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釣りと湖
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アレスの湖には、王都から馬車が出ている。
でも、ランスに近くまで行ってもらってゲートを開いてもらった方が早いし、お尻が痛くなる馬車は極力避けたい。
少し離れた所にある岩影の後ろにゲートを開いてもらったけど、様子がおかしい。
馬車が着くそこには兵士が立っているし、観光客も姿が見えない。
「あの…何かあったんですか?」
「何だ?今は王都からの馬車も出ていないし、お前達、どこから来たんだ?」
「只の観光ですけど…何も知らなくて」
「湖に、巨大な魔物が住み着いたんだ。もう何人も犠牲になっていて、我々の仲間や冒険者も…とにかく、観光は出来ない」
(巨大な魔物か…ギルドで聞いてみるか?魔熊の件もあったし、我々になら討伐も可能だろう)
(そうだね…ボート遊びの為に一肌脱ごうか)
王都のギルドに行くと、待ってましたと言わんばかりに討伐を依頼された。
冒険者ギルドを通してパーティーもふもふと連絡を取ろうとしていたようだ。
ギルドのないもふもふの国とか、ダンジョンマスターの事とかあったりしたから、暫くギルドに行ってなかったな…
「それで?どんな魔物かも分からないと?」
「済まない。巨大に進化した魚の魔物か、水棲の魔物だとは思うが…目撃した者はその魔物に食べられたか、溺れたか…見付けられずに戻った者もいるが」
「それって、船に乗らないでいた人には被害はないんですか?」
「そうだな。まあ…船遊びをする事が目的の場所だからな。それで、依頼は受けて貰えるのか?もし何も見付けられなくても一月で金貨5枚は保証するし、小型帆船も貸し出ししよう」
つまりは只で船遊びが出来ると?やらない訳ないじゃん!
「やります!」
「でも、大丈夫にゃ?船に乗るとメイは気持ち悪くなるにゃ?」
「へ…平気だよ。湖は海みたく波もないし」
最悪、泳ぐか。
次の日。ギルドの依頼表を見せて、通して貰った。
かなり大きな湖で、真ん中に島が見える。湖面は陽の光を反射して、キラキラと輝いている。
貸してくれた小型帆船は、定員10名だそうだけど、木造船で乗り込むと湖面も近く、ちょっとでも揺れると浸水しそうだ。
ちょっと怖い。
「いざとなったら空に逃げてもいいにゃ?」
「それは狡いよ…人化してても飛べるの?」
「にゃーは問題ないにゃ。空中に逃げるだけにゃ…濡れたくないにゃ」
そっか…猫だもんね。
「結界を纏ったら?」
「それでも何か嫌にゃ…ちょっと濡れる位なら多分大丈夫…だけど、どうしてもだめなら影に入れてにゃ?」
「うん。いいよ」
「我は泳ぎを教わりたい」
「そういえばまだ教えてなかったね。でも…今はヤブランだよ?」
「先に進めば岸からは見えないだろう。アロカシアになっても問題はない」
良かった。そこで女装?するとか、裸で結界纏うとか言わなくて。
船酔いしないように、なるべく船を揺らさないように、ゆっくりと進めるように、風量を調節する…湖面には風を当てないように、帆だけに。
「思ったよりも平気かな?湖面が近い方がいいのかも」
「今回はきらきらは出さないにゃ?」
「今の所は。ていうか、酷いよ…シュガー」
いや、シュガーに悪気がない事は分かってるんだけどね。
「しかし…こうも気配が多いとどれを追ったらいいのか」
「そうなんだよね…ね、魚なら釣れるかな?私、釣りのスキルも持ってるし」
「ただ船を進めれば出会えるとも限らないしな」
収納庫から農園で愛用してる釣竿を出す。ゲームの中じゃないから、ちゃんと餌として肉片を付ける。
え、あっさり食いついた?
看破 ドクニジマス 淡水に多く生息する魔物。鋭い歯を持ち、奥歯に毒がある
「丁度小腹が空いた所だ」
「ちょっ…ヤブラン!毒があるよ!」
頭から骨ごと食べてしまったヤブランに、慌てる。
「…ふむ。そのようだな。この舌に残る苦味は毒の味だ…心配する事はない。我に毒は効かぬ」
そりゃ、状態異常無効持ってるのは知ってるけど!
ていうか、朝ご飯はちゃんと食べたよね!大量に!
「俺も釣りをしてみたいな」
「我も!」
一応古い釣竿も売らないで持ってる。シュガーは…もう夢の中だね。
フレイムと魔道具についての話をして時間を潰している間に、何匹か釣れたみたいだ。
「ヤブラン…鑑定は持ってるよね?どうして毒持ちの魚を食べるかな…」
「折角釣れたのに逃がすのは勿体ないし、主に食べさせる訳には行かないしな」
もしかして…外でも毒持ちの魔物を食べていたのかも…
「もう…お腹壊しても知らないよ?」
「毒にも種類と味があって、これもまた興味深い…」
「野生の頃は味がおかしいと感じたら、普通は食べないが、それでも耐性はつく…が、好んで食べる者は珍しい」
ランスは他の子に比べて野生の期間が長かったから、その間に取れたスキルって事かな?
「毒にも強さがあるの…強い毒でヤブランが死んじゃったら、メイが悲しむの」
「大丈夫だ。そこまで危険な物は口にしない」
「釣れたにゃー?」
「本命は釣れないね…でも食べられる魚もそれなりに釣れたかな」
「お刺身にゃ?」
「食材は無駄にしないよ?」
ヤブランのお気に入りはドクニジマスみたいだ。そんなに強い毒ではないらしい…むしろその味が癖になったとか。
湖の外周をぐるっと回ってみたけど、それらしき魔物は居なかったな…明日に期待しよう。
でも、ランスに近くまで行ってもらってゲートを開いてもらった方が早いし、お尻が痛くなる馬車は極力避けたい。
少し離れた所にある岩影の後ろにゲートを開いてもらったけど、様子がおかしい。
馬車が着くそこには兵士が立っているし、観光客も姿が見えない。
「あの…何かあったんですか?」
「何だ?今は王都からの馬車も出ていないし、お前達、どこから来たんだ?」
「只の観光ですけど…何も知らなくて」
「湖に、巨大な魔物が住み着いたんだ。もう何人も犠牲になっていて、我々の仲間や冒険者も…とにかく、観光は出来ない」
(巨大な魔物か…ギルドで聞いてみるか?魔熊の件もあったし、我々になら討伐も可能だろう)
(そうだね…ボート遊びの為に一肌脱ごうか)
王都のギルドに行くと、待ってましたと言わんばかりに討伐を依頼された。
冒険者ギルドを通してパーティーもふもふと連絡を取ろうとしていたようだ。
ギルドのないもふもふの国とか、ダンジョンマスターの事とかあったりしたから、暫くギルドに行ってなかったな…
「それで?どんな魔物かも分からないと?」
「済まない。巨大に進化した魚の魔物か、水棲の魔物だとは思うが…目撃した者はその魔物に食べられたか、溺れたか…見付けられずに戻った者もいるが」
「それって、船に乗らないでいた人には被害はないんですか?」
「そうだな。まあ…船遊びをする事が目的の場所だからな。それで、依頼は受けて貰えるのか?もし何も見付けられなくても一月で金貨5枚は保証するし、小型帆船も貸し出ししよう」
つまりは只で船遊びが出来ると?やらない訳ないじゃん!
「やります!」
「でも、大丈夫にゃ?船に乗るとメイは気持ち悪くなるにゃ?」
「へ…平気だよ。湖は海みたく波もないし」
最悪、泳ぐか。
次の日。ギルドの依頼表を見せて、通して貰った。
かなり大きな湖で、真ん中に島が見える。湖面は陽の光を反射して、キラキラと輝いている。
貸してくれた小型帆船は、定員10名だそうだけど、木造船で乗り込むと湖面も近く、ちょっとでも揺れると浸水しそうだ。
ちょっと怖い。
「いざとなったら空に逃げてもいいにゃ?」
「それは狡いよ…人化してても飛べるの?」
「にゃーは問題ないにゃ。空中に逃げるだけにゃ…濡れたくないにゃ」
そっか…猫だもんね。
「結界を纏ったら?」
「それでも何か嫌にゃ…ちょっと濡れる位なら多分大丈夫…だけど、どうしてもだめなら影に入れてにゃ?」
「うん。いいよ」
「我は泳ぎを教わりたい」
「そういえばまだ教えてなかったね。でも…今はヤブランだよ?」
「先に進めば岸からは見えないだろう。アロカシアになっても問題はない」
良かった。そこで女装?するとか、裸で結界纏うとか言わなくて。
船酔いしないように、なるべく船を揺らさないように、ゆっくりと進めるように、風量を調節する…湖面には風を当てないように、帆だけに。
「思ったよりも平気かな?湖面が近い方がいいのかも」
「今回はきらきらは出さないにゃ?」
「今の所は。ていうか、酷いよ…シュガー」
いや、シュガーに悪気がない事は分かってるんだけどね。
「しかし…こうも気配が多いとどれを追ったらいいのか」
「そうなんだよね…ね、魚なら釣れるかな?私、釣りのスキルも持ってるし」
「ただ船を進めれば出会えるとも限らないしな」
収納庫から農園で愛用してる釣竿を出す。ゲームの中じゃないから、ちゃんと餌として肉片を付ける。
え、あっさり食いついた?
看破 ドクニジマス 淡水に多く生息する魔物。鋭い歯を持ち、奥歯に毒がある
「丁度小腹が空いた所だ」
「ちょっ…ヤブラン!毒があるよ!」
頭から骨ごと食べてしまったヤブランに、慌てる。
「…ふむ。そのようだな。この舌に残る苦味は毒の味だ…心配する事はない。我に毒は効かぬ」
そりゃ、状態異常無効持ってるのは知ってるけど!
ていうか、朝ご飯はちゃんと食べたよね!大量に!
「俺も釣りをしてみたいな」
「我も!」
一応古い釣竿も売らないで持ってる。シュガーは…もう夢の中だね。
フレイムと魔道具についての話をして時間を潰している間に、何匹か釣れたみたいだ。
「ヤブラン…鑑定は持ってるよね?どうして毒持ちの魚を食べるかな…」
「折角釣れたのに逃がすのは勿体ないし、主に食べさせる訳には行かないしな」
もしかして…外でも毒持ちの魔物を食べていたのかも…
「もう…お腹壊しても知らないよ?」
「毒にも種類と味があって、これもまた興味深い…」
「野生の頃は味がおかしいと感じたら、普通は食べないが、それでも耐性はつく…が、好んで食べる者は珍しい」
ランスは他の子に比べて野生の期間が長かったから、その間に取れたスキルって事かな?
「毒にも強さがあるの…強い毒でヤブランが死んじゃったら、メイが悲しむの」
「大丈夫だ。そこまで危険な物は口にしない」
「釣れたにゃー?」
「本命は釣れないね…でも食べられる魚もそれなりに釣れたかな」
「お刺身にゃ?」
「食材は無駄にしないよ?」
ヤブランのお気に入りはドクニジマスみたいだ。そんなに強い毒ではないらしい…むしろその味が癖になったとか。
湖の外周をぐるっと回ってみたけど、それらしき魔物は居なかったな…明日に期待しよう。
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