クズ男はもう御免

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番外編

番外編 あやしい薬の作り方3

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「——と、いうわけでその薬がこれです」
 
 レイズンはハクラシスのベッドの上で正座をし、持っていた包みから薬を一包取り出すと、同じようにベッドに座るハクラシスの前に置いた。
 
 この日レイズンは小屋に戻ると、休憩することなくささっと夕食を作り、食事をして寝る支度まですませると、急かすようにハクラシスをベッドに誘った。

 もちろんその理由はこの薬だ。ハクラシスはきっと驚くに違いないと、そう思いながらレイズンは、荷物に入っていた草のことや薬屋に持って行ったこと、そしてこの五日間ずっと薬屋で手伝いをしていたことを話し、出来上がった薬を差し出しながらチラッチラッとハクラシスの顔色を窺った。
 
「——お前は、以前媚薬で自分が大変な目にあったのを忘れたのか」
 
 ハクラシスは眉間に皺を寄せ、右目でジロリとレイズンを睨んだ。 
 
(ひえっ! お、怒ってる?)
   
「あ、いや、でもですね、ちゃんと街の薬師に見てもらって、人に害しないって確認したんで……」
 
「だからと言って、誰が荷物に入れたのかも分からない、正体不明の薬草で薬を作ろうとするだなんて、お前は。まったく……」
 
「……言ったら作るなって言うでしょう?」
 
「当たり前だ!!」
 
 ハクラシスの怒鳴り声に、レイズンはひえっと声を上げた。
 これはどうしようかと、レイズンがもじもじしていると、呆れはてたハクラシスの口から、しようのない奴だとでも言いたげな溜息がはーっと漏れた。
 
「……実はお前が薬屋に行っていることを知っていた」
 
「え」
 
 ドキッとしたレイズンは、パッと顔を上げた。
 
「昨日、買い物で街に出た際、肉屋のおかみさんからお前が最近薬屋で働いていることを聞いた。確かにここのところ帰ってくると、お前から嗅ぎ慣れない妙な匂いを感じていた。……どこか誰かの移香かと思っていたが、まさか薬屋で手伝いをしていたとはな」
 
「——知ってたんだ……」
 
「ただ何でお前が薬屋にいるのかは分からなかった。また何か妙なことを思いついたのでなければいいがとは思っていたが……」
 
 まさか媚薬とはなと、呆れたようにまた溜息を吐いたのを見て、レイズンは「ごめんなさい……」と下を向いた。 
 
「本当にお前は目が離せないな。……それで? これは効くのか」
 
「え」
 
 レイズンはピョンと頭を上げた。
 
「き、効きますよ! ……って、薬師が言ってました」
 
「こいつは、どうやって飲むんだ。そのまま飲めばいいのか」
 
「え、え!? 飲んでくれるんですか!?」
 
「せっかくお前が苦労して作ってくれた薬だ。薬師がきっちり調剤してくれているなら、まあ、大丈夫だろう。……ただこれがアーヴァルからだと思うと抵抗があるが」
 
 この草と調合法が本当にアーヴァルからの贈り物かどうかは分からないが、ハクラシスもアーヴァルからだと踏んでいるようだ。
 
「へへ、やった! それならこれの出番です!!」
 
 レイズンは、小躍りしながらベッドの脇に置いていた細長い包みを引き寄せると、ドンとベッドの上に置いてみせた。
 そして目の前で包みを解いてみせると、さすがのハクラシスもおっと片眉を上げ興味を示した。
 
「酒か!」
 
「へへ、薬屋で稼いだ金で買ったんです! これ前に騎士団にいた時一度飲んだんですけど、すごい美味いんですよ。ちょっと高いんですけど、酒屋で見つけて買っちゃいました! ハクラシスもきっと気にいると思って」
 
 先程までの怒りはどこへやら。どれどれとハクラシスが酒瓶を手に取って眺め出したのを見て、
(さすが酒好き。思った通りの反応だ)
 と、レイズンはしめしめと舌を出した。
 
「この薬、お酒と一緒に飲んでもいいそうですよ。ほら、これで飲んじゃいましょう!」
 
 気が変わらないうちにとレイズンはいそいそとカップを二つ持ってくると、ドバドバと惜しげもなく豪快に酒を注ぎ、薬の包みと一緒にハクラシスへ手渡した。
 
 するとハクラシスは手のひらに置いて包み紙を開き、用心深く匂いを嗅いだ。
 
「……この薬はひどく甘い匂いがするな。しかしこいつはかなり昔に、どこかで嗅いだような……」
 
「この薬の主成分の草が、甘い匂いなんですよ。さあハクラシス、酒と一緒にグビッといっちゃってください!」
 
 薬から漂う甘く独特な匂いに首を傾げつつも、レイズンに急かされて酒でその薬を流し込んだ。
 
「……うむ、ちと薬の芳香がきついが、この酒は辛くていいな。うまい」
 
「でしょう!? 薬の匂いがなければもっとうまいですよ、きっと。さ、もっと飲んで下さい!」
 
 レイズンが空になったカップにさっと酒を注ぎ入れると、よほど美味かったのかハクラシスはあっという間に飲み干した。
 
「ああ、これは芳醇でうまいな!」
 
「へへ、でしょう! さて、俺も飲むぞ~!」
 
 二人は口々に「美味いうまい」と言いながら、酒瓶を取り合うようにして飲み続けた。
 
 そうして開けたばかりの酒瓶が空になる頃、いい感じに酔いが回った二人は、気がつけば狭いベッドの上で裸になり、体を重ね合わせ、酒ではなく互いの唇を貪りあっていた。
 
「ん……は……あ、ハ……クラシス……ん……」
 
「んん、レイズン……、今日はえらく興奮する。あの薬のせいか」
 
 唇を離してハクラシスの顔を見ると、頬をのぼせたように上気させ、熱の孕んだ目でこちらを見ている。
 
 こんな高ぶりを見せるハクラシスは初めてだ。
 
(もしかして、もしかする!?)
 
「あー、薬が効いてきた感じですね。……こっちはどうですか」
 
 はやる気持ちを抑えつつ、レイズンはハクラシスの股間に手をやると、ハクラシスはビクンと腰を浮かせ、耐えるようにレイズンの肩に頭を擦り付けた。
 
 いつもよりもよい反応に期待が膨らむ。だが残念なことに、そこはまだ柔らかく萎えたままで、試しに手で少し持ち上げると、レイズンの手の中でへにょりと垂れ下がった。
 
 さすが長年ハクラシスを悩ませていただけあり、一筋縄ではいかないようだ。
 
「——あー……いつもより敏感になっているのか、触れられると刺激が走る。それにしても体がひどく熱いな。これは大丈夫なのか」
 
 確かにまだ前戯すら始まってもないのに、まるで激しい運動でもしたかのように、ハクラシスの体は薄ら汗ばみ、息もやや荒い。
 
「媚薬の影響ですかね。体が熱くて汗が出るのも薬の作用だと思います。薬師がそんなことを言ってました。過敏になり過ぎて厳しそうなら俺、触らないように離れてますが……」
 
 そこまで敏感になっているならと、レイズンは少し離れた方がいいかと体を起こした。だが、すぐにハクラシスによって引き寄せられた。
 
「いや、そこまでじゃない。ただ体が熱く、刺激に弱くなっているだけだ。それに今お預けをくらうのはきつい」
 
「ハクラシス……、ん……っ」
 
 ハクラシスは興奮気味にレイズンへ荒々しく口付けた。
 レイズンは何度も角度を変えては吸い付いてくる唇に応えるのに必死で、顔中に触れる髭のくすぐったさなど感じる暇さえ与えない。
 ハクラシスからのキスで、こんなにも息をつく暇もないほど、激しくむしゃぶりつくようなものは初めてだ。
 
「——んふ……は……あっ…………」
 
 ハクラシスのゴツゴツとした硬い手が、レイズンの体を忙しなく弄り動く。
 
 最初は頬を撫でていた手の片方が、首を伝い胸を這うと、盛り上がった胸筋の感触を確かめるように撫であげては揉みしだき、手のひらが先端を捉えると、突起を引っ掛けるように指で潰してやんわりと摘み上げた。そしてもう片方は背中から腰を這い、尻へと到達すると、尻から太ももをさすりながら膝を折り曲げて開かせると、そこに腰を割り込ませた。
 
 ハクラシスはどうにも堪えきれない様子で、まだ萎えたままの自身のペニスを、すっかりと勃ち上がったレイズンのペニスに押し当てて腰を揺らし始めた。
 
「ん…………あっ!」
 
(あー、ちょっとヤバいぞ。このままだと俺がイッて終わりな気がする!)
 
 ハクラシスがこれでイッた気になって、終わろうとしていたらまずい。
 薬の効き目はまだこれからかもしれないのにと、レイズンは焦った。
 
「あっ! ちょ、……く……ふ……んんっ————ちょ、ちょっと待って! ハクラシス!!」
 
 追いかけてくる唇から必死で顔を逸らし、両手でハクラシスの汗ばんだ胸を押し上げて制止すると、ハクラシスはレイズンのいきなりの拒否行動に眉を寄せた。
 
「——どうした、嫌なのか。……俺が勃たなくて期待外れだったのか? ……すまない、張型あれを取ってこよう」
 
 どことなく肩を落とし、張型を取りに行くため立ち上がろうとしたハクラシスを、レイズンは慌てて止めた。
 
「いや! 違う!! 違うんですよ! そうじゃないんですって!」
 
「……じゃあ、どういうつもりなんだ」
 
「嫌だとか期待はずれとか、そういうのではないんです! もう、本当に違うんですよ~! ね? ね?」
 
 憮然とした表情のハクラシスに、レイズンは下から覗き込むようにして必死で宥めた。
 
「じゃあどうした。俺の体調が気になりでもしたか?」
 
「あー、それも気になりますが、そうじゃなくってですね! もうちょっとゆっくりやりましょうって言いたかったんです。ハクラシスはもうこれでイッて終わろうとしてたでしょう? いや、体がキツいの分かるんで、とっととイッて終わらせたいんだと思いますが、この薬の効果はきっとまだこれからだと思うんですよ! だから、もうちょっと時間稼ぎたいなって」
 
 それを聞いたハクラシスは、それでどうするんだと言わんばかりに片眉を上げた。
 
「だからですね、今日もまた俺の口でやらせてください。前も口でイケるようになったワケだし、今回ももしかするとって思って」
 
「……口でやってくれるのか」
 
「はい! なるべくイカかせないように頑張ります!」
 
 へへへと笑うと、ハクラシスは目尻に皺を刻ませ、レイズンの頬にチュッと音を立てて口付けた。
 そして「頼む」とその場で膝立ちになると、下に垂れ下がったペニスを手で持ち上げて、レイズンの口元に自ら持っていった。
 
 大きく長いペニスが、ハクラシスの手に支えられながらもレイズンの目の前でプランと垂れ下がっている。
 レイズンはいつものように口を開けて、舌を伸ばして口に引き入れた。
 
「——っ」
 
 はーーとハクラシスの口から熱い吐息が漏れた。
 
 ハクラシスの柔らかいペニスを、口の中でモニモニと感触を確かめながらレイズンは舌を絡めていく。
 口に入り切らない根本の部分をレイズンは一度唾液で濡らし、片手で優しく扱く。そしてもう片方の手で重そうにぶら下がった陰嚢を揉みあげると、ハクラシスは手でレイズンの髪をくしゃくしゃにさせながら撫でて掴み、ゆっくりと腰を動かし始めた。
 
「——ん、ん……ちゅ……は、ふ……——」
 
 口の中にあるハクラシスのペニスは、勃たなくてもそれなりに弾力がある。
 いつだったかこのままでもできるんじゃないかと思って尻に入れようとしたことがあったが、結局うまいこと入らず、断念したことがあった。その時もハクラシスはレイズンに、落胆させてすまないとしきりに謝っていた。
 
 あれはたぶんハクラシスも、もしかしてできるかもと期待したのだと思う。
 
(あの時は俺が言い出したのに、ハクラシスってばすごい謝ってて……。あれ思い出すと今でも申し訳ないし、やっぱり勃たせてあげたいって思うよなあ)
 
 レイズンは口を動かしながらチラッと上を見ると、ひどく苦しそうに眉を寄せレイズンを見つめるハクラシスの顔があった。
 目が合うと、ハクラシスは目を細め、レイズンの頭を愛おしそうに撫でてくれる。
 
 それだけでレイズンは腹の奥がジンと痺れ、口でハクラシスのペニスを吸い上げながら、そっと自身のペニスに手をやった。
 
(あーだめだ。も、ハクラシスのそういう顔、すっごいくる……)
 
 レイズンはハクラシスのペニスにしゃぶりつきながら、自身のペニスも同時に扱き始めた。
 
「は……あ、ん、…………く、ふ…………」
 
(あーまずい。俺が時間かけようって言ったのに)
 
 しかしもうどうにも止まらず、レイズンは柔らかいペニスを頬張ったまま、自分の硬く勃ち上がったペニスを扱くと、ハクラシスも荒い息を吐きながらレイズンの頭の動きに合わせて腰を動かしていく。
 
 興奮がピークなのか、レイズンは頭を撫でるハクラシスの手に、次第に力がこもっていくのを感じていた。
 
(あ……なんだかすっごい気持ちいい……。やばいな、俺もイキそう……)
 
 ハクラシスが媚薬でやられているから、それにレイズンもあてられているのだろうか。
 いつも以上にレイズンも興奮していた。あまりにも気持ちが良すぎて頭の中はもう空っぽの状態。レイズンは夢中でハクラシスのペニスに吸い付いていた。
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