時間泥棒

虹乃ノラン

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第八章

作戦開始! サイレンを挟み撃て!(2)

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 動きがあったのはそれからさらに三〇分後だった。町のどこかで、わずかに救急車のサイレンが聞こえる。だけど、僕のいる学校からは、東の方からわずかにサイレンが聞こえるだけで、場所なんてとても特定できなかった。
 そんなとき、バスに乗っているマルコと、一人でサイレンを追いかけているジョージから通信が入った。
『こちらクレイジー1号! 今、蟹平町にいるんだけど、東の方からサイレンが聞こえるぞ!』
 慌てるジョージの声に、バスに乗っているマルコが続く。
『こちらマルコだよ! 僕はもうすぐ双子山町に着くけど、後ろの方からサイレンが聞こえる!』
 ジョージの東ってことは、双子山町か牛見町だ。その先の羊ヶ丘町になると、ジョージからは北東よりの方角になるはず。
 そして、マルコはイエローバスの右回りに乗っていて、もうすぐ双子山町。後ろからサイレンが聞こえるってことは、たぶん牛見町方面だ! 僕が待機しているコスモ小からも音は東から聞こえてくるから、まず間違いない。
「マルコ! 双子山町のバス停でバスをおりて、サイレンの方に向かってくれる⁉ ジョージも急いで、牛見町のサイレンの方へ!」
 僕はマルコとジョージに指示を出した。
『こちら紅葉よ! あたしは山羊沼町だけど、どうすればいい?』
 すぐさま紅葉からも通信が入る。
「紅葉は学校を経由して蟹平町に向かって!」
 僕の指示に、紅葉が不思議そうに答えた。
『なんで、牛見町に向かわずに、蟹平町なの?』
「まだ、スカーフェイスがどの道を使って移動してるのか、特定できてないからね。昨日みたいにみんなで固まって追いかけて逃げられたら、僕たちは、またスカーフェイスの後ろを追いかけるだけで、一日をつぶしてしまうかもしれない。だから、僕の仮説が正しいのを信じて、紅葉は蟹平町からスカーフェイスをはさみ打ちにするんだ!」
 僕の説明に納得がいった紅葉は、『まかせて!』と力強く答えると、通信を終えた。
『千斗君、わたしはまだ人馬町よ?』
 取り残されたようなか細い声で、不安そうにミチルがつぶやく。
「ミチルは左回りのバスに乗ってるから、そのままバスに乗って獅子丘町まで来てくれる? 僕たちは、紅葉たちが失敗した時の最後の砦だよ!」
 僕の説明に安心したのか、ミチルが答えた。
『わかったわ! 獅子丘町に着くのは二〇分後くらいよ』
 ミチルが通信を終えたと同時に、僕は獅子丘町へと自転車をこぎ出していった。
『ハァハァ……こちらマルコだよ! 今、バスをおりて、サイレンの鳴っていた方に走ってるけど、今はサイレンが消えちゃって、場所がわからないよ!』
 マルコが今にも泣き出しそうな声で話す。
「大丈夫だよマルコ! 患者を乗せて病院に出発するとき、またサイレンがなるはずだから、救急車がいそうなだいたいの道がわかればいいよ!」
『うん! ごめんね!』
 マルコがメソメソと泣きながら、必死にサイレンの場所に向かって走っているのが僕たち全員に伝わってきた。
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