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第27話:どうやら囚われてしまった様です

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「レティシア、さあ、もう行くよ」

私を抱きかかえると、歩き出したリアム様。なんだか最近ずっとこのスタイルだったせいか、すっかり慣れてしまった。懐かしい王宮の廊下。懐かしいメイドや護衛騎士たち。なんだか本当に帰ってきたのだなってホッとする。

廊下をしばらく進むと、いつも私が使っていた部屋…の前をなぜか素通りするリアム様。あら?一体どういうことから?混乱する私をよそに、さらに奥に進んでいくと、大きな南京錠が付いた扉の前に着いた。

さらに護衛騎士が4人も待機している。まさかこの部屋が…そう、そのまさかだった。

「ここがレティシアの部屋だよ。さあ、早速中に入ってみよう」

そう言うと、扉を開けたリアム様。

「この部屋は…」

以前の私の部屋とほぼ作りは一緒だ。さらに部屋も広くなっており、簡易的ではあるが、キッチンまである。まさかアモーレ王国で話していた事が、もう実現されているなんて…さらにキッチンには、小さな冷蔵庫やオーブンなども備え付けられていた。

これはすごいわ。でも…

「リアム様、とても素敵な部屋をありがとうございます。でも、どうして窓に分厚い鉄格子が付いているのですか?」

そう、部屋には窓が2つ付いているのだが、どちらも分厚い鉄格子で覆われているのだ。

「もう自分の行いを忘れたのかい?君はあの日、窓からロープを垂らして脱出しただろう?だから窓から脱出できないようにしたまでだよ。ちなみにこの窓、10cm程度しか開かないようになっているんだ。ほらね」

そう言って窓を少しだけ開けたリアム様。さらに部屋のいたるところに、小型の撮影機が設置されている。

「この撮影機は…」

「もちろん、君を監視するためのものだよ。本当に少しも目を離しておけないからね。それからこの鎖が、君をつないでおくためのものだ。僕がいない間に万が一脱走されたら大変だからね。あと、言う事を聞かなかった時に使用するお仕置きの器具などもここに入っているよ」

ちょっと待って…この人は一体何を言っているの?そもそも、この部屋からどうやって脱走しろというの?絶対に無理よ。それにお仕置きの器具って何?そんな恐ろしい物を置かないでよ!

「とにかく、結婚式の日までこの部屋から出すつもりはないから、覚悟してね」

そう言うと、にっこり笑ったリアム様。結婚式って後3ヶ月くらい先よね。そんなにも長い期間を、この場所で過ごせというの…

「リアム様、もちろんお庭などへの散歩は…」

「ダメに決まっているだろう!とにかく僕から逃げた罰だよ。本当は半年間はこの部屋で反省してもらおうと思ったんだけれど、それだと結婚式が挙げられないからね」

そう言ってにっこり笑ったリアム様。ちょっと…さすがにこれは!そう抗議の声を上げたいが、もちろんそんな事を言う権利なんて私にはない。どうやら、完全にリアム様に囚われてしまった様だ。とにかく、何とか3ヶ月間やり過ごさないと!


~3ヶ月後~
純白のウエディングドレスに身を包み、頭には王族の証でもあるパンドラ王国の紋章が刻まれたティアラを、そして首には両親からもらった形見のネックレスを、耳にはリアム様からもらったサファイアのイヤリングを身に着ける。

そう、今日はリアム様と私の結婚式だ。今日の為に、各国からたくさんの王族が集まってくれている。もちろん、国内の貴族たちも。本来なら物凄く緊張する日なのだが、私にとっては待ちに待った日なのだ。

なぜかって?それはやっと外に出してもらえるからだ。この3ヶ月間、本当に部屋から一切出してもらえなかった。そのうえ、平民として生きていたことから、メイドも付けてもらえなかった。会える人間といえば、リアム様ぐらい。

最初は料理をしたり本を読んだり、次期王妃としての公務(主に書類関係)をこなしたりしていたが、やはり人間外に出たくなるし、他の人間にも会いたくなるもの。何とか外に出たくてリアム様に泣きついたものの、首を縦に振ってくれることはなかった。

こうなったら強行突破だ!そう思ったものの、厳重な警備の中抜け出せる訳もなく、あっさり捕まってはリアム様から厳しいお仕置きを受ける羽目に…結局泣く泣く3ヶ月間を部屋で過ごしたという訳だ。

「レティシア、準備はできたかい?あぁ、やっぱりレティシアを外に出したくないな…」

真っ白なタキシードに身を包んだ物凄くかっこいいリアム様が、物凄く恐ろしい事を言いながらやってきた。

「リアム様、今日は私たちの為に、沢山の人が来てくださっているのですよ。今更そんなことを言わないでください!」

「わかっているよ…さすがに今日だけはレティシアを外に出さないといけない事くらい、僕にもわかっているよ」

えっ?今日だけはって言った?

「リアム様、今日だけはとは、いったいどういう意味…」

「リアム殿下、レティシア妃、そろそろお時間です」

「わかった。さあ、レティシア。行こうか」

リアム様に手を引かれ、教会へと向かう。って、ちょっと、大切な事が聞けなかったじゃない。本当に間が悪いのだから!

それでも2人で手をつないで、教会へと向かう。さすが一国の王太子の結婚式だけのことはある。たくさんの王族たちが、来てくれている。あぁ、こんなに沢山の人間がいるわ!早く話がしたい!うずうずする体を押さえ、周りを見渡すと、リリアンさんを始め、村の人たちの姿も!

「リアム様、リリアンさんたちを呼んでくださったのですか?」

「ああ、あんな形で別れる事になってしまったからね。彼女たちも君の事を随分と心配していたし。それで、レティシアの晴れ姿を見に来てもらったんだよ」

「リアム様、ありがとうございます!嬉しいです」

ギューッとリアム様に抱き着いた。まさかリリアンさんたちに会えるなんて、嬉しくてたまらない。

「そうそう、改めて僕の妃になったレティシアにこれを」

そう言うと、金のブレスレットを私の腕に着けたリアム様。パンドラ王国の紋章が刻まれた、立派なものだ。

「こんな素敵なブレスレットを頂けるのですか?嬉しいです」

「これ、僕とお揃いなんだよ。これがあれば、少し離れた場所からでも通信ができるんだよ。僕が公務に行っていても、いつでもレティシアと話ができるからね。さあ、さっさとこの面倒な式を終わらせ、部屋に戻ろう」

「えっ…あの、部屋にですか?」

「そうだよ、そもそも結婚式が終わってからも、基本的に君はあの部屋で過ごしてもらうつもりでいるしね。そうだな、子供が出来て完全に逃げられなくなったら、その後は考えてあげるよ」

何ですって!それじゃあ、私はこれからもずっとあの部屋から出してもらえないの…でも、子供が出来れば出してもらえるのよね。それに今はたくさんの人が私たちの為に集まってくれている。

とにかく今を精一杯楽しまないと!

なんだかんだで籠の中の生活を受け入れているレティシア。これからもずっと、リアムに囚われ続けるのであった。


おしまい


~あとがき~
これにて完結です!
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
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