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「お前は個人資産を持っていない。誰が代わりに払うと思う? 答えてみろ!!」
胸ぐらを掴まれたまま、抵抗することなく、がくがくと前後に揺さぶられるハワード。舌打ちし、ベイル子爵がぱっと手をはなすと、ハワードは膝から床に崩れ落ちた。
「……一括でなら、我が家は破産していた。だが、リネット嬢の口添えもあり、分割での支払いが許された」
もらされた台詞に、ハワードは力なく顔を上げた。
「……リネットが」
「まわりの忠告を無視し、盲目的にお前を愛してしまっていた自分にも非があると言ってな」
「……そうですか。リネットはやっぱり、まだぼくを愛してくれているんですね」
「「は?」」
ベイル子爵とファネル伯爵の声が見事に揃った。
「リネットの愛に応えるべく、ぼくは心を入れ替え、今日から頑張ります。いつか、立派な領主となれるように。そして、肩代わりしてもらった慰謝料を、一括でお返しすることをお約束します」
呆れ果て、押し黙ってしまったファネル伯爵に代わり、ベイル子爵はめまいがしながらも、なんとか声を絞り出す。
「……愚かにもほどがある。いいか。離縁はすでに成立していて、お前とリネット嬢はもう、赤の他人だ。お前が領主になる未来はないし、慰謝料を一括で返すなど、夢のまた夢の話だ」
ハワードが、はは、と乾いた笑いをもらす。
「そんな馬鹿な。リネットがそんなこと、望むはずがありません」
「……お前、大丈夫か? いつからそんな、頭がおかしくなったんだ」
いっそ心配になったベイル子爵だったが、まあいい、と深いため息をついた。
「鉱山で働くのに必要なのは、知識ではなく体力だからな。お前のその細腕でどこまで耐えられるかわからんが……人間、慣れだ」
唐突過ぎて、聞き逃しそうになったハワードだったが「……鉱山?」と繰り返すと、ベイル子爵は、そうだ、と頷いた。
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「……一括でなら、我が家は破産していた。だが、リネット嬢の口添えもあり、分割での支払いが許された」
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「……リネットが」
「まわりの忠告を無視し、盲目的にお前を愛してしまっていた自分にも非があると言ってな」
「……そうですか。リネットはやっぱり、まだぼくを愛してくれているんですね」
「「は?」」
ベイル子爵とファネル伯爵の声が見事に揃った。
「リネットの愛に応えるべく、ぼくは心を入れ替え、今日から頑張ります。いつか、立派な領主となれるように。そして、肩代わりしてもらった慰謝料を、一括でお返しすることをお約束します」
呆れ果て、押し黙ってしまったファネル伯爵に代わり、ベイル子爵はめまいがしながらも、なんとか声を絞り出す。
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