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レベルアップを目指して
社畜にも休みくらいある 2
しおりを挟む「家に来るか」
と言われたのが昨日のこと。
厚木が朝早くから迎えに来た。
いつもは迎えに行く厚木が迎えに来ている。
吉継のテンションは少し上がっている。表情筋には反映されないが。
「いつもと逆です」
「ああ、いくぞ」
「…?」
厚木の返事がそっけないのはいつものことだが…。
「厚木さん」
「なんだ」
「なんでもないです…」
「さっさと乗れ」
「俺が運転しますか」
「いい」
即答され、厚木が運転する車に乗り込む。
なんだか、厚木の機嫌が悪い気がする。
時折ため息を吐いたり、全然吉継の方を見なかったり…。
社畜にとって休みの価値は計り知れないくらい高いのかもしれない。
吉継のために使うのはやっぱりもったいないと思ったのだろうか?
単純に面倒臭い可能性もある。厚木だし。
信号が赤になった。
「厚木さんにはこれ、いやなことですか」
「あ?」
「俺、帰ります」
「待て」
助手席の鍵を開けるが、すぐさまガチャリと掛け直されてしまう。
「嫌です。厚木さん怒ってます」
「あ?…いや、悪かった。怒っていない」
「…」
「怒っていない、ベルトをしろ」
渋々シートベルトをかけなおす。
「怒ってませんか」
「ああ、ただ、家に帰ったら面倒なことがある」
「面倒ですか」
社畜の社長業を文句も言わずにこなす厚木の面倒なこと?
単純に興味がある。
「何かありますか。でも、嫌なら帰らなくて良いと思います」
吉継の稚拙な気づかいには返事をせず、厚木は横目で隣をチラリと見てから口を開く。
「山科が腕を振るって待っている」
「だめです厚木さん、早く行きましょう」
山科は、吉継が厚木の別宅で療養をしていたときに身の回りの世話をしてくれた、厚木家の家政婦である。
吉継に母の記憶はほとんど無いが、母がいたらこんな感じという漠然としたイメージ通りなのだ山科は。母性を感じずにはいられない。あと山科の作るご飯は美味しい。完全に胃袋を掴まれている吉継だ。
山科の名前を聞いた途端、手のひらを返したような態度を取る吉継に厚木は、案の定といったようすで鼻を鳴らした。
厚木の家は、今日も意味不明なくらい大きい。
初めて中に入ったが、家の中も同じだった。わけのわからない調度品がいっぱいある。天井からはジャラジャラした装飾品。
厚木の家には興味があったのに、壮美なインテリアに感銘を受ける器官がない吉継は、どこかアトラクションにでも迷い込んでしまったかのような気分だった。
「変な家です…」
これが吉継に言える精一杯の感想だった。
「蘭さん!」
「山科さん、おはようございます」
山科が二人を出迎える。厚木には礼儀的に頭を下げたが、目当てが吉継なのは明白だった。
吉継も山科に会えて嬉しそうに顔を綻ばせた。
「お久しぶりです。お元気になさっていましたか、聡実さんに聞いても全然教えてくださらないので」
「厚木さんが?どうしてですか」
「余計なことを言うな」
「あらっ、申し訳ありません」
吉継の問いに答える人はおらず、話が通じ合っている二人を交互に見て、吉継は首を捻るばかりだった。
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