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女神からの言葉

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 ジェルバで暴動が起きた後、ルカスは部屋に戻って仕事を始めた。その様子をマークは何か言いたげにルカスを見ている。

「何だ?」
「いやぁ、神秘的に降り立ったな、と………結婚式の神の使徒の真似しましたね?」
「…………真似したのは間違いではないが、腹立ったんでな………恐らく、ジェルバを出てアガルタに居た者達は、『ジェルバを変えたかった』んだと思うんだ……拉致されて奴隷になった者は別だがな………だが、そのを砕かれて悔しいんじゃないかと……それを、待ってくれた者への苛立ちに見えた。『何故自分達でやらなかったのか』とね」
「…………まぁ、そう意見が出るのは当然でしょうね…………ジェルバ国の女神、マシュリー様を『敵国に奪われた』とも思ったでしょうし」
「だから言ったろ?と……と、分からせてやりたかったが、先に暴動が起きたな………昨夜の内に、頼んでおけば良かった、と俺に腹立った」
「……………そんなに、背負い込む事はないんじゃないです?」

 ルカスは、手に持っていたペンを置いて、腕を組んで、マークにほくそ笑む。

「背負い込む?まさか………俺は、ただ1つのだけで、動いてるのにか?」
「…………欲?」
「俺のはマシュリーの存在だけだ………マシュリーを守る為にだけ動いてるだけだ」
「……………変わりましたねぇ、本当に」
「…………自分でも驚いてる………ジェルバ国の移住が終われば、俺はもうという、道しかない、ただつまらん皇帝になってたさ………コルセアともアガルタとも戦う事なんてしなかったさ、兵士もジェルバに常駐させても、俺は出向くつもりもなかったと思うんだ」
「うわぁ………薄情……」
「所詮、その程度の上辺だけの仕事で終わってたろうな………だが、それじゃあモルディアは同じ事を繰り返していくんじゃないか、と今では思ってる…………まさか、こんなに苦労やら苛々やら、もどかしさやら思わなかっただろうに…………」
「俺…………今のルカス様のが好きですよ」
「!!……………き、気持ち悪っ!」
「……………折角、本心から言ったのに……」
「…………クククッ………ありがとうな……さて、とマシュリーに会いに行こっかな」

 指の関節をぽきぽきと鳴らし、立ち上がるルカスはソファに移動する。

「エリスに何か伝言は?」
「………『愛してるよ』て言っといて下さい」
「自分で言え、俺の声で、マシュリー以外の女に言いたくねぇ言葉だ」
「聞いたのアンタだろ!!」
「クククッ………」

 ソファに座ると、ルカスは直ぐに気配を消す。実体のルカスは、精神が無くなって横に倒れた。

「顔に落書きしてやろうか、コイツ……」

 君主が居ないのをいい事に、ペンを握り締めてフルフルと、怒りを露わにしたマークだった。

        ♡♤♡♤♡

 マシュリーは朝から少し気怠さが伴い、公務にあたっていた。
 皇妃と孤児院を視察し、帰って来てから緊張感からの気怠さかと思っていたが、ある事に気が付く。月の穢れが、ルカスがジェルバに行った後から来ていない。

「…………カレン……」
「はい………お医者様お呼びしましょうか?」
「お願いします」

 カレンが百合の間を出て、医者の手配をしている間、他の侍女達に夜着を用意してもらおうと、マシュリーは頼もうとしたが、それが出来なくなる。

「マシュリー」
「………!……ルカス様……」
「ん?あれ、元気無いな………体調悪いか?」
「い、今お医者様呼びましたわ」
「…………そうか……頼みたい事が、また出来なさそうだな………」
「………昨日の?」

 ソファに横たわる身体を起こし、青褪めているマシュリーはルカスの前に立とうとする。

「座ってろ………大丈夫だから……何とかする」
「………駄目です!ご協力させて下さいませ!」
「…………マシュリー……だが、その体調で……」
「座ったままなら大丈夫ですわ」

 コンコン。

「失礼致します…………あら、ルカス様……神力で?」
「医者を連れて来たか?カレン」
「はい…………後にされますか?」
「ルカス様、先にお医者様に診て貰っても構いませんか?多分、わたくしの予想なら………嬉しい事をルカス様にお伝え出来るので」
「…………嬉しい事?」

 ルカスは精神の姿なので、席を外せとカレンや医者から言われてしまい、部屋を移動する事は出来ず、そして再び来るのに時間が掛かる為、文句を言われながら、マシュリーの周りに衝立を用意し、診察を行った。

「妃殿下、ドレスを腰まで捲りますよ」
「何だと!!マシュリーの身体に触れ……」
「ルカス様!!お医者様ですよ!!我慢なさいませ!!」
「……………し、失礼致します……申し訳ありません……皇太子殿下……」

 ルカスが怖くて震える声で、手も震える医者。

「ほら!ルカス様が怯えさせるから!いいですね!黙ってて下さい!!」
「……………ぐっ………」
「ルカス様は心狭いので、申し訳ありませんわ」
「い、いえ…………少し医療器具入れますね冷たくて申し訳ありません………」
「はっ?………何する………」
「ルカス様!!黙らっしゃい!!」

 怒りと心配と、何も出来ないもどかしさで、ルカスの表情は複雑で、侍女達も笑いを堪えるのが必死だった。

「…………月の穢れがまだ今月無いのですね?」
「!!」

 小声で医者と会話するマシュリーは、恥ずかしくて、ルカスにも聞こえないように言っていた事が、医者の声がルカスに聞こえる。

「は、はい………まさか、と思いまして……数日前から怠さはあったので……」
「まさか………マシュリー……」
「ルカス様!黙らっしゃい!」
「…………うむ、ご懐妊ですな……おめでとうございます、妃殿下」
「!!マシュリー!!」
「…………良かった……間違いではないのですね?」
「ですが、今は流産しやすいので、無茶はくれぐれもしませんように」
「…………そうですよ、
「何が言いたい?……………カレンも医者も」
「「…………」」
「……………ぐっ!………やっぱり……」
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