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シュナイダー殿下視点

あの鈍かったキャロラインがっっ!!(終)

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「申し訳無いけど、キャロライン。君は僕の婚約者に相応しくないようだ」

  ──うわぁぁぁ、本当はこんな事言いたくないのに!!
  キャロラインが僕の婚約者に相応しくない?  そんな筈ないだろう!?
  誰よりも相応しいよっ!  と言うより、相応しい云々じゃなくて、僕の妃はキャロラインしか考えられないから!!

  そんな僕の心の葛藤を他所に、僕の発言のせいで会場は一気に静まり返った。

  僕はこの学園のパーティーであのピンクを断罪すると決めていた。
  その開始がこの発言だ。

  僕の発言を聞いてキャロラインが、足を震わせながら僕の前に進み出て頭を下げる。

  ──うわぁぁぁ、ごめんよ、ごめんよキャロライン!!
  違うんだっ!!  これは僕の本音じゃないんだ!! 


「……理由をお聞かせ願いますか?」
「理由?  そんな事、わざわざ告げなくてもキャロライン、君自身が1番その理由を理解していると思うのだけど?  そうだよね?  ヒーロバル男爵令嬢」

  本当は名前など一切呼びたくも無い、あのピンクを仕方なく呼ぶ。

「い、いえ。えっとぉ、私は……」
「はっきり言ってくれて、構わないよ」
「シュナイダー様ぁ……」

  だから僕の名前を呼ぶなって言ってるだろ!?
  そう言いたい気持ちを押し殺して僕は先を促す。その話は後だ。

  ……しかし、このピンク、震えている様子を見せてるけど、本当なのか?
  何か嘘っぽいんだよなぁ……

「キャ、キャロライン様は、いつも私を目の敵にしていましたぁ!!  私はいつも陰ながら虐められていたんですぅ!!!!」

  その言葉に会場は騒然となるが、とりあえずこのピンクは、僕の想定通りの嘘の発言をしてくれた。

  この発言を皮切りに、このピンクは、キャロラインの悪事と言わんばかりの話をこれでもかと並べ立てたが、全て返り討ちに合っていた。
  ……当然だ。キャロラインは何もしていないんだからな。

  それにしても、どこをどうしたらこんな勘違い女が爆誕するんだ?
  それにとうとう口調まで変わってるじゃないか!! 
  やはりこっちが素だったんだな。


  勘違い女の爆誕。
  これは、永遠に解けない謎のような気がした。


  想定通りに、あのピンクを追い詰めていく所で、キャロラインが身を引くと言い出した。
  ……覚悟はしていた。その不安は常にいつだって抱えていたから。
  キャロラインはあの日、僕を慕っていると夢うつつで言ってくれたけど、どうしたって許せない事はある。僕はもうすでに嫌われていたとしても、決しておかしくないんだ。


「……全部終わった後、君が僕をいらないと、変わらず離れたいと思うのなら……僕はそれをちゃんと受け止めるから…………本当に申し訳ないけど、今は……あともう少しだけ僕に付き合って欲しい……」

  僕は必死でお願いした。
  お願いだキャロライン。これまでの僕の行動の理由を明かしたとしても、君は僕を許さないかもしれない。
  それでも、最後までやり通させてくれ。
  せめて、あのピンクだけは絶対に排除しないといけないんだ。




「さてと……ねぇ、ヒーロバル男爵令嬢」
「はいっ!!」

  え?   ……なんでこのピンク、そんな嬉しそうに返事してるんだ?
  さっきまでの会話聞いてなかったのだろうか?
  やっぱりどこかしら頭のネジが飛んでるんじゃないか?

  まぁ、いい。
  僕は愛するキャロラインを階段から引きずり落として、怪我をさせて意識不明にまでさせたこのピンクを許す事は決して無いのだから。


  僕の繰り広げるピンクへの断罪劇に、キャロラインは、ポカンとした顔をしている。
  キャロラインは、きっと自分が断罪されて僕から婚約破棄を突きつけられるとでも思っていたのだろう。



  さて、そろそろ種明かしの時間だ。




「……何っっで……そんな事をしたのですか?」

  種明かしを聞いたキャロラインは、ものすごく動揺している。
  うん、そうだよね。混乱させてごめんね。
  だけど、やっぱりキャロラインには何で僕が、こんな事をしたのかの理由が分からないみたいだ。

「分からない?」
「分かりません……」

  ほらね。その返事を聞いて僕は小さく笑った。

「簡単な事だよ。キャロラインを守りたかった。それだけだよ?」
「ですから!  何故、そこまでして私を……!」
「本当に分かっていないんだね……そんな事をする理由なんてたった1つだよ、キャロライン」
「?」
「キャロラインの事が好きだから。確かに君は僕の婚約者だけど、婚約者だからって理由じゃない。僕は一人の女の子として、君にずっと恋をしていたんだよ」

  一世一代の僕の告白にキャロラインが固まった。
  かなり大きく目を見開いてるから相当驚いているんだろうな。
  ……本当に欠けらも伝わってなかったんだなぁ……

「え?  ……いつから、です、か?」

  えっ!  そこなんだ?
  ようやく口を開いたキャロラインから出た言葉はいつから自分の事を想ってくれていたのか問うものだった。

「ん?  いつからって。何を言っているの。そんなの初めて会った時からだよ」
「初めて……」
「そう。あの日、顔合わせした時から。一目で可愛いと思ったんだ。それからずっとずっと好きだった。……まあ、何でかは分からないけど、キャロライン自身には僕のこの気持ちは全く伝わっていなかったみたいだけどね」

  そう口にする僕は長年の伝わらなかった想いが溢れて寂しげに笑ってしまった。

  すると、

  ポタリ

  キャロラインの頬に涙が伝った。

「あ!  ……私、その……!」

  涙を流しながらアタフタするキャロラインが可愛くて申し訳ないながらも思わず笑ってしまった。
  そして、ようやく僕の想いがキャロラインに伝わったのだと実感出来た。

「キャロライン……僕は君を諦めなくてもいいんだろうか……?」

  僕はポツリとキャロラインの耳元でそう小さく呟いた。

「僕は君に捨てられてもおかしくない事をした。それに君は昔から僕から離れたがっていたわけだし……」

  返事が貰えるまで、口から心臓が飛び出すんじゃないかという程、バクバク鳴っていた。

「許されるなら……君がまだこんな僕を見限らないでいてくれるなら、僕は君の傍にいたい。君に……キャロラインにずっと僕の傍にいて欲しい……」

  そんな僕の願いにキャロラインは涙を流しながら言った。

「許すとか……許さないではありません……私も傍にいたいです……殿下の……いえ、シュナイダー様のお傍に」

  ──だから、これは許すとか許さないじゃない。
  ──私は今から……これからシュナイダー様との新しい関係を始めたい。

  キャロラインはそう言ってくれた。
  それを聞いた僕は、嬉しさと安堵と色んな感情が込み上げてくるのを、ジワジワ感じながら微笑んだ。

  あぁ、キャロライン……僕は君が大好きだ!
  これからは、絶対にこんな風に泣かせたりしない。
  一生君を大切にすると誓うよーー

  その近くで、
「……何なのよ、これぇぇぇ……!!」
  と唸りながら、どこかに連行されて行くピンクの声雑音はもう気にもならなかった。
  と、言うより、まだそこに居たんだな。


  その後、僕の起こした行動の後処理に追われる事にはなったが、無事にキャロラインとの時間を取り戻すことが出来た!

  あのピンクの処分が甘くなりそうだった時は、怒りが抑えられなかったけど。

  それよりも、だ!
  あれから、キャロラインは僕の事を殿下ではなく、「シュナイダー様」と呼んでくれるようになったのだ!  幸せだ!!
  ……長かった。僕の7年間……!!

  キャロラインは自分が卑屈になっていたからだ、と自己嫌悪に陥っているけど、僕としては全く気にしてない。

「いいんだよ」

  落ち込む様子のキャロラインに僕はそっと微笑む。

  だって、本当にいいんだ。
  キャロライン、君はあの日僕を好きだと言ってくれたから。

  その話をするとキャロラインは目を丸くして驚いている。
  そうか。夢だと思っていたんだな。
  はぁ、そんな所も可愛い。

  僕は今日も元気に弾んでるキャロラインの髪を一房、手に取りそっと髪にキスを落とした。

  夢に見るくらい僕の事が好きなんだよね?
  なんて、ちょっと意地悪な言い方をしたけど、本当の事だろう?
  すると、キャロラインは目に見えて動揺しだした。

「……!?  そ、それは、そう……なんですけども………………あぁ、もう!  シュナイダー様、好きです。好き!  大好きです!!」
「…………え」

  キャロラインが、真っ赤になりながら、突然そう叫んだ。

  僕の思考は暫く停止した。
  え?  今、キャロラインは何て?
  好き……いや、大好きって聞こえた……!

  そして、その言葉を理解すると見る見るうちにその顔が赤く染まっていくのが自分でも分かった。

「え?」
「……」
「シュナイダー様?」
「……」

  キャロラインは固まってしまった僕が心配になったのか何度も呼びかけてくれた。

「……るい」
「はい?  今、何て?」
「不意打ちはズルいよ、キャロライン!」
「えぇ!?」

  ちょっとシュンっと落ち込むキャロライン。
  あぁぁ、もう!!  僕の天使はズルい!!  可愛いすぎて本当に困る!

「……僕も、君が好きだよ、キャロライン」

  そう言いながら、僕がキャロラインに顔を近付けるとキャロラインは何をされるのか察したのかそっと瞳を閉じてくれた。

  ──なんて事だ!!  あの鈍かったキャロラインがっっ!!



  初めてのキスと喜びと感動で僕の心臓は破裂しそうだったけど、
  ようやく辿り着いたこの幸せにどっぷり浸る事にした。


  ちなみに、僕のあの告白を題材にしたという小説は、
  僕の愛読書として生涯、本棚の1番いい場所に並ぶ事になるのだった。




✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼✼


ありがとうございました!
シュナイダー脳内劇場もこれで終わりです。
ちょっと予定より長くなってしまいました。……すみません。
しかし、何て騒がしいヤツなんだ……幼少期は微笑ましかったんですけどね。

シュナイダー殿下は、こんな脳内キャロライン大好きな王子だという事を念頭に置いて、
明日更新予定のおまけ番外編をお読み頂けたら嬉しいです。
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