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婚約発表………ですよね?

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「な、何故、殿下が異種族の王女を選ばれるのです!」
「モルディア皇国にも美しい令嬢は、殿下の妃になりたいと日々努力を重ね美しい者ばかり…………殿下が何も、ツェツェリア族の妃を迎えねばならないのです!」

 反対意見等出る事は分かっていた。ルカスはその騒ぎを咳払い一つで沈めた。

「異論は最も………私も少し前には、彼女を妻にしよう等思わなかった………何故なら彼女に出会ってなかったからだ。ジェルバ国へ先日始めて行き、マシュリーに魅了した………姿形は勿論美しいが、何より心に惹かれた……私が移住の提案をし、異種族同士の架け橋になり、最終地点がジェルバ国への贖罪が完了するのが望みだと、彼女に言った時、その協力をしたい、と………ジェルバ国で今迄起きていた、迫害や誘拐、奴隷に落ちていく民達を思い、どれだけ泣いてきたか知った………私利私欲で動く事の無い彼女だからこそ、皇妃に相応しいと思ったのだ!それに、私は心底、マシュリーに惚れている…………」
「!!………ル、ルカス様!!」

 腰に回す手に力を加え、更に抱き寄せるルカスは、マシュリーの額にキスを落とす。この時ばかりは避けるに避けられず、真っ赤になり恥ずかしそうにするマシュリーを見た者達は心を射抜かれてしまった。

「し、仕方…………ありません……な……殿下がお選びになった方だ………」
「…………そ、そ、そうですな………」
「ず、随分とご執心ですな……」
「あの!皇太子殿下!」
「何だ?法務大臣」

 アンナレーナの父親で法務大臣の侯爵が異論がある様な悔しそうな顔で、ルカスの前に人を掻き分けて跪く。

「む、娘は………アンナレーナは、この方の存在で婚約を破棄された、という事ですか!?」
「婚約?……そんな話あったのか?」
「いや、知らん………」

 アンナレーナとの婚約は内内の事だ。知らない者が殆ど。

「言ったであろう?元々アンナとは利害関係での婚約だと………愛情も無い相手と結婚するより、愛情がある相手と私は結婚を望む様になった、と…………それに……アンナは………分かるだろ?………
「!!………あ、で、という事には納得はしましたが、直ぐに他の方との婚約、というのは俄に信じ難く………」
「…………出会ったのだ………本当にこの手で幸せにしたい女性に」
「………………失礼致しました……心より祝福させて頂きましょう……」

 し~ん、と静寂のホール。ツェツェリア知事夫妻には分からなかった事ではあったが、ルカスの誠意は伝わってはいたのもあり、一先ずは安堵を見せた。納得した者やまだ出来ていない者も居たが、この発表は決定的となる。

「では、皆の者…………乾杯といこう…………皇太子ルカス、マシュリー王女の婚約を祝し、乾杯!!」

 すると、音楽も流れ、踊り始める者も出始める。

「マシュリー……義父上達に謝罪してくるから、一緒に来てくれ」
「……………は、はい」

 呆然とし、ルカスの顔を見るなり、怒りが混じるツェツェリア知事と、マシュリーを心配そうに見つめる母の知事夫人。ルカスはツェツェリア知事夫妻の前に来ると、頭を下げた。

「義父上、義母上………この騒ぎは私の不注意………前婚約者と私の間は愛情を向けるのはマシュリーだけです」
「信じろ、と言われるか?」
「嘘吐く理由等ありません………マシュリーを幸せにしていない、と思ったら義父上の目の前で、己の喉元に剣を刺しましょう」

 動揺の目は無いルカス。真っ直ぐツェツェリア知事を見つめていた。

「…………命掛けるか………マシュリーは良いのだな?私はもうこれ以上、聞かぬぞ?泣き付いて来ても、其方を裏切る様な事をされても、私はルカス殿が喉元に剣を刺すのを止めぬからな?」
「…………わたくしの前で嘘を吐くなら、嘘を貫き通して下さいね?ルカス様………隠し事は嫌なので、今の内ですよ?」
「マシュリーには嘘は直ぐにバレそうだから、その時は平謝りさせてもらうよ」
「…………ふっ……いつまでも幸せにな、2人手を取り合い仲睦まじくするように」
「「……………はい」」

 マシュリーはルカスと共に、ツェツェリア知事に頭を下げた。

「ルカス!……マシュリー妃と1曲踊りを披露しなさい」
「……………マシュリー、踊れる?」
「は、はい………」

 背後から、皇帝に声を掛けられ、ダンスを所望されるルカス。そのルカスは、マシュリーの手を取り、踊りを誘った。

「では、1曲踊って頂けますか?」
「はい………喜んで」

 マシュリーはそのままエスコートをしていくルカスに付いて、ホール中央へと足を運ぶ。

「ツェツェリア知事夫妻、パートナー交換で我々も踊りましょう」

 皇帝も皇妃もマシュリーの両親を誘った事で、ホール内の臣下達に、ツェツェリア知事夫妻を紹介し、その夫妻の娘がルカスの婚約者だという事を知らせる為だった。

「では、皇妃………1曲宜しくお願い致します」
「はい、わたくしも喜んで」

 ホール中央に3組のカップルが来ると、踊っていた者達は引いた。音楽が奏で始めると、彼等の踊りを見届けるのだった。

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