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策略

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「先生ー!居る?」

御園診療所にエリックを運び込んだ。

「なんだぁ?葵どうしっ!ってお前血だらけじゃないかっ!!何があった!?」

御園は気を失ってるエリックより葵の姿を見て驚いた。

「ああ、忘れてた。これ血糊だから。」

「血糊って・・?じゃ、患者はこっちか?」

エリックに視線を移した。

「とりあえず、ベッドに寝かせてくれ。」

「わかった。」

司がエリックをベッドに寝かせた。
御園がエリックの診察を始める。

「先生。シャワー借りてもいい?流石にこの格好じゃ居られないから。」

「ああ、いいぞー?」

「ん。じゃ、借りるね。」

そう言って診察室を出ていった。
御園の家は診療所の上の階にあった。手慣れた様子で鍵を開け室内に入ると葵はバスルームに向かった。
脱衣所で防弾ベストを脱ぐ。手にズッシリとした重みを感じる。

「っ・・・。はっ・・。」

胸を押さえながら片膝をつく。呼吸も少し荒い。
暫くうずくまっていたが、呼吸を整えてシャワーを浴びた。
爆風に巻き込まれて体中傷だらけだ。
用意してきた着替えに袖を通した。

(エリック大丈夫かな?)

血糊の付いた洋服をバッグに詰め込んで診療所へ戻った。




「一体何があったんだ?」

エリックを診ながら司にたずねた。
司は事の経緯を御園に話した。

「なるほどなぁ。それであんな格好してたのか?・・・。よし、彼は大丈夫だ。打撲が酷いが明日の朝には気が付くだろうよ。」

「そうか、良かった。」

司の顔に安堵の表情が浮かんだ。

「まぁ、茶でも飲むか?」

御園は給湯室でコーヒーを淹れて戻ってきた。

「ありがとう、先生。」

「ああ。」

そこへ、葵が戻ってきた。

「先生、お風呂ありがと。エリックはどうだった?」

「ああ。大丈夫だよ。」

「そっか。」

ホッとしたように微笑んだ。
御園は引き出しから薬を取り出すと葵に渡した。

「お前はそれ飲んでおけ?」

「・・・。」

「薬?何の薬なんだ?」

「痛み止めだ。」

「痛み止め?葵どうかしたのか?」

心配そうに葵に近付こうとした時、司を避けるように薬を手にとって給湯室へ行ってしまった。

「あおい?」

「至近距離からライフルで撃たれてるんだ。いくら防弾ベストを着けててもアバラの2~3本ヒビが入っててもおかしくない。」

「えっ?」

「センセ。私は大丈夫。ほんと過保護なんだから!私ちょっと電話してくるから。」

そそくさと診察室を出ていってしまった。

「俺、何かしたかな?」

「・・・。さぁな?葵に聞くんだな?」

「そう・・だよな。」




診療所を出た葵は冬の凛とした空気を吸い込んだ。

「っ・・・。」

御園の言う通りだった。

(折れてるって感じじゃない。大丈夫。)

気を取り直してスマホで電話を掛けた。

「ああ、樹?ちょっとお願いがあるんだけど。今大丈夫かな?」

『大丈夫だけど、葵は大丈夫なのか?その・・怪我とかしてないか?』

「・・・。ダイジョウブ。」

『今の間が気になるケドナ?』

「ふふっ。本当に大丈夫だよ?それより・・・。」




『本当に良いんだな?』

「うん。お願い。」

一つため息をつく。

『わかったよ。ただし、上手くいくかは保証しないぞ?』

「大丈夫。きっと上手くいくから。それじゃ、お願いね?」

電話を切ると夜空を見上げた。

「クリスマスには奇跡がおきるんだよ・・。」

呟かれた言葉は夜の闇に溶けて消えた。



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