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【番外編】ネコの彼女
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(猫にチョコレートはダメなんだろうけど、これは「フリ」だもんね)
「ニャー」
私は声をあげて口を開け、りょーくんの持つチョコレートへ近付き……歯でパクッと挟んでチョコレートを掴み
「一口は大きいから半分に割ろうね」
りょーくんに指示されて歯でカプッとチョコレートを割るように噛み、半分を口に入れてモグモグ食べた。
このチョコレートは大きめのトリュフチョコのような形状で、中にトロリとしたキャラメルソースが入っている。そんなものを半分に割ったらキャラメルソースが出てきてしまうのは当然のことだ。
りょーくんの摘んでいるチョコレートのもう半分からキャラメルソースが垂れてきて親指の付け根や手首まで汚していく。
「ニャッ!」
(りょーくんの手や袖が汚れちゃう!)
そう思った私はチョコレートをすぐに飲み込むと、りょーくんの手に飛びついてもう片割れのチョコレートを口の中に入れ、垂れているキャラメルソースをペロペロと舐めとった。
「教えてないのによく出来たね。アサカはとても賢い子だよ」
ネコのプレイが始まる前はどうしたらいいんだろうと緊張していたのに、「アサカ」と呼ばれたり頭や喉を撫でられたりした瞬間「ネコにならなきゃ」という思いになって自然と動くことができている。
(それに……)
「チョコレートを食べたら飲み物だね。牛乳を持ってきてあげる」
私を見るりょーくんの顔がいつもと同じように優しく微笑んでいるんだけど、なんだかいつものそれとは違ってるように感じる。
(なんだろう、この違和感……優しさの中に慈愛や庇護も含んでる感じっていうか)
「持ってきたけどアサカにはちょっと難しいかな?」
牛乳がコップではなく、深皿に入れられた状態で持ってこられてしまった。
(うわぁお。そこはリアルを追求しちゃうのね……)
コップを手で持って飲むのではなくお皿に顔を突っ込まなければならないのかと知り、ちょっとだけ引いてしまう私。
「うーん……どうやって飲ませようか?」
私は本物のネコではないからお皿じゃ飲みにくいと気付いたらしいりょーくんは、またクッションに座り直して深皿を自分の口元に近付けたと思ったら
(あれ? そのまま飲んじゃった!)
それからりょーくんの顔が私の顔に近付いて、牛乳を口移ししてきた。
以前スパークリングワインを口移ししてもらったことがあるけど、りょーくんは本当に器用に私に流し込んでくれる。こういうのは前から経験があるのかもしれない。
「んっ」
りょーくんの口や唾液で温められたぬるい牛乳を二口分、コクコクと飲み干す。
「牛乳、もっと欲しい?」
彼にお代わりを訊かれたけれど、私は首を横に振って「もう要らない」と示した。
「じゃあ、俺の膝においで」
りょーくんが胡座をかいて、ポンポンと膝を軽く叩く。
「ニャー」
私は一声鳴き、頭をりょーくんの胡座の中に預けた。
「アサカは甘えるのも上手だね。素直でいいネコだよ」
りょーくんがそう言ってフードのネコ耳をクリクリと指でくすぐる仕草をした時点で、いつものりょーくんと雰囲気が違う理由に気が付いた。
私はこのネコのプレイを、はなからエッチなプレイなのだと決めつけていたんだ。
だけどりょーくんはずっと、私がしていた妄想とは全く違う、「飼い主と猫」のプレイがしたかっただけなんだと……この時点でようやく気が付いた。
(だから今の私を見るりょーくんの目は慈愛や庇護愛が含まれているのか……まさに「飼い主の目」そのものって感じだぁ)
私は今まで生き物を飼った経験がないけれど、りょーくんの目は確かにアサカという名のネコを優しく扱っている目をしているんだと感じている。
「ニャーン」
体を優しく撫でられるのが心地良く、ゴロゴロと喉を鳴らしたくなったんだけど出来ないから、代わりに長めに鳴いてみた。
「どうしたのアサカ。なでなで気持ちいい?」
「ニャーン」
りょーくんの問い掛けに私はもう一度同じように鳴く。
「じゃあもっと撫でてあげるね」
りょーくんは両腕を大きく使って、私の頭からお尻までゆっくりスルスルと撫でていく。
その撫で方はソフトなタッチではあっても決してエッチな感じではなく、全身のマッサージを受けているかのようにとても心地良いものだった。
「ニャー……」
とはいえ目を閉じてその心地よさに浸りながら、どうしてりょーくんは突然私にこんなことをしたくなったのだろうと疑問が浮かぶ。
「ニャー」
私は声をあげて口を開け、りょーくんの持つチョコレートへ近付き……歯でパクッと挟んでチョコレートを掴み
「一口は大きいから半分に割ろうね」
りょーくんに指示されて歯でカプッとチョコレートを割るように噛み、半分を口に入れてモグモグ食べた。
このチョコレートは大きめのトリュフチョコのような形状で、中にトロリとしたキャラメルソースが入っている。そんなものを半分に割ったらキャラメルソースが出てきてしまうのは当然のことだ。
りょーくんの摘んでいるチョコレートのもう半分からキャラメルソースが垂れてきて親指の付け根や手首まで汚していく。
「ニャッ!」
(りょーくんの手や袖が汚れちゃう!)
そう思った私はチョコレートをすぐに飲み込むと、りょーくんの手に飛びついてもう片割れのチョコレートを口の中に入れ、垂れているキャラメルソースをペロペロと舐めとった。
「教えてないのによく出来たね。アサカはとても賢い子だよ」
ネコのプレイが始まる前はどうしたらいいんだろうと緊張していたのに、「アサカ」と呼ばれたり頭や喉を撫でられたりした瞬間「ネコにならなきゃ」という思いになって自然と動くことができている。
(それに……)
「チョコレートを食べたら飲み物だね。牛乳を持ってきてあげる」
私を見るりょーくんの顔がいつもと同じように優しく微笑んでいるんだけど、なんだかいつものそれとは違ってるように感じる。
(なんだろう、この違和感……優しさの中に慈愛や庇護も含んでる感じっていうか)
「持ってきたけどアサカにはちょっと難しいかな?」
牛乳がコップではなく、深皿に入れられた状態で持ってこられてしまった。
(うわぁお。そこはリアルを追求しちゃうのね……)
コップを手で持って飲むのではなくお皿に顔を突っ込まなければならないのかと知り、ちょっとだけ引いてしまう私。
「うーん……どうやって飲ませようか?」
私は本物のネコではないからお皿じゃ飲みにくいと気付いたらしいりょーくんは、またクッションに座り直して深皿を自分の口元に近付けたと思ったら
(あれ? そのまま飲んじゃった!)
それからりょーくんの顔が私の顔に近付いて、牛乳を口移ししてきた。
以前スパークリングワインを口移ししてもらったことがあるけど、りょーくんは本当に器用に私に流し込んでくれる。こういうのは前から経験があるのかもしれない。
「んっ」
りょーくんの口や唾液で温められたぬるい牛乳を二口分、コクコクと飲み干す。
「牛乳、もっと欲しい?」
彼にお代わりを訊かれたけれど、私は首を横に振って「もう要らない」と示した。
「じゃあ、俺の膝においで」
りょーくんが胡座をかいて、ポンポンと膝を軽く叩く。
「ニャー」
私は一声鳴き、頭をりょーくんの胡座の中に預けた。
「アサカは甘えるのも上手だね。素直でいいネコだよ」
りょーくんがそう言ってフードのネコ耳をクリクリと指でくすぐる仕草をした時点で、いつものりょーくんと雰囲気が違う理由に気が付いた。
私はこのネコのプレイを、はなからエッチなプレイなのだと決めつけていたんだ。
だけどりょーくんはずっと、私がしていた妄想とは全く違う、「飼い主と猫」のプレイがしたかっただけなんだと……この時点でようやく気が付いた。
(だから今の私を見るりょーくんの目は慈愛や庇護愛が含まれているのか……まさに「飼い主の目」そのものって感じだぁ)
私は今まで生き物を飼った経験がないけれど、りょーくんの目は確かにアサカという名のネコを優しく扱っている目をしているんだと感じている。
「ニャーン」
体を優しく撫でられるのが心地良く、ゴロゴロと喉を鳴らしたくなったんだけど出来ないから、代わりに長めに鳴いてみた。
「どうしたのアサカ。なでなで気持ちいい?」
「ニャーン」
りょーくんの問い掛けに私はもう一度同じように鳴く。
「じゃあもっと撫でてあげるね」
りょーくんは両腕を大きく使って、私の頭からお尻までゆっくりスルスルと撫でていく。
その撫で方はソフトなタッチではあっても決してエッチな感じではなく、全身のマッサージを受けているかのようにとても心地良いものだった。
「ニャー……」
とはいえ目を閉じてその心地よさに浸りながら、どうしてりょーくんは突然私にこんなことをしたくなったのだろうと疑問が浮かぶ。
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