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21.結婚式
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教会を訪れた多くの人々。本日の主役を祝福するかのように、爽やかな青がどこまでも広がる空。
純白のドレスを纏い、淡い色合いのウェディングブーケを持った花嫁の隣には、幸せそうに頬を緩める白タキシード姿の男性。
このお店の主であるマドレーヌ様と、彼女とこれからの人生を生きていくこととなるロビン様です。……どちらもレアンドル様のご友人。
「……この通り。マドレーヌ様の結婚相手は私ではありません」
レアンドル様がふう、と溜め息をつきます。私が大きな勘違いをしていたことをまだ引っ張るおつもりのようです。眉間に皺が寄っていますね。
「おめでたい日にそのような顔をなさってはいけませんよ、レアンドル様」
「元々そのような顔をしているのでお気になさらずに」
意地っ張りな方です。どうしたものかと思っていると、ロビン様がこちらにやって来ました。
そして私をじっと見てから、レアンドル様に向かって目映い笑顔を見せました。
「このお嬢さんがマドレーヌ様が言ってたご令嬢か! レンが女性を連れてきたとマドレーヌから聞いた時は、夢でも見たんじゃ……って思ったが」
「あのですね……あなたたちは私を何だと思っているのですか」
「だってお前が貴族の女性連れて店に行くなんて初めてだろ。しかもお前から誘ったって話だったし」
「いや……特に深い理由はないので」
ロビン様は騎士団に所属している方で、幼少期の頃からレアンドル様と共にマドレーヌ様のお店を訪れていたそうです。
今日の結婚式でレアンドル様は、友人代表で祝辞を述べられました。
本人は素っ気ない言い方をしたおつもりのようですが、目が赤くなって声も震えていたのが丸分かりでした。この式に出席している誰よりも、感極まっていたようです。
「早くマドレーヌ様の元へ戻ってあげなさい。こんな日に新婦を放って友人と談笑を楽しんでいると、店の常連客たちに睨まれますよ」
「分かってる。それじゃあレンの子守りお願いします、ラピス様」
「そ、そんな頭を上げてください、ロビン様」
「いやぁ、こいつ案外子供っぽいところがあるんで。何かあったら俺かマドレーヌに言ってください。では失礼します」
ロビン様は明朗な笑みを浮かべると、馴染みのお客様とお話ししているマドレーヌ様の元へ戻っていきました。
「………………」
「………………」
特に何か起こったわけでもないのに、気まずい雰囲気です。何か話題を出さなければ……。
「そ、そういえば、レアンドル様はマドレーヌ様だけでなくロビン様からも『レン』と呼ばれていらっしゃるのですね」
「……はい。親しい人間にはそう呼ばれています。確かロビンが最初だったと思いますが」
なるほど、そこからマドレーヌ様にも広まったのですか。
呼び名の謎が解けてすっきりしていると、レアンドル様が小さく咳払いをしてから私から顔を背けて、
「ご自分が私と親しい人間だと思っているのであれば、どうそ勝手にお呼びください」
と突き放すような口調で仰いました。
「……レアンドル様、それは」
「……………」
「あっ」
逃げるようにどこかへと歩き出すレアンドル様を追いかけます。
「レアンドル様、お待ちください」
「……………」
「今のお話なのですが、レアンドル様は私に……」
「……………」
「……レン様?」
私がその呼び名を口にすると、レアンドル様はようやく足を止めました。
そして、こちらへ振り向いた彼の顔を見て、私は生まれて初めての体験をしました。
男性に対して『可愛い』と思ってしまったのです。
純白のドレスを纏い、淡い色合いのウェディングブーケを持った花嫁の隣には、幸せそうに頬を緩める白タキシード姿の男性。
このお店の主であるマドレーヌ様と、彼女とこれからの人生を生きていくこととなるロビン様です。……どちらもレアンドル様のご友人。
「……この通り。マドレーヌ様の結婚相手は私ではありません」
レアンドル様がふう、と溜め息をつきます。私が大きな勘違いをしていたことをまだ引っ張るおつもりのようです。眉間に皺が寄っていますね。
「おめでたい日にそのような顔をなさってはいけませんよ、レアンドル様」
「元々そのような顔をしているのでお気になさらずに」
意地っ張りな方です。どうしたものかと思っていると、ロビン様がこちらにやって来ました。
そして私をじっと見てから、レアンドル様に向かって目映い笑顔を見せました。
「このお嬢さんがマドレーヌ様が言ってたご令嬢か! レンが女性を連れてきたとマドレーヌから聞いた時は、夢でも見たんじゃ……って思ったが」
「あのですね……あなたたちは私を何だと思っているのですか」
「だってお前が貴族の女性連れて店に行くなんて初めてだろ。しかもお前から誘ったって話だったし」
「いや……特に深い理由はないので」
ロビン様は騎士団に所属している方で、幼少期の頃からレアンドル様と共にマドレーヌ様のお店を訪れていたそうです。
今日の結婚式でレアンドル様は、友人代表で祝辞を述べられました。
本人は素っ気ない言い方をしたおつもりのようですが、目が赤くなって声も震えていたのが丸分かりでした。この式に出席している誰よりも、感極まっていたようです。
「早くマドレーヌ様の元へ戻ってあげなさい。こんな日に新婦を放って友人と談笑を楽しんでいると、店の常連客たちに睨まれますよ」
「分かってる。それじゃあレンの子守りお願いします、ラピス様」
「そ、そんな頭を上げてください、ロビン様」
「いやぁ、こいつ案外子供っぽいところがあるんで。何かあったら俺かマドレーヌに言ってください。では失礼します」
ロビン様は明朗な笑みを浮かべると、馴染みのお客様とお話ししているマドレーヌ様の元へ戻っていきました。
「………………」
「………………」
特に何か起こったわけでもないのに、気まずい雰囲気です。何か話題を出さなければ……。
「そ、そういえば、レアンドル様はマドレーヌ様だけでなくロビン様からも『レン』と呼ばれていらっしゃるのですね」
「……はい。親しい人間にはそう呼ばれています。確かロビンが最初だったと思いますが」
なるほど、そこからマドレーヌ様にも広まったのですか。
呼び名の謎が解けてすっきりしていると、レアンドル様が小さく咳払いをしてから私から顔を背けて、
「ご自分が私と親しい人間だと思っているのであれば、どうそ勝手にお呼びください」
と突き放すような口調で仰いました。
「……レアンドル様、それは」
「……………」
「あっ」
逃げるようにどこかへと歩き出すレアンドル様を追いかけます。
「レアンドル様、お待ちください」
「……………」
「今のお話なのですが、レアンドル様は私に……」
「……………」
「……レン様?」
私がその呼び名を口にすると、レアンドル様はようやく足を止めました。
そして、こちらへ振り向いた彼の顔を見て、私は生まれて初めての体験をしました。
男性に対して『可愛い』と思ってしまったのです。
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