この花言葉を君に

 10月18日。
 遠野夕紀は恋を棄てた。

「私ね、悪い女と悪い男の間に生まれた悪魔みたいな子なの」

 棄てたいと思っていたから方法は雑で投げやり。

「貴方と違って私は『見た目通り』の人間じゃない。貴方は私をいつも『かっこいい』って簡単に言ってしまえているけれど、中身の私は真逆なの。あの噂だって本当だし『在籍するのも4年か5年』って社長には話を通していたの」

 とにかく彼に嫌われてしまおうと……その一心で強い酒を煽り、今まで誰にも明かした事のない話をポンポンと投げ付けた。

「わかった」

 一旦素直に応じたように見えたが……すぐに

「最後の思い出に、抱かせて」

 チャラ男らしいセリフで縋る。

「いいわよ」

 夕紀は口角を上げ、彼の手を取る。

(カラダ目当てだったのは知ってるんだから)

 恋を棄てるには絶好の機会だ、とさえ思ったのだ。
 


……それから7年の時が経ち

 『雨上がり珈琲店 おかげさまで5周年』のボードを掲げて営業していたところ。

「うそ……でしょ」

 また彼と再会してしまったのだった。





※2017年に初めて書き、2022年にアルファポリス様にて公開スタートした小説の再構築版です。
※性表現強めのページには★マークを付けています。
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