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微睡みの中で誰かの話す声が聞こえる。前にもこんな事があったわ……ねぇ、団長さん。また、貴方は自分を責めたりしていないかしら。
『それは本人が望まないと思われます』
『そうか。しかし、治療師と薬師の両方で、これ程の力を持つ者がいたとは……』
あー、バレてしまったのね。両親からは隠す様に言われていたけど、そうね限界かもしれないわね……団長さんは、どう思っているのかしら?
『でも彼女を保護しないと他国から狙われたら家族まで危険だわ』
女性の言葉を理解して驚く。私の家族まで?一体、何の話をしているのかしら?私はそんな凄い人じゃないのに……あら意識がハッキリしているわ。三日経ったのね。手足にも力が入る……でも、今起きるとマズイわよね?困ったわ。
『時間を作って改めて来よう』
『ねぇ、私室じゃなくて客室を整えても良いのよ』
『お気遣いありがとうございます。ですが、今日中に目を覚ますと思われますのでご心配は不要です』
男女が団長さんに色々、提案の様なお願いを言っているけど彼は全て丁寧に断っていた。フフ、知り合って間もないはずなのに、私より私の事を考えてくれているなんてね……お城の客室なんて落ち着かないからごめんだわ。
私から少し離れた所でもう少し何か話したあと、男女は部屋を出て行った。やっと静かになった室内に大きなため息の音が聞こえる。あら、近い?
「ルーシー起きているよな」
「……あら、バレていたのね」
寝たふりした事を笑って誤魔化しながら、ゆっくりと体を起こすと団長さんの顔がクシャリと歪んで何かを堪える様な表情に変わった。その表情が苦し気で見ていられなくて思わず彼に手を差し出した。団長さんが差し出した私の手を両手で包むと、まるで存在を確かめる様に体を屈めて自分の額を押し付けた。
「君と一緒にいると心臓が幾つあっても足りないな」
「何よそれ……命がけってことかしら?」
「命がけ……そうだな心配し過ぎて命がけだな」
“心配”と言われて私は心底驚いて目を丸くした。今まで狂暴だとか戦闘狂とか言われてはいたけどねぇ。
「君は無自覚なのか?まったく……回りの人間がどれだけ心配を……」
団長さんのお説教が始まるかと思っていたら、途中で止まって顔を背けた。手を離してから何かを誤魔化す様に咳払いした後、着替えと食事を頼んでくると言って彼が目を合わさずに部屋を出る。薄暗い部屋の中で彼の急な行動に驚きながらも、なんとなく変な気分を変えたくてベッドから降りると窓のカーテンを開けた。
カーテンを開けると外は日が高くお昼頃を示している。久しぶりの心地良い日差しに、目を細めて辺りを見回しやっと自分がどんな姿か気付いた。……えっと、この服はナニ?……これで夜着?……何時着替えたと言うか、ヒラヒラなんですけど……本当にコレナニ?
「こんな姿を見られたなんて……恥ずかしすぎるわ」
思わず自分を抱き締める様に腕を回しその場に座り込んでしまった私だったけど、団長さんが戻ってくるかもしれないと思うといたたまれなくてベッドに戻り頭から布団を被って隠れる事にした。
私、そんなに若くないわよ。子供みたいなヒラヒラの夜着なんて準備したの誰よ!確かに戦闘で傷だらけだったし、服もボロボロだったわよ?でもコレはないわよ。……そう言えば着替えも一緒に頼んでくれると言ったわね……誰の趣味か知らないけど、普通の服を持ってきてくれるわよね?……貴族のドレスとかじゃないわよね……本当に勘弁して欲しいわ。
布団の中に隠れてモンモンと考えていた時、ノックが聞こえて返事をすると使用人の服を着た女性が服を手に持って入って来た。女性の姿に安心して布団から出ると、彼女は深々と頭を下げた。え?急に何かしら。
「ルーシー様、騎士団団長様より頼まれました着替えをお届けに参りました」
「ありがとうございます」
丁寧な言い方で渡された服を受け取ると、シンプルなワンピースだけど生地の肌触りが心地良い。どう見ても庶民の着る服の生地じゃなくて、内心かなり動揺した。しかも、下着の着替えも入っているじゃない。
「あの……この服は何方からでしょうか?」
「申し訳御座いません。伺っておりません」
「いえ、こちらこそ、すみません」
真面目な顔で答える女性に、なんだか申し訳なくて自分も謝ってしまう。その後、着替えを手伝うと言われて慌てて辞退すると、団長さんからの伝言を伝えてくれた。続き部屋にシャワーを使って良い?個人的に使えるシャワー……ここお城よね?……あぁ、寝たふりをしていた時、“私室”って女性の声で言っていたわね。
「団長様は一時間後に改めて伺うとの事で御座います」
「分かりました。ありがとうございます」
最後に女性は何かあればベルを鳴らす様にと言って、小さなハンドベルを置いて部屋を出て行った。
着替えを手伝うってワンピースを着るだけで?……貴族の常識なのかしらねぇ。本当についていけないわね……シャワー浴びてさっぱりしましょう。
『それは本人が望まないと思われます』
『そうか。しかし、治療師と薬師の両方で、これ程の力を持つ者がいたとは……』
あー、バレてしまったのね。両親からは隠す様に言われていたけど、そうね限界かもしれないわね……団長さんは、どう思っているのかしら?
『でも彼女を保護しないと他国から狙われたら家族まで危険だわ』
女性の言葉を理解して驚く。私の家族まで?一体、何の話をしているのかしら?私はそんな凄い人じゃないのに……あら意識がハッキリしているわ。三日経ったのね。手足にも力が入る……でも、今起きるとマズイわよね?困ったわ。
『時間を作って改めて来よう』
『ねぇ、私室じゃなくて客室を整えても良いのよ』
『お気遣いありがとうございます。ですが、今日中に目を覚ますと思われますのでご心配は不要です』
男女が団長さんに色々、提案の様なお願いを言っているけど彼は全て丁寧に断っていた。フフ、知り合って間もないはずなのに、私より私の事を考えてくれているなんてね……お城の客室なんて落ち着かないからごめんだわ。
私から少し離れた所でもう少し何か話したあと、男女は部屋を出て行った。やっと静かになった室内に大きなため息の音が聞こえる。あら、近い?
「ルーシー起きているよな」
「……あら、バレていたのね」
寝たふりした事を笑って誤魔化しながら、ゆっくりと体を起こすと団長さんの顔がクシャリと歪んで何かを堪える様な表情に変わった。その表情が苦し気で見ていられなくて思わず彼に手を差し出した。団長さんが差し出した私の手を両手で包むと、まるで存在を確かめる様に体を屈めて自分の額を押し付けた。
「君と一緒にいると心臓が幾つあっても足りないな」
「何よそれ……命がけってことかしら?」
「命がけ……そうだな心配し過ぎて命がけだな」
“心配”と言われて私は心底驚いて目を丸くした。今まで狂暴だとか戦闘狂とか言われてはいたけどねぇ。
「君は無自覚なのか?まったく……回りの人間がどれだけ心配を……」
団長さんのお説教が始まるかと思っていたら、途中で止まって顔を背けた。手を離してから何かを誤魔化す様に咳払いした後、着替えと食事を頼んでくると言って彼が目を合わさずに部屋を出る。薄暗い部屋の中で彼の急な行動に驚きながらも、なんとなく変な気分を変えたくてベッドから降りると窓のカーテンを開けた。
カーテンを開けると外は日が高くお昼頃を示している。久しぶりの心地良い日差しに、目を細めて辺りを見回しやっと自分がどんな姿か気付いた。……えっと、この服はナニ?……これで夜着?……何時着替えたと言うか、ヒラヒラなんですけど……本当にコレナニ?
「こんな姿を見られたなんて……恥ずかしすぎるわ」
思わず自分を抱き締める様に腕を回しその場に座り込んでしまった私だったけど、団長さんが戻ってくるかもしれないと思うといたたまれなくてベッドに戻り頭から布団を被って隠れる事にした。
私、そんなに若くないわよ。子供みたいなヒラヒラの夜着なんて準備したの誰よ!確かに戦闘で傷だらけだったし、服もボロボロだったわよ?でもコレはないわよ。……そう言えば着替えも一緒に頼んでくれると言ったわね……誰の趣味か知らないけど、普通の服を持ってきてくれるわよね?……貴族のドレスとかじゃないわよね……本当に勘弁して欲しいわ。
布団の中に隠れてモンモンと考えていた時、ノックが聞こえて返事をすると使用人の服を着た女性が服を手に持って入って来た。女性の姿に安心して布団から出ると、彼女は深々と頭を下げた。え?急に何かしら。
「ルーシー様、騎士団団長様より頼まれました着替えをお届けに参りました」
「ありがとうございます」
丁寧な言い方で渡された服を受け取ると、シンプルなワンピースだけど生地の肌触りが心地良い。どう見ても庶民の着る服の生地じゃなくて、内心かなり動揺した。しかも、下着の着替えも入っているじゃない。
「あの……この服は何方からでしょうか?」
「申し訳御座いません。伺っておりません」
「いえ、こちらこそ、すみません」
真面目な顔で答える女性に、なんだか申し訳なくて自分も謝ってしまう。その後、着替えを手伝うと言われて慌てて辞退すると、団長さんからの伝言を伝えてくれた。続き部屋にシャワーを使って良い?個人的に使えるシャワー……ここお城よね?……あぁ、寝たふりをしていた時、“私室”って女性の声で言っていたわね。
「団長様は一時間後に改めて伺うとの事で御座います」
「分かりました。ありがとうございます」
最後に女性は何かあればベルを鳴らす様にと言って、小さなハンドベルを置いて部屋を出て行った。
着替えを手伝うってワンピースを着るだけで?……貴族の常識なのかしらねぇ。本当についていけないわね……シャワー浴びてさっぱりしましょう。
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