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海デート

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「そろそろ海の中に入りたいなー」

 海の家でお昼ご飯を食べ終え、真澄の背中に藤井くんが日焼け止めを塗り直してるのを見ながら私がぼやくと

「俺も海の水で濡れるあーちゃんのポニーテールやうなじ見たいな♡」

 りょーくんは私の首筋をスッと撫でてそんな事を言う。

「えっ!! ダメだよ!!」

 私は咄嗟にりょーくんの指を手で払いのけた。

「何でダメ? 水の中に入るっていうのに髪をおろしたままにする気?」

 文句を言うりょーくんに私はカッと顔が熱くなって

「だっ……だって仕事中はポニーテールにして首を出すから日焼けしたの見られたくないし!」
「頸にもしっかり日焼け止め塗れば良くない? 俺してやろうか? 背中とか自分で塗り直せないだろ?」
「そうしてもらうとありがたいけど、人前で日焼け止め塗られるのってちょっと恥ずかしいような……」
「そうかな? 矢野達はあんな感じだけど?」

 りょーくんの指差す方向へ顔を向けると、真澄が横に寝転がって藤井くんに塗られ放題になっているのが見えて

(はっ……ずかしい事でも、ないのかなぁ……)

 パラソルの下とはいえ堂々と塗られてる真澄やエッチな気持ちなくニコニコしながら日焼け止めを塗ってあげてる藤井くんの姿に拍子抜けた。

「汗もかいてるし、日焼け止めを塗り直さないと、頸どころか全身真っ赤になって恥ずかしい思いするよ?」
「うう……」

(仕方ない……かぁ)

 私はポーチの中に入れておいたヘアゴムでポニーテールにすると、りょーくんは嬉しそうな顔になって私のラッシュガードを脱がせ日焼け止めを塗り始めた。

「藤井くんみたいに塗ってよ。エッチな感じで塗ったらダメだからねっ!」

 昨夜から大人しかったりょーくんが、今じゃすごくニヤニヤ顔になってて良からぬことをするんじゃないかとドキドキだ。

「エッチな感じって、具体的にどういう塗り方?」

 彼はクスクス笑いながら指でうなじを塗り塗りしはじめて……

「やっ……それがだめぇ……♡」

 温かな指先が頸を滑る度にゾクゾクきて体がビクビクと反応してしまう。

「ちょっとそこー! 公然わいせつ禁止ー!」
「過剰なイチャイチャも禁止だよー!」

 気が付いたら真澄と藤井くんが既に起き上がって私達をジロジロ見てる。

「えー? 普通に塗ってんだけどなぁ。あーちゃんがオーバーに感じてるだけでしょ……ねぇ?」
「!!」

(嘘だ! 絶対にエッチな塗り方してるよ!!)

 平然と2人にそう言いのけるりょーくんが私は信じれなかった。

「もう!頸塗りすぎぃ……」

 我慢ならなくなり、立ち上がってりょーくんから逃れる。

「背中がまだなんだけど?」

(手招きしてるりょーくんの顔が変態っぽくてなんかいやぁんっ!)

「あとは自分で塗るからいいよぉ」

 背中は自分で塗ろうと日焼け止めをりょーくんから奪おうとしたらりょーくんがスッと立ち上がって日焼け止めを取らせないように高々と上げる。

「ほら、取れるもんなら取ってみてー♪」
「ああっ! ひどい!!」

 30センチも身長差があるのだからそんな事されたら取れるわけがない。

「ちょっとりょーくん! 手を高くあげるのやめてよー!」

 ピョンピョン跳び上がって取ろうとしてみてもやっぱりダメで、3人して私の行動に笑っちゃってる。

「もー、真澄も藤井くんも手伝ってよぉ」

 跳びながら助けを求めても真澄達は「ムリムリ」と首を左右に振るばっかりだ。

(りょーくん183㎝もあるんだから3人がピョンピョンしても無理なのは明らかなんだけどさぁ……もうちょっと私に優しくしてくれても良くないかなぁ)

「あー面白っ♪」

 1番笑っていたのはりょーくんで

「私の事を馬鹿にしまくりなのやだぁ」

 跳ぶのも馬鹿らしくなってきてりょーくんの腹筋に軽くパンチしてやった。

「馬鹿にしてるつもりはないんだよ、お子ちゃまみたいで可愛いなって思ってはいるけど」

 パンチした部分を撫でながら彼は日焼け止めを持つ手をようやく下ろしてくれた。

「んもぉ……」
「ちゃんと真面目に塗るから俺に背中向けて? 自分じゃ肩甲骨のあたりとか塗れないでしょ?」
「だからっ! 最初から真面目に塗っててばぁ」

 今度こそちゃんと塗ってくれるだろうと思いつつそれでも何かするんじゃないかという疑惑が晴れなくて、りょーくんに背中を向けてからも体に力を入れてギュッと目を閉じる。

 ぬりぬりぬりぬり……

「そこまで強張らせならなくてもいいのに」

 背中越しからりょーくんのクスクス笑いが聞こえる。

「最初から真面目に塗ってくれたら体ガチガチにしないのっ!」
「俺は最初から真面目なつもりだっんだけどなー♪ はい、完了っ!」

 それから塗り終わった合図にりょーくんから背中を軽くポンポンされた。

「じゃあ真澄も藤井くんも海の中にはいろー!」

 浮き輪を持って真澄に呼びかけたんだけど、真澄はパラソルの下から動かずに

「私はいいやー、パス!」

 と返事がきたから私はカルチャーショックを受けた。

「えっ? 入らないの?」
「だって濡れるのイヤだもん」
「ええぇ……」

(海水浴って水の中に入る事こそ醍醐味なんじゃないの? 田舎な私と都会な真澄の考え方ってそんなに違うもの?)
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