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地味な勇者活動、勇者の有名税は当然、暗殺者の訪問

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 フメミス王国というところは北西部の北側のネレ海に面した辺境国だ。

 面積はそこそこだが過酷な環境なので人口も少ない。

 そのような条件下ならば通常は魔物が多数生息してる訳だが。

 大陸北西部の魔物達には、これまで縄張りという概念がなかった。

 流動型の渡り鳥タイプだったのだ。

 大型であればあるほど。

 例外は、





 小型の魔物。

 地中深くに隠れられる魔物。





 それくらいか。

 飛翔型の魔物達も縄張りを持つ事がなかった。

 理由は当然、大陸北西部の魔物達の王、『古代毒蜘蛛ギガノダー』の存在だ。

 『古代毒蜘蛛ギガノダー』の動きに合わせて、魔物達は避けるように移住を繰り返していたのだ。

 喰われて死にたくなかったので。





 そして『古代毒蜘蛛ギガノダー』はオレによって退治された。





 こうして大陸北西部の魔物の生態はこれまでとは異なる事となり、徐々にだが魔物達が縄張りを持つようになり始めた。





 その動きに対応出来なかったのが、辺境で人が少なく土地が森ばかりのフメミス王国だ。





 つまり、

 長々と説明したオレが何が言いたかったのかと言えば、





 オレはまだフメミス王国に滞在しており、

 新国王に魔物討伐を依頼されて狩りまくっていた。





 という事が言いたかった。





 ◇





 もっともオレの魔物狩猟は森をひたすら歩いて移動するなんて地味な狩猟ではない。

 飛竜ワイバーンで上空を飛行して、

「居たぜ、ご主人様」

 アシュが発見。

「アシュ、いつものお願い」

「あいよ」

 アシュが曲乗りのごとく、飛竜ワイバーンを反転させて、逆さになった瞬間に地上に居る獲物のアースドラゴンにオレが、

「ふん」

 斬空剣を飛ばして、





 おっと、剣は聖剣じゃないぜ。

 アースドラゴンごときに勿体無くて使えるかってんだ。

 予備の方ね。

 こっちが普段用だから。

 まあ、それはともかく、





 ズシャアアアッ。

 とアースドラゴンを傷付けた。

 一撃で倒せなかったのかって?

 わざとだよ。

 怒らせるのが目的なんだから。

 そんな訳で、怒ったアースドラゴンが、





 アギャアアアアア。





 と咆哮し、こちらもわざと低空で飛ぶ訳だ。

 すると、傷付けられたアースドラゴンが飛竜ワイバーンを追い掛けてくる。

 何で、こんな意味不明な事をやってるのかって?

 あのなぁ~。

 アースドラゴンってのは骨まで使える素材だらけなんだぜ?

 討伐後に素材を剥いで解体するのはオレじゃないからさ。

 森の中じゃなくて解体作業員が移動しやすい街道沿いまで、解体作業の事まで考えて獲物を誘導してやってるって訳だよ。

 えっ?

 アイテムボックスを使えば楽勝なんじゃないのかって?

 いやいや、何言ってるんだ、おまえら?

 20メートル級のアースドラゴンだぞ?

 重量が何トンあると思ってるんだ?

 そんなのを持ち上げて、アイテムボックスに収納するとか・・・

 まあ、戦闘力17万超えのオレは実は出来る訳だが、

 やったらやったで化け物扱いだから。

 男の時ならともかく、オレの今の身体は令嬢おんななんだぞ。

 気味悪がられて最悪、魔女裁判に発展しかねないからな。

 世間一般の常識ではアイテムボックスに魔物を丸ごと入れるなんてのは不可能なんだよ。

 そんな訳で、討伐前に解体に適した場所まで誘導し、こちらの狙い通りに傷付けられて怒ったアースドラゴンが追尾してき、見晴らしの良い街道沿いに出た瞬間に、

「はい、終わり」

 斬空剣を放ち、

 アギャアアアアアア。

 アースドラゴンが断末魔を上げて絶命した。

 その光景を開けた街道どころか、エルモア城の城下町を囲った城壁の上から目撃した兵士達が、

「おお、凄いっ!」

「さすがは勇者様だ」

 そう賞賛してる訳だ。





 こんな感じで狩りも狩ったり、





 アースドラゴン10頭。

 オークジェネラル5頭。

 ジャイアントスネーク3頭。

 ジャイアントサンドウォーム5頭。

 その他諸々。





 こんなに大量に大物を狩猟してスタンピード発生の問題はないのか、だって?

 さあねえ。

 オレは魔物の生態には詳しくないから。





 ◇





 さて。

 オレがこのフメミス王国に未だに滞在してるのは、魔物が住み付いて困ってるフメミス王国を見過ごせないとか、そんな寝ぼけた理由からではない。

 当然、100パーセント、オレの為だ。

 更には、

 一度は国から手配されてる身だからな。

 大地の女神ミーカルを祀ってる国内最大の悪徳宗教を潰させた。

 フメバーゼ宮殿に乗り込んで騎士や兵士達をボコり、前国王を引退させた。

 悪徳宗教から賄賂を貰っていた大臣や貴族達を2000人、断頭台に送った。

 この状況で出国なんてしてみろ。

 前国王なんて、まだ生きてるんだぞ?

 オレの出国と同時にてのひらを返されて手配とかされたら敵わんからな。

 ちゃんと勇者らしい仕事をしないと。

 それにだ。

 ここだけの話、フメミス王国、今、ヤバくってさ。

 ほら、賄賂を貰ってた貴族と高官2000人、処刑しちまっただろ?

 そのお陰で付いた新国王のあだ名がギロチン王。

 悪徳教団も潰して、やってる事は善行なんだが、苛烈過ぎて民衆どもからの人気が全然でよ。

 まあ、あの外見だからな。

 人気は出ない訳だが。

 本人の資質の問題は今は置いておいて。

 オレの独断による経験則なんだが、

 クーデターの妙な下地が出来ちまってるんだよなぁ~、もう、この国。

 オレが出国と同時に市民革命とかになった時に、オレも新国王の一味とか思われたら嫌だからよう。

 民衆どもの人気取りの為に魔物退治をしてるって訳さ。





 なので、オレは頑張って庶民達の人気取りの為にエルモア城の付近まで魔物を誘導して狩猟していた訳だ。





 ◇





 現在拠点としてるエルモアでのオレの居住場所は処罰された貴族の邸宅だった。

 勇者ロザリア一行の宿舎というよりはもう完全に貰っていた。

 貰える物は貰わないとな。

 そしてオレはと言えば、

「もう嫌っ! 雑魚の魔物退治なんてっ!」

 ウンザリしていた。

「雑魚って・・・」

「全部、普通は軍が出動する大物よね?」

「ええ」

 アシュ、リラ、シューが小声で囁き合う中、チャーリーが、

「だったら、さっさと旅立つなのだ」

 そう意見したが、オレは、

「ダメよ、旅立つと同時に引退させた前王が復権したらどうするのよ? 私、また手配されるわよ? もっと人気を獲得しないと」

「なら、クランとか傭兵団とかを結成したら、ご主人様? 兵力を確保してたら、いざという時も大丈夫だろ?」

 この頭の悪そうな意見を言ったのがアシュで、リラが、

「ダメでしょ。クランが悪行を働いた時、ロザリア様の名に傷が付くんだから」

「そうね、冒険者ギルドを裏から操るとかならともかく」

 シューの意見も現実的じゃない。

 チャーリーが、

「地道に新たに作った教団の連中が育つのを待つなのだ」

 そうだな。

 魔物討伐の報酬も全部、その新教団にくれてやってる

「当分は魔物退治が続く訳か」

 と呟いたオレは辟易した。





 ◇





 有名税という言葉がある。

 有名人になったら得な事がある反面、損する事もあり、その損する事を言うらしい。

 オレの場合は元の世界でもその有名税を体験していた訳だが、こっちの世界でもそろそろ体験する破目になった。





 つまりは・・・





「勇者ロザリア、勝負しろ」





 である。

 オレの実力が分からない脳筋どもに限って、それを言ってくる。

 オレが滞在してるエルモア城の城下町の屋敷の外で騒ぐ訳だ。

 五月蠅いったらない。

 だが、オレには露払いがいて、

「シュー、片付けてきて」

「分かったわ、ロザリア様」

 シューは返事して部屋から出ていったのだった。

 戦闘力1800超えだからな。

 もう雑魚は相手にならないってね。

 全員を半殺しにして追い返していた。





 ◇





 だが、この有名税は、

 何も正面から大声で馬鹿正直に面会を求めてくる奴らだけではない。

 暗殺者やそれに近い事をやってくる奴も居た。

 つまりは実力など関係なく『勇者に勝った』という名声さえ貰えればそれでいい、と考えているこすい奴も世の中には居るって訳だ。





 その狡い考えの暗殺者モドキ連中と、

 オレのこの令嬢からだの強運が重なった結果、





 夜。

 寝室のベッドで今夜の相手のアシュ(複数プレイを嫌がるんだよな、3人とも)を可愛がりながら、屋敷の外の庭に入った侵入者の気配に気付いてたオレは、ソイツラが意識を失った事に気付き、不穏に思ってアシュが満足して眠らせた後に裸にシルバードラゴンのローブを纏って外へと出た。

 やはり14人全員、気絶してる。

「『ありがと』とお礼を言うべきかしら?」

 オレは庭の上空に浮かぶ戦闘力780のヴァンパイアハーフに視線を向けた。

 前にモンロー島のリゾートホテルの屋上で会ってるな。

 お星様にした3人組の1人か。

 戦闘力1000以下の癖にお星様になっても生きてた訳ね。

 やるじゃん。

「いいや、必要ない。これから私がおまえを殺すのだから」

「もう北西部の魔十教団は壊滅したって聞いたけど? 私の暗殺依頼をした依頼主も死んでるんじゃないの?」

 女教皇ハイ・プリーステスを操る眼玉も、愚者フールも潰したし。

「どうして私が魔十教団から依頼を受けたと?」

「西の果てに飛ばした猫人が運良く生きててね。まあ、またお星様にしてあげたけど」

「・・・そう。ならば死ねっ!」

 そう言って襲いかかってきたのだが、オレが冗談で、

「ええ? やるの? なら、せめて私が勝ったら朝までベッドで相手してよね」

「いいだろう」

 なんてヴァンパイアハーフが承諾するから、

 突進してきて尖った爪の手刀攻撃を余裕で躱しながら、オレもやる気を見せて(ノーパンなのに)上段回し蹴りを喰らわして一撃でヴァンパイアハーフをKOしたのだった。

 そして、気絶したヴァンパイアハーフを寝室のアシュが寝てるベッドへと連れていったのだった。

 ニヒヒヒ。

 いやいや、魔十教団の内部情報を知る為だから。

 ホントだからな。

 ヤるのが目的じゃないから。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 地名。





 ネレ海・・・大陸北西部の北側の海。

 エルモア城・・・フメミス王国の古城。『古代毒蜘蛛ギガノダー』に10回以上潰されてて城壁はいびつ。地下街が発展しており、避難場所としては最適。

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