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第5話:お兄様が迎えに来ました
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「ルーナちゃん、見て。この貝殻、とても綺麗でしょう?ロードが見つけたのよ」
嬉しそうに貝殻を見せてくれるお義姉様。ロードもすっかり海に慣れたようで、よく砂浜に座って遊んでいる。
今日もいつもの様に、砂浜に遊びに来ているのだ。
「まあ、ロード、すごいわね。こんな立派な貝殻を拾っただなんて。きっとあなたのお父様にあげたら、喜ぶわよ」
「あ~ぃ」
私の言葉に、嬉しそうに手を挙げるロード。なんて可愛いのかしら?
「もう明日には帰らないといけないのね…どうせならもう少しいたいわ。せっかくここまで来たのだから、後3日くらいここにいても問題ないわよね。ね、ルーナちゃん」
お義姉様がそんな事を言いだしたのだ。確かに私もまだ領地にいたいが、きっとお兄様がそれを許さないだろう。
何しろお兄様は、お義姉様とロードを溺愛している。きっとこの1週間、寂しくてシクシク泣いていただろうし…
その時だった。
「ソフィア、ロード!会いたかったよ」
この声は…
声の方を振り向くと、そこにはお兄様の姿が。そのままお義姉様とロードに抱き着いた。
「あなた、どうしてここに?」
「どうもこうもないよ!この1週間、君たちに会いたくてたまらなかったんだ。だから昨日の夜、仕事が終わり次第馬車を走らせてきたんだよ。あぁ、やっと会えた」
よく見るとお兄様、やつれているわ…きっとお義姉様とロードに会えない寂しさから、ろくにご飯も食べていなかったのだろう。
「もう、あなたったら!でも、寂しい思いをさせてしまってごめんなさい。これ、さっきロードがあなたの為に拾ったのよ」
さっきの貝殻をお義姉様がお兄様に渡した。
「これを俺にかい?ロードはなんて優しい子なんだ!さあ、こっちにおいで。それより、こんなに日差しの強い場所にいたら、君たちのか弱い肌が日焼けをしてしまうよ。すぐに屋敷に戻ろう」
お兄様がお義姉様とロードを連れ、さっさと屋敷に戻ろうとしている。
「大丈夫よ、ちゃんと肌を守るクリームを塗っているから。ほら、全く焼けていないでしょう?それに海はとても気持ちいいのよ。あなたも入りましょう」
お義姉様がお兄様に向かって笑顔で伝えている。でも…
「ソフィア、よく見たら足が丸見えではないか!何だい、そのはしたない服は。君は人妻なんだよ。ほら、すぐに着替えるんだ!全く、だから君1人を領地に行かせるのは不安だったんだ。母上は何をしていたんだ!ルーナを静かな場所で休息させてやりたいと言うから、仕方なく許可したのに。そういえばルーナは?」
やっと私の存在に気が付いたお兄様。
「ルーナ、元気そうじゃないか?どうだ、気持ちは落ち着いたかい?そうそう、エマ嬢が君を心配して何度も屋敷を訪ねてきてくれたよ。それに他の令嬢たちも。王都に戻ったら、きちんとお礼を言うんだよ」
「まあ、エマたちが?それは申し訳ない事をしてしまったわ。お兄様、私はこの通り元気ですわ。領地でゆっくり休みましたから。それにお義姉様が随分と私を気遣ってくれて。本当にありがとうございます。お兄様、少しやつれてしまいましたね…」
ペコリと頭を下げた。
「本当だよ。そのせいで、僕は死にそうな日々を過ごしたんだ。でも、ルーナが元気になってくれてよかった」
そう言ってほほ笑んでくれたお兄様。家族の気遣いのお陰で、随分と心も落ち着いた。
「さあ、屋敷に戻ろう。明日には王都に帰らないといけないからね」
お兄様と一緒に皆で屋敷に戻る。その後は領地の街で買い物をして過ごした。そして夜、お父様も合流し、皆で晩餐を頂く。新鮮な魚介類を頂くのも、これで最後か。そう思うと、なんだか寂しくなってきた。
「ルーナちゃん、どうしたの?そんな悲しそうな顔をして。もしかして、まだ王都に帰るのが辛いの?可哀そうに…そうだわ、私がルーナちゃんの心が落ち着くまで、ずっと傍にいてあげる。だからあなたはお義父様とお義母様と明日帰って」
なぜか満面の笑みでお義姉様がそう言ったのだ。
「ソフィア、どうして君までここに残らないといけないんだ!ルーナがまだ寂しいなら、母上が残ればいいだろう!とにかく君は明日僕とロードと一緒に帰るんだ。わかったね」
案の定、お兄様が怒っている。
「お義姉様、私の事を心配してくれてありがとうございます。でも、もう大丈夫ですわ。ただ、この新鮮な魚介類をもう食べられないのかと思うと、なんだか悲しくて…」
「そんなにルーナは領地の新鮮な魚介類が気に入ったのかい?それなら、領地から定期的に魚介類を取り寄せよう。ただ…やはり半日かかるから、少しは鮮度が落ちてしまうがな」
「あら、それならルーナが領地にこればいいのではなくって?半日で来られるのですもの。いつでも来たい時に、これはいいわ」
「それはいいわね。それなら私もぜひお供するわ」
すかさずお義姉様が話に入って来た。ただ、お兄様が怖い顔でお義姉様を睨んでいるが…
「皆様、私の為に、ありがとうございます。そうですわよね、半日で来られるのだから、またいつでもこればいいのですよね。私、この1週間で随分と気持ちも落ち着きましたわ。本当に、エヴァン様の事を考える暇もないくらい、充実した日々を送れました。だから、もう大丈夫ですわ。明日皆と一緒に、王都に帰ります」
たった1週間だったけれど、本当に充実した時間だった。きっともう大丈夫だ。なんだかそんな気がした。
嬉しそうに貝殻を見せてくれるお義姉様。ロードもすっかり海に慣れたようで、よく砂浜に座って遊んでいる。
今日もいつもの様に、砂浜に遊びに来ているのだ。
「まあ、ロード、すごいわね。こんな立派な貝殻を拾っただなんて。きっとあなたのお父様にあげたら、喜ぶわよ」
「あ~ぃ」
私の言葉に、嬉しそうに手を挙げるロード。なんて可愛いのかしら?
「もう明日には帰らないといけないのね…どうせならもう少しいたいわ。せっかくここまで来たのだから、後3日くらいここにいても問題ないわよね。ね、ルーナちゃん」
お義姉様がそんな事を言いだしたのだ。確かに私もまだ領地にいたいが、きっとお兄様がそれを許さないだろう。
何しろお兄様は、お義姉様とロードを溺愛している。きっとこの1週間、寂しくてシクシク泣いていただろうし…
その時だった。
「ソフィア、ロード!会いたかったよ」
この声は…
声の方を振り向くと、そこにはお兄様の姿が。そのままお義姉様とロードに抱き着いた。
「あなた、どうしてここに?」
「どうもこうもないよ!この1週間、君たちに会いたくてたまらなかったんだ。だから昨日の夜、仕事が終わり次第馬車を走らせてきたんだよ。あぁ、やっと会えた」
よく見るとお兄様、やつれているわ…きっとお義姉様とロードに会えない寂しさから、ろくにご飯も食べていなかったのだろう。
「もう、あなたったら!でも、寂しい思いをさせてしまってごめんなさい。これ、さっきロードがあなたの為に拾ったのよ」
さっきの貝殻をお義姉様がお兄様に渡した。
「これを俺にかい?ロードはなんて優しい子なんだ!さあ、こっちにおいで。それより、こんなに日差しの強い場所にいたら、君たちのか弱い肌が日焼けをしてしまうよ。すぐに屋敷に戻ろう」
お兄様がお義姉様とロードを連れ、さっさと屋敷に戻ろうとしている。
「大丈夫よ、ちゃんと肌を守るクリームを塗っているから。ほら、全く焼けていないでしょう?それに海はとても気持ちいいのよ。あなたも入りましょう」
お義姉様がお兄様に向かって笑顔で伝えている。でも…
「ソフィア、よく見たら足が丸見えではないか!何だい、そのはしたない服は。君は人妻なんだよ。ほら、すぐに着替えるんだ!全く、だから君1人を領地に行かせるのは不安だったんだ。母上は何をしていたんだ!ルーナを静かな場所で休息させてやりたいと言うから、仕方なく許可したのに。そういえばルーナは?」
やっと私の存在に気が付いたお兄様。
「ルーナ、元気そうじゃないか?どうだ、気持ちは落ち着いたかい?そうそう、エマ嬢が君を心配して何度も屋敷を訪ねてきてくれたよ。それに他の令嬢たちも。王都に戻ったら、きちんとお礼を言うんだよ」
「まあ、エマたちが?それは申し訳ない事をしてしまったわ。お兄様、私はこの通り元気ですわ。領地でゆっくり休みましたから。それにお義姉様が随分と私を気遣ってくれて。本当にありがとうございます。お兄様、少しやつれてしまいましたね…」
ペコリと頭を下げた。
「本当だよ。そのせいで、僕は死にそうな日々を過ごしたんだ。でも、ルーナが元気になってくれてよかった」
そう言ってほほ笑んでくれたお兄様。家族の気遣いのお陰で、随分と心も落ち着いた。
「さあ、屋敷に戻ろう。明日には王都に帰らないといけないからね」
お兄様と一緒に皆で屋敷に戻る。その後は領地の街で買い物をして過ごした。そして夜、お父様も合流し、皆で晩餐を頂く。新鮮な魚介類を頂くのも、これで最後か。そう思うと、なんだか寂しくなってきた。
「ルーナちゃん、どうしたの?そんな悲しそうな顔をして。もしかして、まだ王都に帰るのが辛いの?可哀そうに…そうだわ、私がルーナちゃんの心が落ち着くまで、ずっと傍にいてあげる。だからあなたはお義父様とお義母様と明日帰って」
なぜか満面の笑みでお義姉様がそう言ったのだ。
「ソフィア、どうして君までここに残らないといけないんだ!ルーナがまだ寂しいなら、母上が残ればいいだろう!とにかく君は明日僕とロードと一緒に帰るんだ。わかったね」
案の定、お兄様が怒っている。
「お義姉様、私の事を心配してくれてありがとうございます。でも、もう大丈夫ですわ。ただ、この新鮮な魚介類をもう食べられないのかと思うと、なんだか悲しくて…」
「そんなにルーナは領地の新鮮な魚介類が気に入ったのかい?それなら、領地から定期的に魚介類を取り寄せよう。ただ…やはり半日かかるから、少しは鮮度が落ちてしまうがな」
「あら、それならルーナが領地にこればいいのではなくって?半日で来られるのですもの。いつでも来たい時に、これはいいわ」
「それはいいわね。それなら私もぜひお供するわ」
すかさずお義姉様が話に入って来た。ただ、お兄様が怖い顔でお義姉様を睨んでいるが…
「皆様、私の為に、ありがとうございます。そうですわよね、半日で来られるのだから、またいつでもこればいいのですよね。私、この1週間で随分と気持ちも落ち着きましたわ。本当に、エヴァン様の事を考える暇もないくらい、充実した日々を送れました。だから、もう大丈夫ですわ。明日皆と一緒に、王都に帰ります」
たった1週間だったけれど、本当に充実した時間だった。きっともう大丈夫だ。なんだかそんな気がした。
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