雌汁  ― お股つたうは嬉し涙か はたまた尿か ―

余次元

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閑話2

梅子庵・1

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「おぅ、梅子やらせろよっ」

 レジカウンターの前で学ラン姿の少年が言う。その当然のことだと言わんばかりの様子に梅子はげんなりした。

(失敗したかな‥)

 以前に梅子が悪戯した少年だった。その時には、涙目になって射精を懇願しながら、腰を前後に振りつつ梅子に纏わりついてきた、その様子がまるで犬の様で、とても可愛らしいものだった。それだと言うのに、いま目の前にいるのは、梅子に更なる欲望を当然のようにぶつけようとしている。
 最初に、その少年に悪戯した自分が悪いのだとはわかっているが、こんなにも増長するものか。梅子は溜息をついて、少年をみる。緊張しているのか、額に少し汗しているようだった。
 こういうのも、可愛いと言えなくもないのだろうが‥

(‥可愛げがないのよね‥‥)

「保健体育の時間よ‥お姉さんが色々と教えてあげようじゃない‥」
「先ずはコンドームの付け方からかなぁー」

 少年の顔が期待に満ちたものへと変わる。しかし、梅子は彼に期待通りのものを渡すつもりなどさらさらなかった。

(再教育だな‥)

 梅子は仄暗い笑みを浮かべると、少年を建物の奥へと誘った。


 圭司の出会いから8年、梅子は28歳になっていた。圭司との事故が悪かったのだと、本人は思っているが、8年の歳月は人を変えるのには十分な長さだった。着ている服も以前と比べれば、少し肌の露出が多い。ひざ丈から10cmのところまで切り詰めたスカートからは、むっちりと肉のついた太腿が露わになっており、女の匂いが立ち上っている。圭司が感じた”清楚”のイメージからは随分様変わりしていた。


 梅子は大学の建築学科を卒業すると、地元のゼネコンに入社した。
 卒業設計は温泉街の再生計画をテーマにしたもので、ランドマークとなっている古い木造建築物の改修と総湯を新築し、ソフトで繋いでいくことで、街の回遊性をデザインするというものだった。言ってしまえば、学生にありがちなものだったが、現地調査の中で連れ込み宿を経営していた桃子と個人的に仲良くなり、彼女が80歳になったタイミングで経営を引き継ぐことになった。
 ゼミの後輩を教授伝いに巻き込み一年かけてリフォーム。傾いた柱はそのままに床だけは水平にした。建物前面の土間はアダルトグッズ売り場にして、施設利用者以外も入れるようになっている。
 宿の名前は桃子庵だったものを梅子庵に改名した。それが1年前のことだ。



 寂れた温泉街、加丸温泉郷の平日昼間に人はいない。暇にあかせて近所の少年に悪戯をしたのが、運の尽きというか、変なのが捕まることもある。梅子の悪戯が二次成長期の少年の衝動を歪めたのだと霜次郎なら言うだろうが。

「少年、女性をこれから抱こうというのに、そんなに鼻息が荒くては引かれてしまうものよ‥」

 これから行われる新しい性体験に、少年の呼吸は自制がきかないでいた。
 あらかじめ布団の敷かれた部屋に入ると、梅子は少年にお茶を出した。 


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