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13. そのキノコ

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「そう…なるほどね…。」

 あの後、部屋にいたアグネス様に見てきた事を話すと、腰に手を当ててしばらく考えていた。


 でもすぐに昼食となり食堂で食べているといつの間にかロイス様が私の隣に座って言った。

「それが終わったら、来て欲しい。」

 三週間弱会わなかったけれど、やはり格好いいわ、そう思いながら少し早めに食事を終わらせた。


 今日は三階の階段を上った右側の一番奥の部屋に案内された。
アグネス様もいて、少し緊張された面持ちだった。

「困った事になったわ。」

 アグネス様は開口一番に、渋い顔でそう言ってため息をついた。

「使用人達が食べる食事に、盛られたの。」

「え!?」

「それでも、めまいや寒気や震えなどの神経系の毒だったらしいけれどね。食べた時に舌にピリッとくるみたいで、気になって食べなかった人もいるみたいだけれど、普通に完食した人もいて。その人達は幻覚や幻聴、異常な興奮を覚えている人もいて…。鎮静作用のあるお茶を飲んでとりあえず今は落ち着いているらしいわ。」

「…!」

「でも、どうしてそうなったのかはまだ調査中。関連が有るのかは分からないけれど、ステイシーが先ほど見たキノコ、どんなものか一緒に見に行って欲しいのだけれどいいかしら?」

「はい。」

 なんだか、背中がひんやりとした。



「この辺りに生えていました。ノラも、探すのに苦労していた様子でした。」

「そう…じゃああまり生えていないのかもしれないわね。」

「あ、これかな?」
ロイス様が、足元の木の根元にあった膨らんだようなところを指差した。

「あ!似てます。それかも。」

「これ?…ちょっと念のために取ってみましょう。」

 アグネス様は、念のためにと言って手袋を二重にしてスコップでコンコンとキノコの軸を叩きながら持ってきたバケツに入れた。

「ちょっと詳しい人に見てもらうわ。一緒に来てちょうだい。」

 そうアグネス様に言われ、ロイス様と一緒について行った。



 そこは、王宮の中にある薬草省の部屋だった。
私は、侍女見習いの頃に部屋や廊下の通り方は覚えたけれど、その部屋が何をやっているかまでは覚える必要が無かった為今まで知らなかった。

 薬草省は、薬草を元に薬を作る機関だ。

「薬草に詳しいでしょう?キノコはどう?」

「専門外でして…ん?これは…!」

 薬草省の統括大臣はそのキノコをしばらく見て口を開いた。

「もしかしたら、〝陶酔のキノコ〟かもしれませんな。」

「「陶酔のキノコ?」」

 なんでしょうそれは?

「陶酔のキノコとは、文字通り陶酔させたい相手に食べさせるもの。そうすると、食べたものは料理を作ってくれた人を陶酔し、気に入ったり愛するようになるのだと。一説には〝媚薬のキノコ〟とも言われます。なんでも、キノコを触った事によってその人のがキノコに伝わり増幅し、食べた時にその想いが愛おしい人だと思わせる勘違いさせるのだとか。まぁ、じきに効き目が切れるから、悪巧みしなければ問題ないキノコですな。」

「そんなものが…。」

 だからノラは私に触らないでと言ったのね。

「で、神経系の毒性は?」

「んー、その陶酔させた事が神経に及んだと言えばあるいは…いや、ないですな。まずないはずですよ。」

「そうですか…。」

「!」

 えと…じゃあノラは誰かを陶酔させたくてあのキノコを取った?
たまたま、食事に毒が盛られたのは重なっただけ?関係ないの?

「これだと思ったのだけれど。」

「犯人は別にいるって事だな。」

「そのようですな。」

 じゃあ一体、誰が、何の為に?
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