に戻り、俺も体を乾かそう。

「デリートウォーター」

「…ゲインさん?」

「なんだ?」

「スープが減りましたよ。私まで乾いてますし、なんちゅー威力ですか」

「あたいの魔法が無駄になっちゃったじゃん」

「喉が渇いたわ。お水ちょうだい」

 半分程になった鍋に水を足し、水用の鍋に水を注いでみんなで喉を潤した。


「計画が狂っちゃったね」

 温め直したスープを飲み干したタララが今後の計画に思いを馳せ…てはないな。みんな無言だったのが耐えられなかったのだろう。

「取り敢えず、この場所には長居できない」

「崩れちゃうもんね」

「南の木の門まで行って、川沿いに樹上基地を作る予定だったんだが…」

「濁流に飛び込むのは嫌よ?」

「その時は、覚悟を決めましょう」

「ダンジョンを出たのが裏目に出たかー」

「ゲイン、多分違うよ」

「どうしてそう思う?」

「きっとね、それじゃダメだから女神様が考える時間をくれたんだよ」

「そうか。そう思わんとやってられんな」

「それで?私達はどこに隠れ住めば良いのかしら」

「やはり北上…」

「ゲインさん、いっその事更に南下したらどうですか?」

 考えあぐねてる俺にメロロアが進言する。

「オススメな場所でもあるのか?」

「詳しくは南西ですが、下流の川沿いに湖が点在してるんです。南側にゴブリンが多いのは知っての通りですが、あれは木に登れませんからね」

「難易度を上げろってか。女神様は俺の事が嫌いなんだな」

「好きな子に意地悪しちゃう的なヤツかも知れませんよ?」

「ガキかよ。ならもう神は敵だな。人の不幸を見て喜ぶような奴は無視だ無視無視」

「ゲイン様、神云々は置いておいて、モンスターが多いのは敵にとっても同じ事。地べたを這いつくばる事しか出来ない分、我々が有利と言えます」

「発想の転換ね。女神が意地悪してるかどうか、確認してから敵対しても遅くは無いわ」

「乗り気だな」

「借金完済出来る程稼げたのだし、できれば奴隷紋を解除して自由にして欲しい所よ」

「よし。ならば街に行こう」

「「え?」」「本気ですか?ゲインさん」

「賭けに出たわね」

「奴隷紋の解除と登録の変更を一瞬で終わらせれば良いのだろ?」

「まさか…、この雨の中…?」

「間に合うなら雨が上がってからでも良いぞ?期待してる。がんばれ。メロロアはやれば出来る子だ。ちゃんとできたら撫でてやろう」

「うわぁ…、ゲインが悪い大人みたいな事言ってる…」

「可愛かったゲインちゃんが見る影も無いわね」

 お前等見た事無いだろが。

 夜更かしは体に堪えるので雨が上がるまで寝る事にする。ブロックを二重にしたので余程の敵でなければ破壊される事はないだろう。そんな敵が来た時点で俺達は全滅だし、しっかり寝る。

「…さん、ゲイ…さん」

「ん…」

「雨が止みました。ギルド証を貸してください。それと、少し血をいただきますね」

 耳たぶがチクッとして、ひんやりした何かに垂れて行き、かぷっとされてレロレロされて、ちゅ~とされた。目が開いてないので何をされたか分からない。ギルド証…、首にかけてあるのを引っ張り出された。唇に何かが当たってる。ギルド証にしては柔らかい気がする…。柔らかさが消えると、部屋に少し冷たい空気が入って来て、直ぐに止まった…zzz


「ゲイン、メロロアさんとキスしたでしょ?」

 目覚めたてでのタララの一言に訳が分からない俺に、顔を洗えと勧めて来るのはアリだ。ベッドに座り、取り出したタオルに冷めたお湯を少し貰って顔を拭うと、なぜか血が付いていた。

「寝ながら鼻血でも出したのか…?」

「どうやら覚えてないようです」

「寝ぼけてされるがままにされてたのだし、追及するのはかわいそうよ」

「ん~、そだね。ゲイン、キスしよ?」

 ガバッと俺の膝に飛び乗って来たと同時に、とてつもない痛みが俺を襲った。

「ぎっ!いっでええっ!」

「え?なに?」

 朝なのだ。金属鎧を着けたまま寝ていた俺は、俺のアレが腰当を押し上げるほどに張り出していたのだ。そこにタララからの圧力で押し込められ、あまりの激痛に装備を着込んだタララを跳ねのけるほどの怪力を発揮して、股間を押さえ蹲ってしまった。

「ゲイン、どしたの…」「タララ様、どいてください」

 牛が割って入り、俺の腰当と皮ズボンを収納する。

「おまっ!」「緊急時です!」

 パンツまで剥がされさらけ出す俺のアレに、牛はためらい無くポーションをかけた。痛みが引く…。

「こんなのも、ポーションで治るのか…」

「あんた、なんでこんなに腫れるまで放っといたの!?全然治ってないじゃない!」

「は?」「え?」「……」

 アリは無知であった。この一言でみんな冷静になり、俺はトイレでおしっこして、ポーションまみれの下半身を魔法の水で洗った。

「ん…。もう、大丈夫だ。心配かけてごめんな。パンツ返してくれ」

「どうぞ…」

「ゲイン、あたいこそごめんね?」

「事故だから仕方ないさ」

「もう腫れは治まったの?無理してないわよね?」

「お前は良い奴だな。貴族にしとくのが勿体ないぜ」

「元貴族よ」

 少し暖かいアリの頭を撫でて、装備を着直す。ソーサーを焼く時間が惜しいので、冷めたお湯と干し肉で腹を満たし、東の門に向かう。

「…結構………だったね…」

「素…な……でし…」

 タララと牛が、なんかヒソヒソしてるけど、鎧のガチャ音でよく聞こえない。森を抜けて街道に出たら、街道に沿って木の門へ。朝から働く門番さんに挨拶すると、アリと牛が超警戒された。

「な!なんだ、ゲインか…。それは装備か?」

 飛び出て来た隊長さんに挨拶し、突き出された槍が1本にまで減った。

「隊長、こいつはゲインの偽物です!本物のゲインなら俺に女を紹介してくれるはず!」

 コイツはまだそんな事を言っているのか…。

「くくく…、ジェーンに紹介できそうな女は全て結婚させたわ!」

「なん…だと…?」

 膝を付き槍を落とすジェーンをスルーし、偽ゲイン一行は街へと走り出す。やはり牛とアリは凄く警戒されるな。まあ、当たり前か。俺の顔を知ってる人じゃないとここまでスルッとスルーはできないな。

 街の門前。早朝は、行商の荷馬車が並び開門待ちの列を成している。動物達に並んでもらい、前の人達を確認してくが、父さんは来てないみたいだ。父さんの知り合いがポツポツ居るので挨拶したら野菜くれた。ナマナスはそのままでも食べられるのでとてもありがたい。

「ただいまー。ナマナスもらったよ」

「野菜?」

 あまり使わないナイフが火を噴くぜ。お尻からヘタにかけて十字に切って終了。さあ食え。

「生のまま食べるのね…」

「私はゲイン様を信じております」

「初めてだよぅ」

シャクシャクシャクシャクシャクシャク…。

「瑞々しくてなんとも美味でした」

「なんで生で食べないのかしら?」

「時間が経つと苦くなるんだ。煮込むとそれも味として良くなるんだって。これ母さんの受け売りな」

「お肉食べたい」

「さっき食べたろ」

「私は朝ご飯すら食べてませんが?」

 気配無く現れたのはメロロアだ。貴族と農民用の小門から出て来たみたいで、俺とアリ、牛のギルド証を返してくれた。危うく入れない所だったぜ…。金を払えば入れるけどさ。

「お風呂に入ったね?」

「え?そりゃあ入りますよ。美人職員が臭いとか誰得ですか」

「まあタララよ、メロロアは匂いと空腹を秤にかけて、風呂を取っただけの事だ」

「いーなー」「いいなー」「良いなー」

「我慢しますよ…。それよりあちらを使えるよう申請したので行きましょう」

 あちらとは、小門の事だ。冒険者が使って良いのは街に関わる緊急時だけだと言うが、開門前に使わせてもらうのは凄く助かる。すぐさま移動しギルドに駆け込んだ。

「ゲインさん、こちらへ」

 中に入るとすぐにマーローネに呼び止められ、向かうはいつもの尋問室。ここ使ってるの俺達くらいだろ。

「待ってたよ!元気そうで何よりだね!」

 なぜこの男はそんなに楽しそうなのか?尋問室の中には暇人ギルマスが椅子にかけて待っていた。

「残るは奴隷紋に解消印を施して契約文を読み上げるだけです」

 マーローネに手渡された紙は契約書。俺のギルド証に入ってたヤツだな。マスクを外した奴隷達の額に、ギルマスがぺたりと手を添えて何事か唱えてる。解消印と言うヤツか。

「さあ、ゲイン君、読んで読んで」

 急かされるのは嫌だがゆっくりもしてられないので契約文を読み上げる。するとギルマスの手がポワーっと光り、読み終わるまでそれが続いた。俺が読んでた契約書も光の粒になって消えて行く。

「次は登録の変更をしますのでギルド証を出してください」

マーローネの座る席の前に二人がギルド証を出すと、機械に通して何やらやって、程なく2人に返された。

「アントルゼさんとカウモアさんですね。改めてよろしくお願いします」

「よろしく」「よろしくお願いします」

ガチャガチャとマスクを着け直しこちらに向かって居直った。

「アントルゼよ。よろしく」

「カウモアと申します。どうぞよしなに」

「ゲインだ」

「タララだ」

 真似んな。その後は大量過ぎる魔石を出してメロロアの目から光を失わせると、素で泣き出したので職員の追加を呼んでの査定となった。結果は明日だと言う事で、先ずは家に帰って風呂にする。主に女達がだ。

「ゲインは火、あたいは水。アリちゃん牛ちゃんはある物で食事の支度ね」

「「「はーい」」」

 家主が珍しくリーダーシップを発揮して、チャチャッと風呂と飯の支度が始まった。石炭を各竈に放り込み、どれ、いや、奴隷でなくなった二人が火を付ける。俺は温存だ。この後洗濯するからな。
 薄ソーサーの仕込みはアリが、スープと茹で干し肉の仕込みは牛がしている。ほんの数日でだいぶ慣れたよな。俺はその間竈の火を強め、2人の援護をした。

「焼くわよ!ゲ、ゲイン」

「火はもう出来てるぞ。…アントルゼ」

 互いが互いを名前で呼んだ瞬間であった。

「ゲイン様、こちらもスープを煮る支度が整いました」

「そっちも大丈夫だ」

「……」

「…カウモア」

「はいっ」

「ゲインが女の子達とイチャイチャしてる~…」

 してねーし。2人の竈の火の番してただけだし。

「ゲーイーンー。ゲーイーン~~」

「ターラーラ」

 正解だったようだ。ニマニマしながら風呂に水を注ぎに行ったよ。さて、こちらも風呂釜の火を育てるか…。

「なんだか女の敵に見えて来たわ」

「幸せにして頂けるなら多少多くても…」

「その内刺されるわね」

「既に1度刺してますが」

「私は3回くらい刺されてるわよ」

 厨房から不穏な言葉が聞こえて来る。装備は良い物を着けようと心に誓った。


 昼飯を食べて、風呂に入り、洗濯と乾燥したらすごく眠い。眠いのを我慢して戸締りし、今俺の部屋の屋根裏部屋に集まっている。

「すごく、すごく眠い。みんなも眠いと思うが聞いてくれ」

「きーてるー」

「目を開けろ。命に関わる事だぞ」

「ゲイン、私も限界…早めに要件を…」

 さすがに俺も限界だ。飯の最中にでも話せば良かった。

「敵が、家の周りをうろついてる」

「え?」「は?」「…んぇ」

「感知系スキルに引っかかった。害意のある人物が現在3つ、壁の影に隠れてる」

「どうしましょうか。打って出て、撃退しても負け筋です」

「その通りだ。何とか出来る事をしてみるが…」

「無茶はしないでよね」

「ああ。一先ずここからは出ないよ」

 横になり、感知系スキルを細く伸ばし、距離を稼ぐ。作業中ならまだあそこに詰めているハズだ。頼む、居てくれ…。
 細く伸びた探知範囲がギルドの一室を捉えた。少し振るだけで部屋を超えてあらぬ所に飛んで行ってしまう。集中だ。
 尋問室で作業する数人の中からメロロアを探すのは簡単だった。メロロアだけは探知に気付いて避けるのだ。根気よくフェイントをかけながらメロロアの左胸に焦点を合わせる事に成功した。

(威圧)!

「うぐっ!」

「え?」「ゲイン!」

 その瞬間、威圧を返された。これがメロロアの威圧かっ。威圧に耐えるのは得意だと思ってたけど、流石は暗殺者だな。実戦でなら死んでるけど、これならまだ耐えられる。きっと本気では無いだろうしな。
 あ、メロロアが仕事をサボって外に出た。ギルドから出てこちらを見て…消えた。

「メロロアが来るから…頑張って、起きてて、くれ…」

「ゲイン様も頑張ってください」

「精度を上げるのに、横になったのがマズかった…」

「ゲイン!起きないとメロロアにいかがわしい事されるわよ!?既成事実よ!?」

 それはとても嫌だ。この世の果てまで逃げなければならない…。

「仕事中なんですから、終わってからしましょうよ」

「あ!来た!」

 ちょっと不機嫌な声でメロロアが立っていた。

「すまん、助けて」

「子守唄でも歌えと?」

「壁に3人、隠れてる…」

「え?ちょっとお待ちを……ん、いました。アンテルゼ嬢をさらいに来たには随分しょぼいですね。物盗りの類いでしょうか」

「雇われの可能性も、あるだろ…」

「取り敢えず、偶然を装って排除します。後で添い寝してくださいね」

「足元見やがる…」

「そう言うの言わなきゃ好かれるのに」

「アントルゼ、これが残念美人です」

「勉強になるわ」

「分かりましたよう、ゲインさんのために、私が一肌脱ぎます。期待していてくださいねっ」

「お…わたら、ギルド直帰して…くれ…」

 返事を待たず、ここで俺の意識は途絶えてしまった。メロロアが消えた後、アリと牛も揃って力尽きたと言う。目覚めて夕方。左右にアリと牛が寝てるぜ…。タララは視界の外まで転がって行ってしまったようだ。アイツは普段、どうやって寝てるんだ?




現在のステータス

名前 ゲイン 15歳
ランク C/F
HP 100% MP 74%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D

所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き
肉体強化 肉体強化
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆

鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ

魅了
威圧
壁歩き

水魔法☆ 水魔法
ウォーター
ウォッシュ
デリートウォーター
ウォーターバレット
ウォーターウォール
ボーグ

土魔法☆
ソイル
サンド
ストーン

火魔法
エンバー
ディマー
デリートファイヤー

所持品

鉄兜
肩当
胸当
腰当
上腕当
脛当
鉄靴

革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボン
皮の脚絆
耐水ブーツ
耐水ポンチョ

草編みカバン
草編みカバン2号
布カバン
革製リュック

木のナイフ
ナイフ
剣鉈
解体ナイフ
ダガー
革製ベルト

小石中391
小石大444
石大☆20

冒険者ギルド証 5952269→6297594ヤン

財布 銀貨12 銅貨11
首掛け皮袋 鉄貨31

マジックボックス
各種お宝
 
冊子
筆記用具と獣皮紙
奴隷取り扱い用冊子
寸胴鍋
お玉
コップ

カトラリー

五徳
木ベラ
籠入り石炭0
石炭94ナリ
洗濯籠
多目的板
蓋の無い箱
敷物
ランタン
油瓶0.1ナリ
着火セット
翡翠特大

中古タオル
中古タオル
中古パンツE
パンツ
ヨレヨレ村の子服セットE
サンダル
革靴
街の子服Aセット
街の子服Bセット

スキルチップ
ウサギ 3022/4391
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 2056/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 1742/2859
ハチS 0/1
カメ 2000/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 4/1861
石S 0/1
スライム 1023/2024
鳥? 213/1360
トンビS 0/4
サル 715/857
ウルフ 19/1070
ワニS 0/1
クマ 0/1
アリ 0/1
蝶 0/204
花 0/161
腕 440/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 549/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 475/576
体 422/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 526/627
ナイフ 128/520
ナイフS 0/1
短剣 12/232
鎧S 0/1
袋S 0/1

水滴 157/394
水滴S 0/1
立方体 175/275
火 3/4

魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
ヤモリ 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1

未鑑定チップ 1000
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