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対面

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 レーナが私の振りをして平然と婚約者に会いに行っているという現実に私はしばしの間呆然としてしまった。

 が、やがて考える。
 恐らくテッドはレーナを私だと信じているだけで、他意はないのだろう。それなら出来るだけ早く真実を話して彼に誤りを気づかせなければ。
 そしてレーナにも二度とこのようなことをしないようきつく言っておかなければ。

 そう思った私は勇気を振り絞って物陰から出る。

 そしてシアラー家へ向かって足を踏み出した。

「すみません……」
「え、ええ!?」

 私が声をかけると、門の近くで庭の掃除をしていた使用人は驚愕した。
 何せ彼からすれば先ほど私を中へ案内したばかりなのだ。彼は嘘だろう、とばかりに私と屋敷の方を交互に見る。

「実は先ほど中へ入ったのは私の双子の妹、レーナなの」
「そ、そう言えばシェリー様にはそっくりな双子がいると聞いたことはありますが……」

 そう言って彼は私の顔をじろじろと見つめる。

 本来であれば失礼な行為なのだが、彼も私とレーナがあまりに似すぎていて信じられないのだろう。何せ声もほとんど同じなのだ。
 素で話せば若干違うのだろうが、今のレーナは私に寄せている以上、テッドですら気づけないだろう。

 もっとも、やがて着ている服が違うことに気づき、ようやく私が先ほど通した人物と別人であることに納得した。

「ということは本当に先ほどの方が妹様で貴方様がシェリー様なのでしょうか?」
「そうなの。恐らく妹は私に成りすましてテッドに会っている。だから私も入れて欲しい」
「は、はい」

 そう言って執事は目を白黒させながらも私を中へと案内してくれた。
 私も自分の心臓の鼓動が速まるのを感じながら中へと歩いていく。

 そしていよいよ彼は中でテッドとレーナが話している部屋の前で足を止めた。

 私はごくりと唾を飲み込む。
 使用人も緊張で少し声を震わせながら室内へ叫んだ。

「テッド様、シェリー様がいらしております」
「はあ? おいおい、シェリーなら今ここにいる。先ほどお前が案内してくれたばかりだろう?」

 使用人の言葉を聞いてテッドは呆れたように言った。
 確かにそれだけを聞けば彼が急に馬鹿になったようにしか思えない。

 使用人の男はしばらく口をぱくぱくさせていたが、やがて自分の口ではうまく説明できないと悟ったのか、ガチャリとドアを開ける。

「おい、一体どういうこと……え?」

 どういうことだ、と言おうとしたテッドは私の姿を見て固まる。

 そして私と部屋の中にいるレーナの姿を見比べた。

 一方のレーナはレーナでまさか私がやってくるとは思ってもみなかったのだろう、まるで彫像のように固まってしまっている。

「本当に……どういうことだ?」

 そんな私たちを見てテッドは絞り出すようにそう言うことしか出来なかった。
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