人生七回目、さすがにもう疲れたので好きに生きます

木崎優

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番外編

前日談 とある少女の話5

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 それからというもの、私は何度か舞踏会や夜会といった集まりに参加することになり、ハロルドさまと顔を合わせるようになった。
 貴族社会にまったくといっていいほど馴染めていない私に気を遣ったのだろう。他の人たちを眺めながら所作の一つ一つにどういう意味があるのか、どう振る舞えばいいのかやら、目上に対する言葉遣い、作法などを教えてくれた。

「ハロルドでんかにつきましては、本日もお加減がよろしく……?」

 だけど、慣れない言葉遣いや綺麗な喋り方はなかなか身につかなかった。
 これで合っているだろうかと不安になり、語尾が弱々しくなる。それを見て、ハロルドさまは眉間に皺を寄せて「もっと自信を持て」と言った。

「とりあえず自身満々に言っておけばなんとかなる」
「ハロルドでんかは堂々としてますもんね」

 腕を組んで壁に背中を預けているだけなのに存在感が違う。違いすぎて、私が場違いだとかどうでもよくなるほどだ。

「やっぱり、王子様だからですか?」
「……どうだろうな」

 どうやらこれは駄目な話題だったようだ。わずかに言いよどむ姿に、私は慌てて話題を変えられるものはないかとあたりを見回した。

「あ、ハロルドでんか! ほら、あれ。すっごい綺麗な人がいますよ」

 そうして周りを見ていると、きらきらと輝いて見えるほど綺麗な女性を見つけた。きらびやかな衣装をまとっている人たちの中にいても目につくほどで、これならとハロルドさまに話しかける。
 ハロルドさまもいい歳をした男性だから、綺麗な女性を見れば少しは気がよくなるだろうと思ったからだ。

「……あれは……俺の婚約者だ」

 だけど、苦々しく告げられた言葉に失敗だったことを悟った。
 
「え、え、えー……。ハロルドでんか、婚約者なんていたんですね。知りませんでした。びっくりです。……って、あれ、それって私といてもいいんですか? 婚約者って恋人ですよね?」

 婚約者とは、将来を誓い合った相手のはずだ。それなのに、他の女性と一緒にいるのはまずいのではないだろうか。
 村にいた頃、三軒隣の旦那さんが若い女性と一緒にいた、というだけで奥さんが包丁を持ち出していた。

「……それよりも……そのでんか、という発音はどうにかならいのか? それならまだ、呼び捨てのほうがマシだ」
「これでも頑張ってるんですよ……」

 殿下、なんて使ったことのない言葉だ。だけど王子様は殿下と呼ぶように教わったから、頑張ってる。なかなか身につかないけど。
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