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「お母様……わたし、うまくやれたでしょうか。これで全てがうまくいくのでしょうか」
隣に座る母親の肩に、疲れたようにもたれかかり、馬車に揺られるエノーラが吐露した。母親は眉根を寄せた。
「……それは、ミッチェルのことですか?」
「はい……これでミッチェルは、幸せになれますか?」
答えたのは、正面に座るブラート伯爵だった。
「少なくとも、お前の必死の訴えがなければ、もっと悲惨なことになっていただろうよ。あの場でヴォルフ伯爵家から除籍され、学園にも居られなくなり、路頭に迷う、とかな。あいつはそれも覚悟していたのかもしれんが、その先の見通しが甘すぎる。世間知らずの貴族令息のあいつが、一人で生きていけるほど、世の中は甘くない」
そうですか。
エノーラが力なく呟く。母親はそんなエノーラの手を優しく握った。
「疲れたでしょう。少し眠りなさい。屋敷に着いたら起こしてあげますよ」
「……けれどお母様。わたし、眠るのが怖いのです」
「ミッチェルが夢に出てくるかもしれないからですか?」
「……はい」
それでもエノーラの両瞼は、とろんと重く閉じていく。逆らえない。
──ああ、けれど。
と、エノーラは胸中で思う。
いっそ全てが夢だったら、どんなに良かったか。それとも気付いていないだけで、わたしはいま、夢をさ迷っている最中なのだろうか。
その想いを最後に、エノーラの意識は途切れた。
隣に座る母親の肩に、疲れたようにもたれかかり、馬車に揺られるエノーラが吐露した。母親は眉根を寄せた。
「……それは、ミッチェルのことですか?」
「はい……これでミッチェルは、幸せになれますか?」
答えたのは、正面に座るブラート伯爵だった。
「少なくとも、お前の必死の訴えがなければ、もっと悲惨なことになっていただろうよ。あの場でヴォルフ伯爵家から除籍され、学園にも居られなくなり、路頭に迷う、とかな。あいつはそれも覚悟していたのかもしれんが、その先の見通しが甘すぎる。世間知らずの貴族令息のあいつが、一人で生きていけるほど、世の中は甘くない」
そうですか。
エノーラが力なく呟く。母親はそんなエノーラの手を優しく握った。
「疲れたでしょう。少し眠りなさい。屋敷に着いたら起こしてあげますよ」
「……けれどお母様。わたし、眠るのが怖いのです」
「ミッチェルが夢に出てくるかもしれないからですか?」
「……はい」
それでもエノーラの両瞼は、とろんと重く閉じていく。逆らえない。
──ああ、けれど。
と、エノーラは胸中で思う。
いっそ全てが夢だったら、どんなに良かったか。それとも気付いていないだけで、わたしはいま、夢をさ迷っている最中なのだろうか。
その想いを最後に、エノーラの意識は途切れた。
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