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【番外編】シチューを煮込む(俊哉side)※BL要素注意

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 やがて亮輔は、茶色い飲み物を愛する女性に恋をして、この自宅の真下でその女性と同棲生活をスタートさせるに至った。

 半分以上は俺のをしているが、2人が20歳前で出会い愛で結ばれたのは奇跡に近いと思っている。






「俊哉さぁ、今何を思ってんの?」

 俺はいつの間にかアラサーなる年齢に達していて、亮輔と朝香さんが今頃可愛らしくあのバスタブで楽しく入浴しているだろう事を予測しながら、今日も鍋をかき回していた。

「何が?」

 俺は、カウンター越しで肘をついてビーフシチューの出来上がりを待っている人物に短く聞き返す。

「悔しいとか思ったりしないんだ?」
「え?」
「嫉妬とか、するんじゃねぇかなぁって」
「……」
「だって亮輔は『あーちゃん』って女の手料理なら喜んで食うんだろ?」
「そうだね」
「俊哉は悔しいって思わねーのかよっつってんの! 本来ならこのビーフシチュー、亮輔に一番食べてもらいてぇんだろうが!」

 背中越しに聞こえるその人物の話し方に、俺は可笑しくなってしまって

「もういいんだよ、そういうのは」

 コンロの火を止めながら、本当にクスクスと笑う。

「……マジかよ」

 クスクス笑いに対し動揺している空気感が、皿に盛り付けている俺の手にも伝播でんぱする。

「亮輔はね、今、長時間かけて作られた飲み物や食べ物で充分幸せになれているんだよ。朝香さんがビーフシチューを作れるのかは知らないけれどオムライスは絶品って言うし、彼女のコーヒーはとても美味しい。
 俺は毎日、朝香さんが淹れたコーヒーを飲み亮輔が並んでまで買ったチョコレートに舌鼓を打つ2人の様子を想像出来ればそれで幸せなんだよ」

 今述べた言葉に偽りはない。
 俺はある意味朝香さんに感服しているし、純粋に2人の愛を見守りたいと願っているのだ。


 シチュー皿に適量を盛り付け、キッチンペーパーで丁寧に縁を拭き取った上で……そこでくるりとターンをしてカウンターテーブルでシチューを待つ人物に呼び掛けた。
 
「そろそろこの話は終わりにしようか、せっかくの料理が冷めてしまうからね……さぁ俺の作ったビーフシチューを分け合おうか。君と俺の、2人きりで」






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