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本当の家族。

家。

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ーーーーー



ーーー


深夜遅く・・・。


「んー・・?」


いつの間にか眠ってしまっていた私は目を開けて辺りを見回した。

辺りは暗く、夜なことがわかる。


(あれ・・私いつ寝たんだろ・・。)


ごそごそと身体を動かすと、自分の身体を柔らかいものが覆ってることに気がついた。

これは・・・布団だ。


(うわぁー・・ふかふかー・・・。)


今まで体験したことのない寝心地に、もっと肌で感じたくて寝返りを打つ。

すると真横に恭介さんの顔が見えた。


(ふぁ!?)


隣で寝息を立ててる恭介さんは同じ布団で寝ている。

私の身体の上に左腕を乗せ、右腕は私の頭の下だ。


(一緒に・・寝ててくれたんだ・・・。)


誰かと寝るなんて初めてのことだ。

寝相の悪いKが時々布団に乱入してくることはあったけど、それとは全然違う。

恭介さんが寝ぼけて時々トントンとお腹を叩いてくる。

その優しさがすごく心地よくて、また夢の世界に呼ばれてしまう。

目を閉じて、呼ばれた夢に飛び込もうとしたとき恭介さんが口を開いた。


「亜子・・どこにいる・・生きてるよな・・?」


恭介さんは目を閉じたまま喋っていた。

これが『寝言』だということはすぐにわかった。

寝言の内容から『亜子』をものすごく探していたことも・・・。


(私、ほんとにこの家の子供なのかな・・。)


ほんとの子供として施設から連れ出してもらったけど、不安は消えない。

なにせなにも証明するものがからだ。

服を買ってもらった時に着替えた部屋で、私は自分の姿をハッキリと見た。

真っ赤な眼に、ひょろっとした身体。

茶色い髪の毛はくすんだ色をしていた。

恭介さんはきれいな金に近い髪の毛にきれいな顔立ちだ。

眼は同じだとしても、どう見ても『似てない』。


(もし違ったら・・どうやって生きて行ったらいいのかな。)


不安に思うハズなのに、不思議とそうは感じなかった。

布団から手を出して、恭介さんの手を握る。


「・・・おやすみなさい。」


そう言って私はまた目を閉じた。



ーーーーー



翌朝、私が目を覚ましたあと着替えを済ませ、早々に車に乗って出発することになった。

朝食はホテルの人が用意してくれ、今、車の中で頬張ってる。

卵がたっぷり入ったサンドイッチだ。


「亜子、おいしい?」


同じものを食べながらお父さんが聞いてきた。


「はいっ。」

「そりゃよかった。道も空いてそうだし、5時間くらいで着くからね。」


恭介さんが運転する車は山をいくつも超え、海を過ぎ、大きい公園もいくつも過ぎた。

私はその景色に興奮して窓をずっと見ていたけど、2時間が経ったころに眠気に襲われて眠ってしまった。

お父さんに身体を揺さぶられて目が覚める。


「・・子?・・・亜子、着いたよ?」

「ふぁ・・・?」


目を擦りながら重たい瞼を開けると、車はもう止まっていた。

開いたドアからお父さんが覗き込んでる。


「よく眠っていたね、下りれる?」

「あ・・はい・・。」


私はあくびをしながら車から下りた。

太陽はまだ高く、温かい陽を照らしてる。


「ここが亜子の家だよ?・・・おかえり。」


そう言われて見た家は・・・とても大きな家だった。

二階建ての家は外の壁にレンガが所々散りばめられてる。

三角の屋根がとてもかわいくて、家にピッタリくっつく形で塔が立っていた。

お庭は木がたくさん生えている。


「ふぁぁぁ・・・・。」

「家に入ったらお母さんにご挨拶しようね。」


私はお父さんに連れられて玄関に向かった。

数段の階段を上り、門をくぐる。

そのあともまた少し歩いて、大きな茶色の玄関扉の前に立った。

お父さんはポケットから鍵を取り出してガチャっと開けた。


「ただいまー。」


そう言って家に入っていったお父さんの後ろをついて入る。


「お・・お邪魔します・・。」


中は広い玄関だった。

靴が何足も入りそうな靴箱に、天井が高い廊下。

なんとも表現ができない温かさのある空間に、私はどこか懐かしさを感じた。


「こっちだよ。」


そう言われて靴を脱ぎ家の中を進んで行く。

廊下を真っ直ぐ進んで行くと、大きなリビングにたどり着いた。

そこの一角に、写真が飾られてる棚が見える。

写真の回りに花が活けられた小さな花瓶があった。

その花瓶にはきれいな花が一輪・・・活けられていた。


「ほら亜子、お母さんだよ?」


お父さんは写真を手に取り、私に見せてくれた。


「え・・・私にそっくり・・・?」


初めて見たお母さんは、私に瓜二つだった。

椅子に座って薄っすら笑みをこぼしてる姿だ。

私と全く同じ、赤い両眼。

目も鼻も口も・・・まるで鏡を見てるかのように見えた。

髪の毛の色が少し違うくらいで。


「お母さん・・・。」

「そうだよ。ソファーに座ってて?飲み物入れながらリズのことを少し話そうか。」


お父さんは写真を戻した。

ダイニングとリビングの境目にある大きなキッチンに足を運んでいく。

私は言われた通りソファーに腰かけた。

L字にあるソファーの一番端だ。


「結婚する前の彼女の名前は『エリザベス・ミラー』。国籍はアメリカだよ。」

「・・・え!?」

「亜子たちはアメリカと日本のハーフなんだよ。」

「へ!?」


口を開けて驚く私にお父さんは紅茶を淹れてくれた。

赤いマグカップにたっぷり入ってる。


「はいどうぞ。」

「あ・・りがとうございます・・。」


ほかほかと湯気が立つマグカップを受け取ると、お父さんは私と少し離れたところに座った。


「『リズ』っていうのはエリザベスの愛称でね、結婚した時に『リズ』に改名したんだよ。日本で暮らすのに名前を変えようってことになって。」

「そうなんですか・・・!」

「リズはよく日本に来てたから日本語も流暢だったんだよ?」


お父さんは目を閉じて話始めた。

でもその時ちょうど恭介さんが入ってきて、その話は中断された。


「父さん、先に亜子の部屋教えてあげないと。」


お父さんは目をパチッと開け、恭介さんを見た。


「あ、そうだね。じゃあ恭介案内してあげて?その間に明日からの予定をまとめとくから。」

「ん。・・・おいで亜子。」


呼ばれた私はソファーから立ち上がり、恭介さんのもとへ行った。

恭介さんは私の前を歩いて玄関の方に向かう。


「みんなの部屋は2階な?亜子は階段を上がってすぐの部屋だから。」

「はい。」


木で出来た幅の広い階段を、手すりを握りながら上がって行く。

20段ほどある階段を上がった先に、私の部屋の扉があった。

その部屋を恭介さんが開ける。


「色々揃えといたけど、足りないものがあると思うから今度買いに行こうな。」


そう言いながら部屋に入った恭介さんの後ろをついて入った。

入ったけど・・・あまりの広さに驚きが勝ってしまった。


「うわぁ・・・すごい・・・。」







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