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第三十三話 豊穣祭とトラブルとお誘い(1)

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「豊穣祭…ですか」

と、若干困惑した。
よくこの店に来て下さる街の村長さんが
「この店は街の人間に人気だから、豊穣祭の際に屋台を出店して欲しい」
と頼まれた。

豊穣祭とはその名の通り、穀物の実りが今年も豊かであるように神に穀物をささげるお祭りのことである。
豊穣祭が行われるのは夜のため、剣聖の仕事がある。
というか、豊穣祭は国の祭りのため剣聖はどちらかというと警備に当たる可能性がある。
そういうお祭りごとにはトラブルがつきものだ。
そのような雑用に騎士団が動いてくれることなどない。
そういう雑用は決まって剣聖の仕事なのだ。

だが断るにしても、「夜には別の仕事があるので」と言えば、
水商売の仕事をしているみたいに聞こえてしょうがないに違いない。

ここは適当に答えるしかないだろう。

「その…申し訳ありません。
大変ありがたいのですけれど、その日は別の約束がありまして…」
「む、それならしょうがないな。
店長殿はまだお若く美しい。豊穣祭に一緒に行く恋人がいるかな。」
「あ、あはは…そんな所です」

嘘をつくのは心苦しい限りだが、水商売の仕事をしていると思われるのも、
剣聖とバレてしまうのもごめんなのだ。
ごめんなさい村長さん…と心の中で手を合わせた。

屋台といえば、焼きそばにタコ焼き、お好み焼きにりんご飴…、
フライドポテトにクレープ…といった作りたいものが多すぎる物が多く浮かぶが、
剣聖の仕事なしではこのカフェも成り立たない。
しょうがない…と息をついた。

予想通り、シアンから豊穣祭の警備に当たる話が夜された。
「分かっていたと思うけど、剣聖は豊穣祭は警備に当たります。
その日は午前組の剣聖と一緒よォ。
その日は目立たないように剣だけ所持して私服で警備に当たること。
あまり目立つ格好をしていくと、顔が知れてる者は剣聖だとバレて騒がれるし、
悪い奴を滅する機会が減るからね。」

お祭りの時も、祭りを狙う盗賊がいてもおかしくない。
もしそんな輩がいようものなら、出てきたら容赦なく滅するということか。
と、私服で対応することに少し驚く。
わざと武装して警戒させるのかと思いきや、油断して出てきたところを狙うとは…。
そして、午前組の剣聖とは驚くほど顔を合わせたことがなかった。

でもその人たちも私服なら顔も知らない訳だし、
あちらから話しかけてこない限り、絶対誰だか分からない。
だからそこまで警戒する必要もないか。

「剣聖は祭りの間巡回して、トラブルが起きたら迅速に対応すること。
盗賊や山賊、魔物が現れたら抜剣。
国民の命を最優先すること。
巡回している間は自由ってことにするけど、常に周りを警戒。
いいわね?」

『了解』

豊穣祭は一週間後、警備に当たることから、屋台はできないだろうが、
お祭りを楽しむことくらいは出来そうだ。
…だが誰と回るんだ?とそこが一番の問題だということに気が付く。

警備があるためその場にいないといけないことは決定事項。
だが豊穣祭で最後のラストダンスで踊ればその相手と結ばれるというジンクスがある。
そのためあたりはカップルだらけなのだ。

その場に警備という仕事で女一人でいるなどとは悲しすぎるだろう…と顔を青くした。


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