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第六章
スカーフェイスを追って(5)
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《北川理髪店》
お店の前には、床屋さんでおなじみの赤と青のラインがクルクルと回っている。古い看板には、大きな字で《北川理髪店》と書かれていた。
「ヨォ! 少年! オマエ、なんて気合いの入った髪型してるんだ! まるで黄道区のジェームス・ディーンだな!」
ミチルのお父さんはまっ先にジョージに目をやると、二人は通じ合うみたいに目を輝かせた。
「おじさんもめちゃくちゃクレイジーだよ! まるでボブ・マーリーみたいだぜ!」
「オオゥ! 少年! オマエわかってるな!」
たぶん褒め合ってるんだろうけど、さっぱりわからない世界だ。お互いの肩を叩き合いながら豪快に笑ってる二人を見ていると、なんだかとても他人どうしには思えなくなってくるよ。
「ヨォ! ミチル! 今朝ママがおまえが弁当持って学校行ったって言うから、家出でもするんじゃないかと思って、オレァ心配してたんだヨォ!」
とてもゴキゲンなお父さんを、ミチルはわざと無視するようにして店の前をスタスタと通り過ぎた。僕たちはそんなミチルを黙ったまま目で追う。
「ハハハ! いいんだよ! いつものことだ!」
大きく笑いながら、ミチルのお父さんが僕たちに目配せした。
ってことは、ミチルの態度はいつもこうなんだってこと? だとしたら、やっぱりミチルは不思議系女子だ。だけどそれで喜んでいるなら、ミチルのお父さんはもっと不思議系だけどね……。
「ねえ! おじさん、ここら辺を黒猫が通らなかった? あたしたち、黒い猫を探してるの!」
「黒猫? ああ、朝来たぜ! 生物だから冷蔵庫に入れとけってたけど?」
ミチルのお父さんは、なぜか自信満々に答えて大笑いしている。
「違う! 違う! そっちじゃない黒猫よ!」
紅葉が即座につっこむと、ああ! と、僕たちも思い出したように、お互いの顔を見合わせた。
「オォ! 猫なら、カラス神社にわんさかいるんじゃないか?」
ミチルのお父さんは首をかしげる。
「そっか、カラス神社ね。おじさん、ありがとう!」
紅葉はお礼を言うと、先に行ってしまったミチルを追いかけていった。
「マァ、なに考えてるかわからない娘だけど、仲良くしてやってくれよな!」
ミチルのお父さんが笑いながら、後ろから明るい声で手を振った。
「おじさん! また来るぜ!」
名残り惜しそうなジョージを連れて、僕たちはおじさんに頭を下げると、紅葉たちを追う。少し変わった人だし、女子受けは間違いなくしないだろうけど、あんなお父さんなら毎日楽しいかもな。そんなことを考えながら、なぜかウキウキしているジョージの横顔を見ながら歩いた。
お店の前には、床屋さんでおなじみの赤と青のラインがクルクルと回っている。古い看板には、大きな字で《北川理髪店》と書かれていた。
「ヨォ! 少年! オマエ、なんて気合いの入った髪型してるんだ! まるで黄道区のジェームス・ディーンだな!」
ミチルのお父さんはまっ先にジョージに目をやると、二人は通じ合うみたいに目を輝かせた。
「おじさんもめちゃくちゃクレイジーだよ! まるでボブ・マーリーみたいだぜ!」
「オオゥ! 少年! オマエわかってるな!」
たぶん褒め合ってるんだろうけど、さっぱりわからない世界だ。お互いの肩を叩き合いながら豪快に笑ってる二人を見ていると、なんだかとても他人どうしには思えなくなってくるよ。
「ヨォ! ミチル! 今朝ママがおまえが弁当持って学校行ったって言うから、家出でもするんじゃないかと思って、オレァ心配してたんだヨォ!」
とてもゴキゲンなお父さんを、ミチルはわざと無視するようにして店の前をスタスタと通り過ぎた。僕たちはそんなミチルを黙ったまま目で追う。
「ハハハ! いいんだよ! いつものことだ!」
大きく笑いながら、ミチルのお父さんが僕たちに目配せした。
ってことは、ミチルの態度はいつもこうなんだってこと? だとしたら、やっぱりミチルは不思議系女子だ。だけどそれで喜んでいるなら、ミチルのお父さんはもっと不思議系だけどね……。
「ねえ! おじさん、ここら辺を黒猫が通らなかった? あたしたち、黒い猫を探してるの!」
「黒猫? ああ、朝来たぜ! 生物だから冷蔵庫に入れとけってたけど?」
ミチルのお父さんは、なぜか自信満々に答えて大笑いしている。
「違う! 違う! そっちじゃない黒猫よ!」
紅葉が即座につっこむと、ああ! と、僕たちも思い出したように、お互いの顔を見合わせた。
「オォ! 猫なら、カラス神社にわんさかいるんじゃないか?」
ミチルのお父さんは首をかしげる。
「そっか、カラス神社ね。おじさん、ありがとう!」
紅葉はお礼を言うと、先に行ってしまったミチルを追いかけていった。
「マァ、なに考えてるかわからない娘だけど、仲良くしてやってくれよな!」
ミチルのお父さんが笑いながら、後ろから明るい声で手を振った。
「おじさん! また来るぜ!」
名残り惜しそうなジョージを連れて、僕たちはおじさんに頭を下げると、紅葉たちを追う。少し変わった人だし、女子受けは間違いなくしないだろうけど、あんなお父さんなら毎日楽しいかもな。そんなことを考えながら、なぜかウキウキしているジョージの横顔を見ながら歩いた。
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