烏珠の闇 追想花

晩霞

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本編 ─羽ばたき─

露けし※

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 微動だにしなかった男の顔は、その言葉によって驚きに変わった。

「格好……良い……?」
烏京うきょうさまの眠っている姿が……あんなに近くで……その、格好良くて、恥ずかしくて目も合わせられないで……」

 詰まりながらも一生懸命に伝えようとしている少女を止める者はここにはいない。固まっている男をよそに尚も気持ちを吐き出し続けている。

「拐われて怖くて、ずっとあなたのことばかり考えて……なのに……折角、会えたのに恥ずかしくて。私はあなたを傷つけて……」

 熱い想いと同時に涙が溢れ、声が震えて嗚咽を洩らそうとも少女は止まらない。

「私、私……本当に……あなたのことだけが……あなたが格好良……」

 そこから先は男の手によって阻まれた。口どころか目も覆われて何も見えないでいる少女は、それでも諦めずにいようともがいた。

「んん……う……きょ」
「何も言うな」

 切実に呟く男の表情を窺い知ることは出来ない。泣いたせいなのと、冷たい雰囲気が和らいだのもあるのだろう。少女の身体は、ぽかぽかと体温を取り戻している。
 言われた通りに黙った少女だったが、嗚咽は呑み込めない。謝ってもやはり許されないのかと、男の掌にじんわりと少女の涙の熱が伝わってくる。

「……!」

 慌てて手を離せば、しゃっくりを上げ、泣いてぐしゃぐしゃになった少女の顔が現れた。まるで母親に捨てられた幼子のように絶望と哀しみが重なった顔色。そんな色を宿しながら、それでも甘えていたいと訴えかけるその表情……。

「っ……」

 気がつけば、濡れた唇を合わせて温かい舌を絡ませ、夢中になって求めた。自分でもどうやって手を動かしているのか。そんな意識が無いまま男は女体をまさぐった。
 熱く上気した頬に舌を這わせて涙を舐め取り、霞んだ吐息を全て呑み込もうとするかのように深く、深く口づける。目を閉じるのも勿体なく、ずっと少女の顔を瞳に焼きつけながら美しい双丘に手を伸ばした。こり、こりと挟んで摘まみ、乳首を優しく愛撫して乳房全体を揉む男の手は少女の気持ち好いところを知り尽くしたもの。
 男の唇は首筋から鎖骨。そして乳房へと下り、赤い果実に至る。下からやわやわと持ち上げ、ちゅうっと吸い付いては出ない母乳を飲んでいるように美味しそうに味わう。汗が滲む乳房は甘くは無いだろうが、それすらも男にとっては良いのだろう。

 浴槽に凭れかかる少女には何も分からなかった。男を怒らせ、嫌われたのかと思いきや何故か優しく抱かれている。後ろから貫かれた時の貪る愛撫ではなく、慈しみを持って触れられていることに喜びと安心を感じ、甘くしっとりとした嬌声を洩らす。
 胸元には男の頭部。水気を孕んだ白髪が肌をくすぐり、それすらも官能を呼び起こす。自分の胸が男に吸われている……男の手が自分の胸を揉み、ふにふにと形を変えて愉しんでいる……。ピクピクと動く腰を我慢して乳房に埋もれる頭を抱き、更に乳首を男の口に含ませた。

 ふわふわした身体に包まれて落ち着きを取り戻した男は、自分は少女に拒まれていた訳ではないと心底、安堵した。狂った清御鳥しんみちょうに襲撃され、少女から『大嫌い』と突き放されたあの日から自分はかつえてしまったのだろう。少女の心に自分は在るのか。崖の上で独り。他者は寄せつけなかったはずなのに、邪魔なだけだと思っていたのに、それは呆気なく崩れ去った。

「あっ……、ぁ……ぅ……」

 自分の容姿は気にしない。他人からどう思われていようと死にはしないものだ。
 まだ十代の頃、狩人の年長者達に連れられて娼館を訪れた男は、そこで見た女達の顔を毒だと感じた。娼館の女達は嘘がこびりついた笑みを化粧の上に張りつけて客を誘っていた。きつい香水に下品にはだけた衣服。口の中には嘘しか吐かない二枚舌。そんな娼婦に美しいという感情は抱かず、上司の誘いに仕方なく行くだけ。うるさい嬌声と、客から金を巻き上げる為の思ってもいない褒め言葉。そんなもの煩わしい以外の感想は無く、嘘を散りばめた女の巣窟からは自然と足は遠退いていった。
 何らかの事情で仕方なく娼館で働く女もいることも分かってはいるし、自分がまだ幼かった為にそんなことを思ってしまったのだと理解はしていたが、女達に褒められた顔など、どうでも良かった。

「ん……烏京さま……」

 艶っぽく誘い、乳房を男の顔に押し付ける少女は売女と同じように見えて、その実は全く違う。ただひたすらに清らかなのだ。

「私、本当にっ……、格好良いと……」

 真心しかない言葉で切なそうに伝えるその口。頭に回された腕も、ひくついて濡れる秘部も正真正銘、烏京だけを求める偽りの無いもの。少女が嘘を吐いたことは無い。

「あぁぁぁっ、うぅ……」

 きつく吸い上げられた胸の果実から感覚は波打ち、少女の全身に広がっていく。胎内が疼き、汗が一気に噴いてわなわなと天井を仰ぎながら少女は果てた。男が狩りで留守にしているのとは違い、無理やり引き離された後の触れられる快感は何だか幸せだと思いながら、霞んだ瞳で男を見る。
 そんな少女の物欲しげな視線に男も我慢することなく応じ、共に寝室へと向かった。少女の足はゆらゆらと浮き、男にかかえられながら移動する。膣には怒張が突き刺さり、男が一歩を踏み出す度に少女は悶えた。

「どうした、小毬こまり

 わざとらしく愉しんでいる声音でズンズンと歩く男に対して、ムッとした表情の少女は抗議の意を込めて唇を突き出した。
 かつての少女からでは考えられなかった反応も、嫌な感じはしない。

「抱き直すぞ」

 少女をふわりと寝台に乗せた男は刺さったままの怒張を更に奥深くまで押し進めた。胎の奥まで少女の好いところを埋めつくし、執拗に擦っては膣のうねりを味わう。とぷ……とぷ……と愛液を漏らして男を迎える少女もまた、広い背中に手を回して抱きしめる形で貫かれている。
 離れ離れだった時間を埋める為に互いを求め合う男女は止まるところを知らず、寝台の軋みと結合部の水音は激しさを増した。

「んぁっ! あっあっあっ……!」

 律動に喘ぎは止まず、男の肌に唇を寄せる。

「烏京さまっ……!」 
「もっと、甘えろ」
「んっ……んぁぁぁっ!!」

 激しい官能の渦の果てに子種を吐き出された少女は、ぐったりと眠ってしまった。ゆさゆさと腰を揺らし、子種の残滓ざんしを全て膣内へと注いだ男は白い乳房に手を這わす。しっかりと鼓動が手に届き、少女が命を落とさずに生きて戻ってきたことに、しみじみと吐息を洩らした。

 少女はもう、金になる獣人ではなく自分と対等の……それ以上に尊い存在かもしれない。

 すやすや眠る少女に口づけをし、もう逃げられることのないよう楔を咥え込ませたままきつく抱き締め、男は眠りに就いた。



 ────────────



「……っ!? う、烏京さまっ……」
「……」
「烏京さまっ……あの……」
「…………」

 翌朝、少女がどれだけ身動きをしようと狸寝入りを決め込んだ男は、陽が昇りきるまでその身体を離さなかった。諦めずに訴え続け、やっと解放された少女の膣からは大量の子種が零れ、朝から身を清めることを余儀なくされた。
 しかし、その後の浴室で。



「あうぅぅ……また、あぁっ……!! そこ、だめぇぇぇ……」

 清々しい朝の空気の中に、艶やかな女の声が浴室から響き渡る。

「出してもまた溢れてくるな。しっかりを閉じておけ」
「あぁぅ……む、むりぃ……」

 秘部を左右に広げられ、零れてくるのをまじまじと観察された後は乳首を口に含まれる。

「赤く腫れて痛そうだな。も。もだな」
「も……もう、ゆるして……ゆる……してぇ……」

 秘部の小さな尖りをくにくにと撫でられ、乳首に熱い舌が這い回る。吸われては小指で弾かれ、撫で擽られるの繰り返し。果てそうになれば、じんわりと綻ぶ小さい膣に男の凶器が埋まり、に穿たれながら共に快楽を分かち合った。

 とことん追い詰められて可愛がられた少女の秘部からは、その日中ずっと子種が零れ続けていた。
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