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12. 聞いてしまった本音
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「好き?なわけないだろう。いや、でもとても大切さ。僕の命の次位にね。だって、マグヌッセンの家の資産は莫大だからね。結婚すれば、ベントナー家にどの位の持参金が手に出来ると思う?父上にも言われている。彼女は金の成る木なのだから、大切にしなさいとね。」
そう聞こえてきたのは、教材室に、先生から指示された教材を取りに来た時だった。
教材室の隣は、今は使われていない空き教室。そこから、ヘンリクの声にソックリな人の声でそう聞こえてきた。内容からするに、ヘンリクで間違いないだろうとクラーラは思った。
(そう思われていたなんて…!私ったらなんて滑稽なの!)
ヘンリクの不器用ではあるが、クラーラへの接し方に初めこそ心揺れ動いたと思っていた。
クラーラへの優しい言葉。でも、思い返せば内容はとても薄っぺらいものだったのかもしれないと今さらながら思った。
(持参金目当てだったなんて…。)
クラーラは足元からガラガラと地面が崩れ落ちていくように思えて、フラリと足がよろけた。そして、近くの机に手をつくと、体勢を立て直し慌てて指示された教材を持つと音を立てないように教室を出た。
自身の教室へと戻ったクラーラに、シャーロテは声を掛けてきた。
「ちょっと、クラーラ大丈夫?顔が真っ青よ!?どうしたの?」
クラーラは、自分の顔色が悪いとは思っていなかったがそう言われたので、はっとして顔に力を入れた。
「いえ…なんでもないわ。」
「クラーラ、隠さないで!もし良かったら授業抜け出してもいいのよ?」
そう言われたクラーラは、そう言われて少しだけ気が楽になった。
(そうよ。別に好きだったわけじゃないもの。ただ、裏切られたようなそんな気持ちだわ。婚約者として、未来の夫婦としてやっていこうと思っていたのに。)
「ありがとう、シャーロテ。では今日放課後に聞いてもらっていいかしら?もちろん、予定があれば別の日で良いのだけれど。」
「無いわ!いえ、あったとしてもクラーラのが優先事項よ!じゃぁあと少しね。授業が終わったら聞くから、それまでは頑張るのよ!」
そう言って、シャーロテはクラーラの両手をぎゅっと握った。
「で?」
シャーロテはクラスの皆が帰ると、公爵家以上が使える休憩室に連れて行ってくれ、オルリック家の侍女が紅茶を用意してくれた後、言葉を発した。
クラーラは、シャーロテへ先ほど教材室で聞いてしまった言葉を聞かせた。
「まぁ!…やっぱりね。あの男、会った当日からイヤな奴だと思っていたのよ!社交の時にも見かけたけれど、ずっとクラーラを連れ回していたでしょう?」
シャーロテは、その場面を思い出しながら言った。
「え?シャーロテ、覚えていてくれたの?」
「まぁ、私も立場上出席しないといけないもの。それで、あなたはあの男の隣にずっといたでしょう?クラーラが離れたがっていたのにも関わらず。」
「え?気づいてた?」
「まぁ、多分常識ある人は気づいているでしょうね。でもあの男の友人達は思想が同じような人達ばかりでしょうからね。気づいてなかったかもしれないわ。」
(あぁ…だから、ニヤニヤとした顔つきの人もいたのね。)
クラーラは、誰もヘンリクに否定する者が居なかったのに納得した。
「災難だったけれど、良かったと思うわ。だってまだ結婚前でしょう?そんな考えの人が夫とならなくて済んだのよ。今ならまだやり直しが効くわ。」
(そうかしら。でも、すんなり婚約解消といけるのかしら。)
「そうねぇ…まずは、お父様に話してごらんなさいな。どうしても無理だったら私に言って?どうにかして差し上げられると思うわ。」
「ありがとう、シャーロテ。ヘンリク様の気持ちを聞いてしまった時はなんだか悲しい気持ちになったのだけど、心が軽くなったわ!」
「そう?良かった。また何かあったらいつでも言って?」
クラーラは、シャーロテという友人がいて本当に良かったと思った。気持ちが幾分か晴れたからだ。そして、これからどうするべきか考えながら、しばらくシャーロテと話していた。
そう聞こえてきたのは、教材室に、先生から指示された教材を取りに来た時だった。
教材室の隣は、今は使われていない空き教室。そこから、ヘンリクの声にソックリな人の声でそう聞こえてきた。内容からするに、ヘンリクで間違いないだろうとクラーラは思った。
(そう思われていたなんて…!私ったらなんて滑稽なの!)
ヘンリクの不器用ではあるが、クラーラへの接し方に初めこそ心揺れ動いたと思っていた。
クラーラへの優しい言葉。でも、思い返せば内容はとても薄っぺらいものだったのかもしれないと今さらながら思った。
(持参金目当てだったなんて…。)
クラーラは足元からガラガラと地面が崩れ落ちていくように思えて、フラリと足がよろけた。そして、近くの机に手をつくと、体勢を立て直し慌てて指示された教材を持つと音を立てないように教室を出た。
自身の教室へと戻ったクラーラに、シャーロテは声を掛けてきた。
「ちょっと、クラーラ大丈夫?顔が真っ青よ!?どうしたの?」
クラーラは、自分の顔色が悪いとは思っていなかったがそう言われたので、はっとして顔に力を入れた。
「いえ…なんでもないわ。」
「クラーラ、隠さないで!もし良かったら授業抜け出してもいいのよ?」
そう言われたクラーラは、そう言われて少しだけ気が楽になった。
(そうよ。別に好きだったわけじゃないもの。ただ、裏切られたようなそんな気持ちだわ。婚約者として、未来の夫婦としてやっていこうと思っていたのに。)
「ありがとう、シャーロテ。では今日放課後に聞いてもらっていいかしら?もちろん、予定があれば別の日で良いのだけれど。」
「無いわ!いえ、あったとしてもクラーラのが優先事項よ!じゃぁあと少しね。授業が終わったら聞くから、それまでは頑張るのよ!」
そう言って、シャーロテはクラーラの両手をぎゅっと握った。
「で?」
シャーロテはクラスの皆が帰ると、公爵家以上が使える休憩室に連れて行ってくれ、オルリック家の侍女が紅茶を用意してくれた後、言葉を発した。
クラーラは、シャーロテへ先ほど教材室で聞いてしまった言葉を聞かせた。
「まぁ!…やっぱりね。あの男、会った当日からイヤな奴だと思っていたのよ!社交の時にも見かけたけれど、ずっとクラーラを連れ回していたでしょう?」
シャーロテは、その場面を思い出しながら言った。
「え?シャーロテ、覚えていてくれたの?」
「まぁ、私も立場上出席しないといけないもの。それで、あなたはあの男の隣にずっといたでしょう?クラーラが離れたがっていたのにも関わらず。」
「え?気づいてた?」
「まぁ、多分常識ある人は気づいているでしょうね。でもあの男の友人達は思想が同じような人達ばかりでしょうからね。気づいてなかったかもしれないわ。」
(あぁ…だから、ニヤニヤとした顔つきの人もいたのね。)
クラーラは、誰もヘンリクに否定する者が居なかったのに納得した。
「災難だったけれど、良かったと思うわ。だってまだ結婚前でしょう?そんな考えの人が夫とならなくて済んだのよ。今ならまだやり直しが効くわ。」
(そうかしら。でも、すんなり婚約解消といけるのかしら。)
「そうねぇ…まずは、お父様に話してごらんなさいな。どうしても無理だったら私に言って?どうにかして差し上げられると思うわ。」
「ありがとう、シャーロテ。ヘンリク様の気持ちを聞いてしまった時はなんだか悲しい気持ちになったのだけど、心が軽くなったわ!」
「そう?良かった。また何かあったらいつでも言って?」
クラーラは、シャーロテという友人がいて本当に良かったと思った。気持ちが幾分か晴れたからだ。そして、これからどうするべきか考えながら、しばらくシャーロテと話していた。
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