神様はいない Dom/Subユニバース

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社畜にも休みくらいある 3

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 「蘭さんをしばらくお借りしてもよろしいでしょうか」
 「ああ、書斎にいる」

 山科の伺いに、厚木はそう言ってさっさと奥に引っ込んでしまった。


 厚木の後ろ姿を見送り、山科に向き直る。
 「山科さん」
 「なんでしょうか」
 「さっきの話はなんですか」

 「えっ、あれはですね…」
 山科が周りを見ながら、「嫉妬です」と言った。
 心なしかニヤついている。
 「嫉妬…ですか」
 「私が蘭さんをきにかけるのが気にくわないんです」
 厚木が嫉妬?にわかには信じられない話だ。
 「俺は嬉しいです」
 「ありがとうございます。…だからなんでしょうねえ…」
 「?」

 「さ、蘭さん、朝食はお済みですか」
 「まだです」
 「ではこちらへ」

 山科が吉継に用意していたのは、ご飯に味噌汁、焼き魚という和の朝食だった。ご飯は、吉継の好きなおにぎりにしてくれている。
 「いただきます」
 「はい」
 久しぶりに食べる山科のご飯は美味しかった。
 勧められるまま、味噌汁をおかわりする。
 
 「厚木さんは食べないですか」
 「聡実さんは、今日はいらないそうです」
 「そうですか…」
 「食べたり食べなかったりの人ですから、聡実さんは」
 「はい」
 がっかりしたのが伝わったようで、山科がフォローする。
 「聡実さんに持っていくおやつを作りませんか」
 「!」
 

 厚木も手軽に食べられるものなら口にするだろうと、山科と作ったのは一口で食べられる肉まんだった。
 吉継は予め用意されていた具材を生地で包んだだけだが。それでも、厚木が食べてくれたらと想像しながら作るのは楽しかった。
 蒸しあがるのを待つ間は、吉継の持ち帰り用のクッキーを作った。

 できたての肉まんは、吉継なら一口でも大丈夫そうだが、厚木には無理そうな、微妙な大きさをしていた。

 「これを聡実さんにおねがいします」
 「はい」
 お茶と一緒に乗せたお盆を渡される。
 「蘭さん、付き合ってくださってありがとうございます。おかげで楽しかったです」
 「俺も楽しかったです。またしたいです」
 「そうですね。クッキーは焼き上がったらラッピングしておきますね」
 「はい、ありがとうございます」





 教えてもらった書斎の扉をノックする。
 「お茶を持ってきました」
 「入れ」


 書斎の奥で厚木は、パソコンに向かってなにかしていた。
 「厚木さん、休みの日も仕事してるんですか」
 「もう終わる」
 「あったかいうちに食べて欲しいです」
 「何か持ってきたのか」
 厚木は吉継の言葉で、お盆に視線を向ける。

 「一口肉まんです。山科さんと作りました」
 「お前が?」
 「はい」
 ほとんど山科だが。

 「いただこう」
 「はい」
 厚木の近くにお茶と肉まんを置く。
 「どうぞ」
 「ああ」


 しかし、厚木は一向に手を付ける気配がない。
 「…食べないですか」
 「食べさせてくれたら」
 「ええ」
 
 厚木に食べさせる?
 なかなか動かない吉継に、厚木が顎をしゃくる。
 「早くしろ」
 「あ、はい」
 肉まんを半分に割って、おそるおそる厚木の口元へ運ぶ。
 あ、と見た目よりも大口が開いたかと思うと吉継は指ごと食べられてしまう。
 「わあっ」
 びっくりして手を引いたが、厚木はチラリと吉継を見ただけで気にせず咀嚼していた。
 「…どうですか」

 「悪くないな」
 「!」
 嬉しい。催促されてもう一口。
 今度は指を舐められた。また慌てて手を引く。
 厚木は知らん顔で肉まんを食べている。
 やっと吉継にもわかった。
 「わざとですか」
 「当たり前だ」
 厚木はしれっとしている。小憎らしい。
 

 しかし、手ずから厚木に食べさせてみて、よくわからないが、ちょっと胸がむず痒い感じがする。

 餌付けとはこういうことか。



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