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久々のチップ屋は少しテンション上がる
しおりを挟むドジっ子先輩の事務処理を終えると、にわかにフロアが騒がしくなる。ギルマスが降りて来たのだ。
「おう、お前等上がりか?」
「ええ、その前にケジメェ付けにゃあなりませんがね」
「ケジメだあ?」
「マスター、これを…」
俺達がへの恨み節が書かれた紙を職員がギルマスに渡すと、目を通しため息1つ。
「嘘は無ぇな?」
「「「ありやせんっ」」」「「「マジですぜ!」」」
嘘を吐いてる顔で堂々と嘘を吐く馬鹿共に、ギルマスは静かに口を開いた。
「報告書は他にも上がってんだが、随分内容が違ってんだよなぁ。ソイツ等の報告書にはな、他のパーティーとは離れて狩ってたって、書いてあんだよ。それにな、他のパーティーにポーション売ったら付け狙われたって、書いてあんだわ。…ジンデル、お前ぇ、水晶触れや」
「ぇあっ?まっ、待ってくれよウェストリさん。俺より先にそのっ、他の報告書を持って来た奴をやってくれよ!」
「もうやってんだよ。持って来た時にな。お前ぇ等、動くなよ?死なすぞ?」
お、威圧かけてる。俺達に使った時は気にならなかったが、範囲に威圧をかけられるなんて良いスキル持ってんな。金スキルなのだろうか?
ギルマスの指示を受けて、職員が水晶の塊を持って来る。門に置いてあるヤツの、丸くないヤツだ。動けないジンデル?の手を取って水晶に当てると、職員はギルマスに目配せした。
「お前ぇ、これに書いた内容は嘘っぱちだな?」
ジンデルは言い訳じみた事を発し、水晶を赤く染めた。職員達の手によってジンデルの武器が外され、ロープで手を縛られると隣の冒険者に移動し質問される。結果、水晶を赤く染めなかった者は誰一人居なかった。
「さて、飯にでも行こうか」
「お前、最後まで見て行かないのか?」
「最後って処刑でもするの?初犯じゃないだろうし、一日じゃ終わんないでしょ。人も待たせてるから明日また来るよ」
「…まあ、そうだな」
ギルマスの誘いを断って、リッツを連れて宿へと向かう。
「そう言えば皆さん、お風呂って宿のを使ってるんですよね?」
みんなで円卓を囲みながら焼肉等を頬張って居ると、リッツが風呂について聞いて来る。
「リッツさんは公共浴場に行くのか」
「ええ。そちらの方が家から近い、と言うか2軒隣なので」
「宿のお風呂使えばタダだよ?。大部屋だし、人増えても値段変わんないし」
「お金持ち?」
「個室より広いからお得なのよ」
「確かに、壁の分広くはなりそうですが…」
「急に人が増えてもバタバタしませんしね」
「増える事…今ですね、ええ」
「私も増えた口ですよ」
「そうなのですか」
「今夜は泊まる必要は無いけどタダ風呂してけば良いんじゃ無いか?帰りは送るよ」
「お、送りウルフ…」
「無いわね」「無いよね~」「ありませんね」
「ゲインさんがウルフるなら私が全て受け止めますから、安心して送られてください」
ウルフる…。なんだその言葉は。
「それも無いわね」「逆ならありそ」「ですね」
「メロロアはリッツさんを送ったら酒飲むんだろ?だから襲ってやる時間は無いぞ」
「ですね!せめて大人の時間を独り占めさせていただきますっ。ちゃっちゃと食べてお風呂行きましょー!」
張り切るメロロアだが、食事の時間は変わらない。ちなみに夕食代はリッツとは別会計。奢っても良かったが、自分のお金で払うと言うので今回は譲った形だ。俺がみんなの分も払ってるのかと驚かれたが、共同資金を積み立ててると聞いて納得していたよ。
タララ達が部屋に向かい、俺はセイコー達の馬房に向かう。構ってやらないと拗ねるからな。広いスペースに放し、体を動かしてやるのも欠かせない。
「ブルル…」「ブルッブフッ」
馬車を回す為のスペースを駆け回る2頭は何だか楽しそうだ。
「お客さん、放馬しちまったのか?」
馬番のおじさんが心配して駆け寄って来た。勘違いさせてしまったな。
「軽く運動させてるだけだから大丈夫だよ。馬達も動かないと体がなまるからね」
「ああ、お客さんは連泊かい。慣れてるようだし構わないが、やる前に一言頼むわ」
「そうだね、勘違いさせちゃうもんね。次からはそうするよ」
「ブルルルルル」「ブルルン」
おじさんと話していると寄って来てべろべろして来る2頭。何だ、妬いてるのか?ともかく風呂に入る前で良かった。馬房のボロを敷き藁ごと片付けて、ボーグとデリートウォーターで汚れを落とし、新たな干し草を敷き詰める。セイコーとベガはウォーターウォールに潜らせて…待てよ?
ウォーターウォールをウォッシュしてみる。ウォッシュだけだと四方八方に水が散らばりまともに洗えなかったのが、水壁の立つ範囲だけでバシャバシャして、50ピル程で消えた。
「セイコー、ウォーターウォールに入ってくれ」
「ぶふ~」
ウォーターウォールを唱えると、頭から突っ込んでぐるぐる回り、体をびちゃびちゃにして行くセイコー。慣れたもんだな。そこにウォッシュをかけると、バシャバシャして尻尾やたてがみが荒ぶった。多分洗えているのだろうと思う。セイコーもそれに気付いたのか、お尻を水壁にめり込ませて尻尾をブルンブルンし始めた。あ、消えた。
「ブルッ」
こっちを見て鼻を鳴らす。お代わりが欲しいようだ。もう一度水壁ウォッシュをしてやると、壁の中を前後して体を洗い始めた。
「セイコーは賢いな」
その姿をじっと見て待っていたベガも、コチラが指示する事もなく水壁洗浄をこなしてしまった。
「ベガも賢いな」
その後2頭と地面をデリートウォーターで乾かして馬房に戻し、俺も風呂へと向かった。
リッツを送る用があるので珍しく早風呂で上がると、リッツとメロロア以外は既に寝間着に着替えてた。
「お待たせ」
「待ってました!」
「勝手知ったる地元なので送りなんて要らないのですが…」
「良いんです。帰りはゲインさんと二人っきりでイチャイチャ出来るのでっ」
「はぁ…」
「じゃあ少し行って来るよ」
「あ~い」「遅くならないようにね」「お待ちしております」
メロロアが同行するのは、俺が送りウルフにならない為では無い。長く2人で居たいからだ。今日は斥候やソロで頑張ってくれたし、甘えさせてやるかな。3人で宿を出て、職人街の元武器屋に向かう。
「明日は持てる荷物を持って宿に行きますから、重い方はよろしくお願いします」
「ベッドは置いてくのか」
「野営では使えませんからね」
重い研磨機や工具を仕舞い、工房がスッキリした。
「合流は夕方だっけ?」
「はい。それと、共同資金はいつ納めたら良いでしょうか?」
「まだ稼いでないから後で良いよ。移動の準備もあるからね」
「…分かりました。それでは、また明日」
「おやすみ」「おやすみなさ~い」
宿に着くまでメロロアのおっぱいを腕に当てられて帰った。メロロアは皮鎧だし、俺は金属鎧だしで柔らかさもクソも無いのだが、彼女が良いならそれで良いか。
「ささっ、飲みますぞぉ~」
「俺は少しだけな」
客の殆どが飲みに入ってる、酒場に変わった食堂の中に俺達も入って行く。カウンターに並んで座り、密着して来るメロロアはまだ素面のハズだ。
「おねーさん、焼き魚と鳥焼きにエール2つ!」
「あーーい、とりさかなかくひとーーつ」
厨房に伝えたのだろう声を上げて、俺から金を受け取ると、ウェイトレスは奥に向かった。
「えへへ、久しぶりに独り占めですよー」
「それは良かったな」
「お先エールふたーつ、おまちどーさまー」
俺の横から腕を伸ばし、ウェイトレスがエールをメロロアの前に置く。自然と俺に密着するが、俺金属鎧なんだよ。全然なんにも感じない。メロロアはジョッキを持って更に体を押し付けて来る。
「メロロアよ、俺鎧だからくっ付かれても柔らかくないんだ」
「良いんです!ゲインさんは私が守りまっす」
「お姉さんも、そんな訳だからごめん」
「ふふっ、今度は裸で?」
「機会があればね」
エールを置いて仕事に戻るお姉さん。他の客はには凄く冷たい。
「ゲインさん、モテモテですね~」
「何でだろ?魅了なんてかけてないハズだが…」
「魅力的に映ったのでしょうね。ささ、乾杯乾杯」
「はいはい、カンパーイ」
魅力的、確かに魅力は☆になってるが、増えても少しなハズだ。その少しに差が出るのかも知れないが…、ベロンベロンのおっさん達よりはマシか。
エールを一口。肴が来ないのでチビチビするが、メロロアはもう飲み干していた。
「ぶっふぇ~~。コレとゲインさんがあれば今夜も明日も頑張れます」
「今日は頑張ってくれたからな。潰れない程度に飲んでくれ」
「潰れてたら、好きにしてくれて…良いんですよ?」
「ならアントルゼを抱き枕にしようかな」
「…自制します」
飲みかけの俺のエールを2人でチビチビ飲りながら料理が来るのを待つ。
「ふへ…関節キス…、違う意味れ酔いそうぜす」
あンた、もう酔ってるよ。料理が並び、更に酒を頼む。追加の酒が来るまで焼き魚を摘みながら食べさせ合う姿は誰から見てもイチャイチャしてると思われる。
「追加のエールお待たせ~」
エールを持って来たウェイトレスが、メロロアの前にエールを置きながら、今度は俺のほっぺたに唇を付けた。
「だ~め~で~すよ~?」
「あら、バレちゃった」
何故バレないと思ったのか。
「今日は私のなんれすー」
「お客さん、モテモテなのね」
「何でか分かんないけどね」
「体が空いたら遊びましょ」
お姉さんは耳元で囁くと、再び仕事に戻って行った。
「ゲインさん…、遊んじゃうんべすかぁ?」
「遊びたいけど…、みんな我慢してるのに俺だけ…ってのはダメだろ」
「やっぱり、ゲインさんは良い男ですねっ、飲みましょ飲みましょ!」
関節キスが気に入ったのか、1つのジョッキを回し飲みして料理が無くなるまで飲んで、ベロンベロンになって部屋へと戻った。ほとんどメロロアが飲んでたのでベロンベロンなのはメロロアだけだが。
「んふ~、ゲイ~ンひゃ~ぁん」
「静かに寝るぞ?みんな寝てるからな」
みんな寝てるのに部屋に入れたのはメロロアの謎の技術の賜物である。鎧を仕舞ってヨレヨレな服に着替えると、空いてるベッドから布団と枕を1つずつ奪い取り、瞬く間に着替え終えていたメロロアの横たわるベッドにセットした。
「いらっしゃぁい」
自分の布団を片手でめくり、俺を誘うメロロアだが、俺の布団はどこ行った?枕と布団をセットしたんだぞ?
「布団返せ。宿に火を放つぞ」
竈を出して水を注ぐ。布団を出せねば焼けた石炭を部屋中にばらまいてやる。そんな意思を感じ取り、布団は返された。
「ごめんなさい、私が悪うございました…」
「反省して寝るが良い」
竈を仕舞い、ベッドに入り、メロロアのおっぱいに頬を乗せた。柔らかい…。
「反省します。お休みなさい」
頭の上に腕を回して抱き着いたメロロアは、すぐに静かな寝息を立てた。柔らかく、少し息苦しくて、良い匂いと酒の臭いが混じり合い、安心感に包まれて意識を手放した。
モゾモゾと動く気配で目が覚める。目の前はおっぱい。匂いからしてメロロアだ。
「ん…、起きちゃいましたか」
「ん、んむ…」
寝る前は服着てたよな。何で脱いでるんだ?そして俺の唇はメロロアのおっぱいの先っちょが押し込まれている。昨日は俺も飲んだので、なんだか頭が働かない。吸えば良いのか?まだ眠いので目を瞑り、舌を動かし吸い付いた。赤ん坊にでもなった気分だ…。
「ねえゲイン。味、するの?」
「汗味だよきっと」「お酒味かも知れませんね」
3人に見られてた。
「よしよ~し、ゲインちゃんはママのおっぱいい~っぱい飲んで、大きくなるんでちゅよ~」
頭を撫でるメロロアが、母親気取りで優し気な声を出す。実の母がこんな事言ってた記憶は無いな。
「んぷ。おっぱい出ないじゃないくぁぶ、おひぷへぶば」
「ゲイン~、ごはん~、ゲ~イ~ン~」
「私のも吸ったら大きくなるかしら。それよりトイレ行くわよ?」
「あ、私もお付き合いします」
押し付けて来た割にすんなり開放されたのは、反省の証だろうか。熊皮のマントを羽織ってベッドを出ると、アントルゼが中に入って部屋を出る。今朝はカウモアも居るので先に2人に垂れさせて、食堂へ行ってもらった。トイレに着くまでニギニギされていたので中々出そうになかったからだ。川で水浴びでもしたい気分だよ…。
食事を済ませて部屋に戻り、皮鎧に着替える。
「今日辺り出来てるんだよな」
「何だっけ?」
「下着でしょ」
「勝負下着ですね」
「ああ、1日早かった…。今日だったら我慢させなかったのにぃ…」
「今日、あたいだね…。我慢、出来ると良いね」
「今日からリッツさんが来るんだが?」
「あ、順番」
「そうじゃなくて。ほぼ初対面の人がいるのに致せるのか?」
「…だよね…。ちょっと、恥ずかしいかも」
「抱き締めて寝るので我慢しれ」
「キスも…」
「はいはい」
「うへへ…」
楽しそうなら何よりだ。今日の予定はさっきの下着を受け取るのと、昨日行きそびれたチップ屋、そして露店街でチップを探す。後は煮込んでる骨汁の世話と、漬け込んである肉を干す作業だな。
「他に何か用はあるか?」
「お酒買いましょ!料理用ですよ?」
「酒か。確か俺の油が切れてたんだよな。新しく瓶で買っとくか」
「あ、あたいの石炭もらってよ」
「それもしなきゃな」
「洗濯もしておきたい所です」
「夜にでもやるか。忘れてそうなら教えてくれ」
「了解です」
「私は特に無いわね。強いて言うなら頭撫でて」
「撫でてやるからマスク取れ」
マスクを外したアントルゼを撫で、カウモアも撫で、タララとメロロアも撫で回し、打ち合わせを終えた。
竈を出して鍋を見る。タララが涎を垂らすので、1口味見をさせてやる。
「うわ~、濃いぃ~」
「野菜溶けてるわね」
「良い香りです」
「とろとろですねえ」
「このまま飲むのは勿体ないな。水分減らして固めたら、湯に溶かしただけでスープにならんかな?」
「良いですね」
「持ち運びに便利よね。マジックボックスに入れてたら変わらないけれど」
「ダメでも水を足せば戻るでしょうし、やってみては?」
寸胴鍋に未使用タオルを取り出して、鍋の中でタオルをウォッシュ&デリートウォーター。蓋が無くて多少水が跳ねたがキレイなタオルとなった。
「スープを濾すから2人でタオルを持っててくれ」
「あいよ」「了解っ」
鍋に入った骨を粗方収納すると、タララとメロロアが持つタオルにお玉で少しずつ流してく。その下には寸胴鍋があり、骨の欠片や溶け切れなかった香辛料がタオルの上に残された。
寸胴鍋に溜まったスープから水分を抜く。デリートウォーターを1回、2回。プルプルになった。1度よく混ぜ、もう2回脱水すると、粘土のような塊になった。
「ねえゲイン、食べてみて良い?」
「だいぶ濃いハズだから指先にちょっとだけな?」
「けちー」
「ケチとかじゃ無いって」
お玉で少しだけひっ掻いて、付着した粘土みたいなのを食わせてみた。
「んーっ!濃い!んまい!」
「成功みたいね」
「壺にでも入れたら使いやすいでしょうね」
「お金の匂いがぷんぷんします」
「スープの匂いもぷんぷんするよ~」
部屋がスープ臭くなる前に、換気をして使った物を洗ってしまおう。特にタオルは俺のだからな。大鍋に入れて念入りにウォッシュした。
宿を出て、先ずは昨日行きそびれたチップ屋へ。西門の傍にあると言ってたのでよくよく探してみると、看板にカードが2枚描かれた店を発見。ゲル版屋でなければチップ屋だろう。
「どうも、客だよ」
店に入って声をかける。客だと言わないと不審がられそうだしな。
「いらっしゃい。冒険者だね?」
店主はおばあちゃん。耳が長いのは混血だからかな?
「リッツさんに紹介されて来たんだ。良さそうなチップがあれば買わせてもらうよ」
「おや、リッツを知ってるのかい」
「あたい達とパーティー組んでんの」
「そうかい。宜しくしてやっておくれよ?」
店はそう広くはないが、左右の壁一面にケース入りのチップが掛けられており、店の中央にはこれまたケース入りのが平置きされている。どれも1枚ずつの陳列だが、1人1枚買うのが常識なのでこれでも良いのだろう。ばあちゃんの座るカウンターの上に、紐で縛られた塊がある。これはどの店でも同じなのだな。
「おばちゃん、上の方見づらいよぉ」
「昔は届いたんだけどねぇ。今じゃ手が伸ばせないのさ」
思い切り手を伸ばして届かないくらいの位置に掛けられたチップ達は、確かに埃を被ってる。それだけ売れてないって事なのか、柄が見えなくて買われないのか。とにかく勿体ない。
「店主さん、全部降ろすから拭いてくれる?」
「え?ああ、良いよ。こっちも掃除出来て丁度良かったさね」
「ゲイン~、あたい服屋に行って良い?手分けした方が早いと思うし」
「そうだな。俺あそこには入りたくないし、頼むわ。みんなも服屋に行って良いぞ」
「あ、ゲインさん。もしかしたら追加で売ってと言われるかも知れないので、何本か預かっても構いませんか?」
「分かった。できるだけ細かい金で頼む」
「お任せ下さい」
反物を10本メロロアに託し、みんな店を出て行った。さて、金にならない仕事をするか。
「お前さん、マジックボックスを持ってるんだね」
「ちゃんと稼いでるからね」
「それならすぐに片付けられるねぇ」
「信用してくれるなら、だけどね」
「ふっふっふ、分かってるじゃないか、良い子だねえ」
「悪い事して捕まったらみんなに悪いからね」
「壁に架かってるのを、全部持って来とくれ」
「枚数覚えてる?」
「問題無いよ」
信用には応えねばならん。ちゃんと回収してカウンターに持ってった。チップ屋の店主が感知系スキル持ってないとか無いもんな。感謝と好意の感情を曇らせたくないし。
「コイツを拭くのも手伝ってくれると嬉しいねぇ」
「俺も見たいから丁度良いよ」
カウンターの奥から取り出した布で埃を拭って積み重ねる。埃で分からなかったが金チップだ。埃があまり付いてないのは銀チップが多い。色で分けとこう…。しかし多い。ばあちゃんと2人でやってはいるが、全部で500枚は結構な仕事だ。
「壁掛けにするのは良いけど、見易くしないとね」
「買ってくれたら飾る手間が省けるよ」
「買ってもまた飾るでしょ?」
「ふぇへへ、違いないねぇ」
1枚ずつ見て、良さそうな物を避けて行く。500枚。平置きのもあるから時間が足りないぜ…。
「鑑定しても良い?」
「おや、様を付けた方が良いのかねぇ?」
「汗水垂らした結果だよ。実家は農家だし」
気になる物を鑑定してみた。
立方体
銀の土魔法のスキルチップ
使用する事で土の応用魔法のスキルを取得できる。
3つの魔法を覚える。
これは見た目で分かってたけど試しに見てみた物だ。正直土魔法の初級は役に立たない。だがこれを覚えれば初級魔法の消費魔力が減るので使いやすくなるハズだ。使う用途が思い付かないが。
立方体
金の土魔法のスキルチップ
使用する事で土の発展魔法のスキルを取得できる。
3つの魔法を覚える。
これは上級魔法。中級の消費魔力が減るハズだ。更に初級も減ると嬉しい。魔法の内容は分からないようだ。
槍
銀の槍術のスキルチップ
使用する事で槍術のスキルを取得できる。
腕力、素早さ、集中力が増す。
アントルゼ用に欲しい。タララにも良さそうだよな。
サハギン
銀のサハギンのスキルチップ
使用する事で泳法のスキルを取得できる。
腕力、脚力、肺活量が増す。
泳ぐ必要があるなら、いや、無くてもこれは能力が上がるから良いかも。
ロックベアー
銀のロックベアーのスキルチップ
使用する事で肉体強化のスキルを取得できる。
体力、腕力、脚力が増す。
熊の銀。これは1枚でかなり美味いヤツだ。多分昨日倒した熊のダンジョン版だろう。これは乱獲したいぞ…。
時間が惜しくて詳しくは見なかったが、他にも
鑑定S G
探知S
察知G
弓S G
火S G
水S G
暗視G
フクロオオヤマネコS
リバークラブS
ダッシュバードS
なんてのがあった。勿論まだまだ沢山ある。野獣系は身体能力が上がる物が多いからあるだけ欲しい。
「そうだ。カウンターにある束は何なの?」
「ああ、コイツかい?まあ、言うなればお値打ち品ってヤツだね。白チップがほとんどだけど、絵柄が掠れて判別出来ないモンも入っとるよ。あんたさんなら分かっちまうだろうがねぇ」
「だったら見ないで買うよ。その方が面白そうだし。他には白チップある?売りに出せないのとか」
「おやおや、冒険者かと思ったら同業さんかね?」
「俺、他の国から来たからこの辺りで出るチップ持ってないし、集めるのも好きなんだ。それに、パーティーのみんなにも使ってもらうしね」
「そうかい。沢山買ってくれたら痛い腰が軽くなるねぇ」
「療養所に通えるくらいは買うつもりだよ」
「ふぇっへへ、良い子だよ。ちょいと待ってな」
ばあちゃん、カウンターにチップ起きっ放しで奥に行っちゃった。不用心だぞ?ただ待つのも手持ち無沙汰なので欲しいのをチョイスしたり、買わないのを分類別に纏め直したりしていると漸く戻って来た。
「言ってくれたら手伝ったのに。カウンターに上げるんでしょ?持つよ」
箱に縄引いて帰って来たばあちゃんから箱を奪い、カウンターに上げた。これは、だいぶ、重いぞ…。
「見た目より力持ちじゃないか。アタシが若けりゃ惚れちまってたかも知れないねぇ」
「チップ使ってるおかげだよ。これでいくら?」
「10万で良いよ」
「箱付きだよね?」
「ふへっ、持ってきな。高い方はどれにしたんだい?」
「この塊にしたよ。それとその束ね」
「そうかい。見せとくれ…」
探知S
察知G
弓S G
槍S
腕S G
脚S G
体S G
火S G
水滴S G
立方体S G
暗視G
サハギンS
ロックベアーS
フクロオオヤマネコS
リバークラブS
ダッシュバードS
ハシリウサギS
ウルフS
束チップ
箱入りチップ
総額で103万2000ヤンとなった。束チップはなんとサービスしてくれるって。これだけ買えばオマケされるか。ミスリル貨10枚に金貨3枚銀貨2枚をカウンターに乗せると、枚数を確認して笑顔を返してくれた。
「久しぶりに良い商売が出来たよ。また来ておくれ」
「まだ見てないのもあるから折を見てまた来るよ」
「ああそうだ。冒険者のあんたに1つ依頼があるんだが、お使い頼まれちゃくれんかね?」
「聞くだけ聞くよ?」
「なに、簡単なもんさ。商業でも冒険者ギルドでも良いから手紙を受付に渡して欲しいんだ。後はあっちがやってくれる。どうだい?」
熊の報酬も貰わなきゃだし、冒険者ギルドなら問題無いか。
「なら冒険者ギルドに行くよ。報酬は?」
「ほれ、太っ腹な先渡しじゃ」
銀のチップに水たまり…これって…。
「スライムの銀チップだ!」
「よく分かったね」
「依頼受けるよ」
お使いの依頼で1000ヤンは破格だ。銀のスライムも持ってないのでやらない手は無かった。チップを収納し、別れの挨拶をして店を出ると、一目散にギルドへと向かうのであった。そして、熊の報酬はみんなで来た方が良い事に気付き、無駄足を悔やんだ。手紙は渡したので依頼達成だけどな。
ギルドを出て、大通りの真ん中へと歩いてく。ど真ん中から2本程の裏通りまでが商業区と呼ばれていて大体の物はそこで揃うと言われている。真ん中には露店街。街の行事で使う時以外は雨の日以外何かしらの露店が立つそうだ。串焼きの焼ける匂いを耐えて向かうのは雑貨屋だ。ちゃんとした物を買いたいなら店舗で買った方が良い。悪さしたら店舗が潰されるからだ。
だが、この店は何で潰されないのだろう?値段が高い。コレは地代とかが絡んでるので何とも言えんが高過ぎだ。店頭で量り売りしてる油が1ナリ5000ヤン。瓶付きでは無い。中身だけでこの値段なのだ。更に、この店員、抜いてやがる。瓶の重さを計り、油を入れ、差額を出して値段を書いた木切れを渡し、客が店内に入って会計を済ませてる隙に、スキルで少し抜いていた。量を決めて抜けるのは大したものだが、手をかざしてちゃバレバレだ。悪意に愉快、そんな気持ちが顔に出てる。ここでは買い物出来ないや。踵を返して露店街に行こうとした所で、知った顔が出て来た。出て来てしまった。
「おう、嬢ちゃん達。鑑札を持って来たな?」
「持って来たよー」
「待てーっ!」
「ゲインさん?」
「メロロア、受け取らせるな」
「はっ、はいいっ」
タララの腕を取って後ろに回す。締め上げると痛いヤツだが力は込めず、固定だけしてくれている。
「ゲイン?メロロアさん、どしたの?」
「私にもさっぱり」
「メロロアが居て気付かなかったのか?」
「え?……は!?」
どうやら気付いたようだ。焦りと悪意と、言い訳の感情に。
「ちゃんと重さを計ってもらえ」
「高いのには目を瞑りましたが…、捕縛案件ですよ?」
「おっ、俺が何したってんだ!?」
「どうでも良いから計り直して継ぎ足してもらえ。でなけりゃ返品だな。本当に食用かどうかも分からんし」
「俺の仕事は完璧だ!イチャモン付けんならそれなりのケジメぇ付けてもらうぜっ!?」
「良いから計れ」
「うぎっ!あが…」
威圧を飛ばすと男が呻いて動きが止まり、店の中から店員が飛び出して来るまで苦しませてやった。
現在のステータス
名前 ゲイン 15歳
ランク C/D
HP 100% MP 90%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D
所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化☆ 肉体強化☆
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆ 短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス
鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き
水魔法☆ 水魔法
|├ウォーター
|├ウォッシュ
|└デリートウォーター
├ウォーターバレット
├ウォーターウォール
└ボーグ
土魔法☆
├ソイル
├サンド
└ストーン
火魔法
├エンバー
├ディマー
└デリートファイヤー
所持品
革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボン
皮の脚絆
水のリングE
水のネックレスE
水のブレスレットE
革製リュックE
├草編みカバン
├草編みカバン2号
├紐10ハーン×9 8ハーン
└布カバン
├冊子
├筆記用具と獣皮紙
├奴隷取り扱い用冊子
└木のナイフ
革製ベルトE
├ナイフ
├剣鉈
├剣鉈[硬化(大)]
├解体ナイフ
└ダガー
小石中472
小石大☆450
石大8
石片71
槍☆13×4
槍1
石製穂先24
冒険者ギルド証 400,000ヤン
財布 ミスリル貨223 金貨27 銀貨8 銅貨83
首掛け皮袋 鉄貨374
箱中 1,024,678ヤン
ミスリル貨 金貨69 銀貨283 銅貨422 鉄貨78 砂金1250粒
マジックボックス
├猪燻203枚
├戦利品
├箱
|└シルクワームの反物×30
├未購入チップ各種箱
├医薬品いろいろ箱
├食料箱×2
├調理器具箱 (肉漬け中)
├寸胴鍋(調味料)
├水飴寸胴1/2
├大鍋
├ヤカン
├お玉
├コップ
├皿
├カトラリー
├木ベラ
├ランタン箱
|└油瓶×10 8.6/10ナリ
├竈、五徳
├蓋付きバケツ大 (肉漬け中)
├テントセット
├マット×4
├中古マット×5
├毛布×9
└洗濯籠
├耐水ブーツ
└耐水ポンチョ
鉄兜E
肩当E
胸当E
腰当E
上腕当E
ゲル手甲E
ゲル股当E
帆布のズボンE
脛当E
鉄靴E
熊皮のマントE
籠入り石炭0
石炭75ナリ
ランタン
油瓶0/0.8ナリ
着火セット
輪止め×2
飼葉たっぷり
服箱
├中古タオル
├中古タオル
├未使用タオル×2
├中古パンツ
├パンツE
├未使用パンツ×2
├ヨレヨレ村の子服セットE
├サンダル
├革靴
├街の子服Aセット
└街の子服Bセット
スキルチップ
ハシリウサギ 0/4521
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 0/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 0/2859
ハチS 0/1
カメ 0/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 0/1861
石S 0/1
スライム 0/2024
オオスズメ 0/1573
トンビS 0/4
フォレストモンキー 0/972
ウルフ 0/1070
カラードウルフ 0/1
ワニS 0/1
グラスベア 0/1
ラージアントワーカー 0/100
ラージアントソルジャー 0/100
蝶 0/204
花 0/161
腕 0/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 0/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 0/576
体 0/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 0/627
ナイフ 0/640
ナイフS 0/1
短剣 0/352
短剣S 0/100
鎧S 0/1
袋S 0/1
箱G 0/1
水滴 0/446
水滴S 0/1
立方体 0/525
火 0/4
魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
ドクハキヤモリ 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
眼鏡S 0/100
眼鏡G 0/1
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