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第六章
スカーフェイスを追って(6)
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《乙女坂とカラス神社》
僕たちがミチルに追いつくと、すぐに歩行者専用の遊歩道が現れた。遊歩道に沿って歩いていくと、先には大きな乙女坂があり、イエローバスの走る環状線をまたいでカラス神社が見えてくる。
この遊歩道は乙女町の通学路になっていて、カラス神社をさらに進んだ先に僕たちが通うコスモ小学校に到着する。
乙女坂ってのは、この町に暮らす子供なら誰でも知っている坂道だ。とても長い坂道で、冬になり雪がつもると、遊歩道には家からソリを持ってきた子供がズラリと並ぶ。雪のつもった乙女坂は、そういうわけでソリ遊びの人気スポットになっている。
僕たちが向かっているカラス神社は、実際には《畝葉神社(うねばじんじゃ)》ってのが正式な名前。この神社の周りに植わっているケヤキの木に、沢山のカラスが羽を休めにくるから、町の人たちからはカラス神社って呼ばれてるんだ。
乙女坂の長い下り坂をおりる。腕時計を見ると、すでに三時三〇分を過ぎたところだった。
乙女坂をはさんで咲く桜の木を見上げながら歩いていると、ミチルが持っていた手さげカバンからカメラを取り出して桜の写真を撮っていた。
「なあミチル! そのカメラでクレイジーな俺を撮ってくれよ!」
ミチルは振り返るとニッコリと微笑んだ。
「いや。わたしは撮りたいものしか撮らないの」
海外の有名な写真家みたいなことを言って、ジョージの頼みをあっさりと断ったミチルに、なぜかジョージは嬉しそうだ。
「ねえ、ミチルってお父さんのこと、きらいなの?」
僕は悩んだあげく、思い切って聞いた。
「そんなことないよ、どうして?」
「だってお父さんのこと、目も合わせずにスタスタ無視して行っちゃったから」
マルコも紅葉も、僕の質問に黙って耳を傾けている。
きっと二人とも気になってたんだろう。
「ああ! アレ? 違うよ! お父さん、わたしに冷たくされると喜ぶのよ! 変わってるでしょ?」
「ええ?」僕がミチルの答えに耳を疑っていると、後ろにいたジョージが大きく肯いて言った。「わかるッ!」って。
冷たい態度を取られて嬉しいだなんて、まったくわからないけど、ミチルに拒絶されたときのあの嬉しそうなジョージを思うと、きっとわかる人にはわかる感情なんだろう。とにかく、ミチルは変わってるよ。
僕たちがミチルに追いつくと、すぐに歩行者専用の遊歩道が現れた。遊歩道に沿って歩いていくと、先には大きな乙女坂があり、イエローバスの走る環状線をまたいでカラス神社が見えてくる。
この遊歩道は乙女町の通学路になっていて、カラス神社をさらに進んだ先に僕たちが通うコスモ小学校に到着する。
乙女坂ってのは、この町に暮らす子供なら誰でも知っている坂道だ。とても長い坂道で、冬になり雪がつもると、遊歩道には家からソリを持ってきた子供がズラリと並ぶ。雪のつもった乙女坂は、そういうわけでソリ遊びの人気スポットになっている。
僕たちが向かっているカラス神社は、実際には《畝葉神社(うねばじんじゃ)》ってのが正式な名前。この神社の周りに植わっているケヤキの木に、沢山のカラスが羽を休めにくるから、町の人たちからはカラス神社って呼ばれてるんだ。
乙女坂の長い下り坂をおりる。腕時計を見ると、すでに三時三〇分を過ぎたところだった。
乙女坂をはさんで咲く桜の木を見上げながら歩いていると、ミチルが持っていた手さげカバンからカメラを取り出して桜の写真を撮っていた。
「なあミチル! そのカメラでクレイジーな俺を撮ってくれよ!」
ミチルは振り返るとニッコリと微笑んだ。
「いや。わたしは撮りたいものしか撮らないの」
海外の有名な写真家みたいなことを言って、ジョージの頼みをあっさりと断ったミチルに、なぜかジョージは嬉しそうだ。
「ねえ、ミチルってお父さんのこと、きらいなの?」
僕は悩んだあげく、思い切って聞いた。
「そんなことないよ、どうして?」
「だってお父さんのこと、目も合わせずにスタスタ無視して行っちゃったから」
マルコも紅葉も、僕の質問に黙って耳を傾けている。
きっと二人とも気になってたんだろう。
「ああ! アレ? 違うよ! お父さん、わたしに冷たくされると喜ぶのよ! 変わってるでしょ?」
「ええ?」僕がミチルの答えに耳を疑っていると、後ろにいたジョージが大きく肯いて言った。「わかるッ!」って。
冷たい態度を取られて嬉しいだなんて、まったくわからないけど、ミチルに拒絶されたときのあの嬉しそうなジョージを思うと、きっとわかる人にはわかる感情なんだろう。とにかく、ミチルは変わってるよ。
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