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29 *リンデン視点【番外】

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 結婚式を終え、夜行われるパーティーでの衣装に着替える為に、リンデンは衣裳室に来ていた。

「カーティス、何故お前ついてきてるんだ?」
「陛下にお話がありまして」
「話?俺は無いが」

 カーティスも夜会の準備で忙しいだろうに、リンデンと個人的な話があるのか、少しの時間でも都合を付けてリンデンの後を追ってきた様だった。

「俺が陛下にご報告があるんです」
「何だよ」

 衣装を着替えるリンデンの後でただ立ち尽くすカーティスに鏡越しで目を合わせている。

「陛下もご結婚されましたし、俺も結婚しようかと」
「…………へぇ~、お前………結婚出来る相手居たのか………相手が気の毒でならん」
「そんな事はありません。大喜びされました」
「本性知らないだけじゃないのか?………俺も知ってる令嬢か?」
「はい、勿論ですとも。王妃様の侍女ですから」
「…………え?」

 レイシェスの侍女だとするなら限られてくるが、果たして誰なのか、とリンデンはカーティスに振り向いた。

「だ、誰だよ………」
「クラリスです」
「…………何だと!」
「クラリスは男爵令嬢ですし、俺はルビリア帝国の宰相になりましたから、クラリスの両親はもう大喜びでして」
「い、いつの間に!」
「一年程前からですが?」

 リンデンは全く気付いていなかった。レイシェスからも聞いていないのと、カーティスは常にリンデンの傍に居るのに、何故そんな話になるのか、と。

「如何なってそうなった!」
「避妊薬の試薬を試させて欲しい、と頼んだのがきっかけですが」
「……………は?」
「試薬を俺が飲んで、本当に避妊させられるか如何かの相手にクラリスを、と………試薬を飲んで貰っていた男女は俺達だけではありませんけどね………何十組の夫婦に試して貰い、妊娠したい時期に合わせて飲用を止めて貰ったら、妊娠出来た様なので、一年クラリスと楽しませてもらいました」
「……………何だと!」

 リンデンはあまりのカーティスへの腹立たしさに、カーティスの胸ぐらを掴む。

「俺がどれだけ我慢してきたと思ってる!」
「陛下に飲ませる前にしっかりその薬が使える物かを検証する時間が欲しかっただけなのです。まだ不安材料がある内に、陛下に飲ませられる訳ないじゃないですか………そのおかげで結婚式5日前から盛り上がってましたでしょう?」
「ふざけんな!検証出来たのなら、俺に早く渡せよ!」
「そんな陛下の心証悪い事を俺がするとでも?陛下に渡したら、仕事サボってシまくりそうでしたし…………陛下がこの一年頑張って頂いたからこそ、民達の信頼も貴族達の信頼も得られたんじゃないですか。怒られるより褒めて戴きたいぐらいですよ…………では、陛下………準備がありますので、失礼致します」

 あまりの衝撃的なカーティスの報告で、リンデンは夜会の間、終始機嫌が悪く居たのだった。
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