ブルーナイトはアナタと

6戦目-D、4月、富士咲望編

兄の応援と夜の新幹線と通信

　新学年度が始まった直後の4月上旬の日曜日。

　その年のF1グランプリの第5戦は日本の鈴鹿であり、葵の兄、明星春樹も参戦していた。

　葵は女の子だ。

　男子と違い、F1なんかに全然興味はなかったが春樹が出場するのだ。鈴鹿まで出向き、特別席で兄の応援をした。

　春樹の実力は6位から8位といったところだったが、この日は先頭集団が3台も接触事故を起こしてリタイアし、セーフティーカーの幸運も重なって春樹がお立ち台の3位に入賞してF1グランプリの鈴鹿戦は幕を閉じたのだった。





　鈴鹿は三重県にある。

　明日、月曜日には学校があるので葵は強行日程で都内に移動だったが、祝勝会やスタッフの慰労会は名古屋のホテルで催された。当然、殊勲者の春樹も出席し、妹の葵も顔を出したので、名古屋から東京に新幹線で戻ったのは夜になってから。

　夜22時を回って、乗車してる新幹線が間もなく東京に到着するという、まさにそのタイミングで、視界に青色のフィルターが掛かって葵はブルーフィールドに巻き込まれたのだった。





　戦術ランクDのブルーフィールド。

　時間は18分。





　戦術ランクDは初めてね。

　ノーマルモードの実力なのにイージーモードで遊ぶ気分かしら？

「観戦で今日は疲れてるからこれくらいの方がいいかしら」

　でも出来れば空気を読んで欲しかったわよね。

　サクッと終わらせますか。

　葵は滑空型バトルスーツ-20バッドレディーを纏って、





　ナノマシン成長LV27（641ポイント→582ポイント）

　NE415/415

　武器庫21→22

　NE効率補正5

　ガンファイト・威力補正4

　ガンファイト・射程補正44

　継続時間・発射数補正5

　肉体強化30Max+α

　知覚強化14→30Maxt

　治癒強化5

　NE回復強化14→27





　戦歴、【MVP（B2、C1）】【撃墜王（B2、C1）】【ルーキー・スコアレコード】【パーフェクト（F1）】【生還者】





　武器庫（スペース19→スペース21）

　レイガン-LQ12。

　レイガン-A56・レクイエムΣ。

　レイシールド-A3。

　治癒ナノマシン注射器（軽傷用）。

　NEタンク80。

　レイショットガン-88・Kアーサー・レジェンド。

　滑空型バトルスーツ-20バッドレディー。

　レイダブルアックス-デスムーン。

　パワードスーツ-BEジャブ・兵装2bタイプ（スペース3）

　NEタンク400。

　レイショットガン-89・ヘラクレス。

　NEタンク350。

　エアバイク-GXアナコンダ（スペース2）。

　NEタンク200。

　レイライフル-PX69・オードリー。

　治癒ナノマシン注射器（完全治癒用）。





　ナノマシンの成長数値を、高熱を引き起こさない限界の30まですぐさま割り振った。

　やはり、戦術ランクHellの報酬は治癒ナノマシン注射器（完全治癒用）だけらしい。

　あれだけ苦労したのに。厳密には死に掛けたのに。

　成長レベルも成長ポイントも増えてないなんて。

　尚、武器庫を1上げたのは武器庫のスペースが全部埋まっていたからだ。

　武器庫22になった事で武器庫スペースが2貰えて、更に選択アイテムの、





　NEタンク80。

　治癒ナノマシン注射器（軽傷用）。





　一馬に聞いていたこの2つの他に、





　バトルスーツ修復キット。

　エアバイク修復キット。

　パワードスーツ修復キット。





　この3つの選択アイテムも追加で出現していた。

　こんなのノータイムでパワードスーツ修復キット一択じゃないの。これで武器庫のスペースは残り1。

　武器庫スペースのない窮屈な日々が続く訳ね。

　NEタンク同士がくっついたりしないのかしら？

　葵がアイテムをスライドさせてると、





『エアバイク-GXアナコンダにNEタンク80を搭載しますか』





　質問されたので、

「する訳ないでしょ、NEタンクは数が少ないのに・・・」

　そうツッコんでると、





『新幹線に乗ってるLV27の人、聞こえるかい？』





　通信が聞こえてきた。男の声だ。

「えっ？　誰？」

　葵が周囲を見る。車内には葵以外に誰も居ない。窓の外もだ。

　ってか今、画面から聞こえた？

『ん？　女性なの？』

「女だと悪いの？」

『いや、珍しいと思っただけさ。戦闘員は大概男だからね』

「ってか、どこに居るの？　私の近く？」

『いや、300メートルは離れてる』

「じゃあ、この声はどうやって？」

『通信士用のヘルメットだよ。通信機能も付いててこちらの任意で連絡が取れる』

「LVまで分かるの？」

『優れ物の識別レーダー付きだからね』

　そんな便利アイテムまである訳ね。そう言えばパワードスーツやエアバイク以外の選択アイテムの中に確か・・・

『それよりも、このブルーフィールドではタイムアップを狙いたい。協力して欲しい』

「？　戦術ランクDでタイムアップってーー意味が分からないんだけど？　そんな便利アイテムを持っていて私よりも弱いの？」

『いいや。ボクの成長LVは32だよ。戦術ランクDならボク1人でも余裕だろうけど。でも、今回のブルーフィールドの未来への情報送信装置が上空に浮いていて手が出せない。だから・・・』

「そんなポイントだけが貰える装置なんて無視すればいいじゃないの」

　それが葵の認識である。

『何を言ってるんだい？　あれを潰さないと活躍する度に敵陣営にブルーフィールドで狙われるじゃないか？』

　おっと、新情報だ。

　もしかして龍馬医大付属病院のあれって――でも白百合女学園の時はちゃんと潰したわよ・・・となると、まさか。

「質問なんだけど、未来への情報送信装置って戦術ランクFにもあるの？」

『うん。確認済みだよ』

　だから龍馬医大付属病院でピンポイントでブルーフィールドが発生した？　いえ、エロ男も居たからあっちが狙われた可能性も。

　それよりも生徒会長よ。何も知らないんじゃないの、もしかして？

「へ～。情報送信装置は1基だけなのよね？」

『このサイズのブルーフィールドならね』

　また新情報だわ。

「つまりサイズが大きくなったら――」

『戦術ランクAAでは3基を確認している』

「へ～。ねえ、私がエアバイクを持ってるって言ったら信じる？」

『上空の情報送信装置まで到達出来ると？　本当なのかい？』

「前回終わりのボーナスの選択アイテムでゲットしたところだから使った事はまだないけど。情報送信装置の場所を教えてちょうだい。倒すわ」

『待った。高速での移動手段があるのなら支援物資ボックスも探したい。合流しないかい？』

　またまた新情報だわ。

　通信で喋ってる男が優秀なだけ？　それとも生徒会長がポンコツなの？

「何それ？」

『この時代の地球をナノマシンで支援してる未来の人類側がブルーフィールドに送ってくる支援物資さ。大体の目安でブルーフィールド発生の10分後に後発で送られてくる』

「そんなのがあるの？」

『知らなかったのかい？』

「ええ、そちらのアイテムで探せるのね、それ？」

『まあね』

「合流しましょ」