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第一章

53.新しい妃5

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 その日、青から忠告を受けた。
 
「郭貴妃には気を付けろ」

「貴妃を?郭婕妤ではなく?」

「ああ」

「……何故……?」

「あの貴妃は胡散臭い」

「……どこら辺が?」

「何もかもだ」

「……後宮で貴妃を悪く言う者はいないわよ? 妃だけでなく、女官や宦官にも優しいと評判だわ。あえて言うなら徳妃くらいじゃないかしら?貴妃を悪し様に言うのは……」
 
「だからこそ怪しい。貴妃に心酔している者達が多過ぎる。オレもココの長官になって知ったがコレは異常だ。……何かあると思って間違いないぜ」
 
「そう……かしら……?話した感じでは人当たりの良い優しい妃にしか見えなかったけど……。郭婕妤の事で迷惑を被った妃達一人一人に頭を下げて回っていると聞いているわ」
 
「まあな……だから怪しいんだ。あれだけ出来た人間などこの世に存在しない」
 
「……それ、偏見では?世の中、出来た素晴らしい人物はいるわよ。過去の歴史上の偉人とか」

 私の言葉に青は鼻で笑った。
 
「はっ!偉人の出来が良い?そんなもの、後世の人間が脚色して美化しているに過ぎねぇぜ!」
 
「…………」
 
「現世にいる優れた人間ってヤツはな……大抵ロクデナシなんだ。兎に角、貴妃には用心しろ」

 言い切られてしまった。
 青の話を聞いている限りは貴妃はとても悪い人物とは思えない。優しく微笑む姿が姉上に似ているせいか、どうしても悪く捉えられないのかもしれない。けど、青は確信をもって言っているようだった。理由は分からない。私に話すつもりもないようだから私も聞かなかった。だけど、「貴妃に近づくな」と言いたいのは分かった。そしてきっとそれが正しい判断だと言う事も漠然とながら理解した。青は信用出来る。


 彼が言うのなら間違いない。


 

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