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迷いハムスター預かっています

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 クリスマスイブの仕事を無事に終えた後、滅茶苦茶かわいくて人懐っこいジャンガリアンハムスターを拾った。瀕死だったみたいだけれど、その夜のうちに元気を取り戻したようだ。

 すぐに手乗りハムスターになったし、噛んでもあまがみだった。ペロペロ可愛く舐めてくれてお腹も見せてくれる。指でマッサージするととっても気持ちよさそうだった。
  人差し指に、下から小さな足でしがみついて来た時なんてテンションマックスで、「うりゃうりゃうりゃ」ってゆすってあげた。

 少し前に職場に頂いたクルミやアーモンドなどの中にヒマワリの種があった事を思い出した。それをあげると、ちっこいお手々で大事に持って、器用に殻を剥いてカジカジ必死に食べていた。


──いくつ頬袋にはいるのかな?

  なんて、ドキドキソワソワワクワクと、ハムスターの限界を試してみたくなった。

  だけど、前世の友達が、ヒマワリの種はハムスターにとって私たちのケーキバイキングみたいなもんだからあげすぎるなって言ってた事を思い出す。

『猫にマタタビ、ハムにヒマワリの種!  夢中で食らいつくよ。そうだなあ。ゴルハム(ゴールデンハムスター)やキンクマなら15~20粒は余裕でいけるかな?  最後は口からヒマワリの種がぴょっと出てても絶対落とさず隠し場所まで持っていくよ~』


  結局、どのくらいあげたらいいのか分からなくて、一粒だけあげてみた。
  
──いつか、10粒くらいまでチャレンジしよう……


 雪原に倒れていたし、お漏らししたのか股間が酷く濡れていたからお風呂に入れてあげた。あの世に逝くところだったんだ。そりゃあ失禁もするだろう。

  手のひらからぴょーんって飛び降りた時は、転落死するかとマジで焦った。

  洗い場の椅子に座ってたから、太ももの上に無事に着地したのでホッとしたのも束の間で、アソコに鼻先突っ込まれた時はびっくりした。

「こらー。もう、わかっていないんだろうけど、女の子のそこはダーメだよー」

 そんな風に言いながら、狭い所や穴が好きらしいから一生懸命掘って入ろうとしているんだろうセクハラハムスターをわしづかんだ。
  すると、今度は床に降りてバスルームの角に行って背を向けられた。

「うわー、真ん丸だぁ。可愛いなあ」

 頭を下げて背中を丸めているからほんっとに、まあるいお饅頭みたいな形になっていた。そこから全然戻ってこないどころか動こうともしないので毛づくろいしてるのかと思ってその間に体を洗う。

「ハムちゃーん。お待たせ~」

 体を洗い終わったので、声をかけたらダッシュで来た。

  上手に後ろ足でたっちして、短いお手々をばんざいして、まるで早く手のひらに乗せてっておねだりされているみたい。

「かーわい。呼んだら来てくれたあ」

 手のひらに乗せると、お湯がついていたからか、ずーっとペロペロしてくれてその姿がとっても愛らしい。

  身悶えしそうなほど可愛いその姿に、ニコニコしてKOされそう。

 うつ伏せになったハムスターのしっぽがピョコンってなっていて、可愛すぎてたまんなくなった。

 嫌がられていないので、ほんの少し調子にのってつまんで根元まで確認してみると、意外に長くてびっくりする。
 犬みたいに、お尻を絞ってあげないといけないのかと思って、お尻を色々さわってみたけれど、肛門もよくわからないし、ちっさすぎて無理だった。

 お股の体毛についていた石鹸の洗い残されたぬめぬめを、しっかり洗ってあげる。間違って口や目に入ったら大変だからね。


 本当はお尻のほうを触ったら痛かったりしたのか、ぐったりしたハムスターとお風呂から出る。


──逃げちゃうかな?

 ハムスターは【食う、寝る、脱走】が趣味だと前世の友達が言っていたから警戒していたけれど、タオルの上でじっと待っていてくれた。目を閉じていたから、瀕死だったし、やっぱり疲れていたのだろう。
  脱走する力もなかったのかと、無理をさせすぎちゃって申し訳なく思った。

 寝室に、魔法で準備しておいた段ボールの箱にふわふわのタオルを敷いた。少しのエサと水を入れてハムスターをその中にそっと運ぶ。
 とっても気に入ってくれたのか、すぐに手のひらからぴょんって飛んで降りると、可愛く鳴き声をあげならうろうろしたり、エサを食べたりして遊び出した。

 ほっとして眠った翌朝、箱の中のタオルが、見るも無惨にかじられていた。

  どうみてもボロだ。ボロボロだ。

──あれ?  タオルだけ100年経っちゃったかな?


  そこまで酷い状態になった元タオルだっただろう糸の残骸の中で、ハムスターがスヤスヤ眠っていた。こういうのが良かったのかと、ハムスターの職人技に感心してしまう。
  おがくずも空気をいっぱい含んでいるしふわふわだから、折りたたんだタオルじゃダメだったみたい。

「おはよう、ハムちゃん。おがくずがないから、自分でタオルをかじってお布団にしたんだね~。今日は、お仕事がお休みだから迷いハムちゃんの届を出して、ケージとか買いに行こうか」

 箱には破られないように魔法をかけていたけど、どこにも穴を開けようとした痕跡がなかった。

「大人しい子だねえ。ふふふ。はやく飼い主が見つかるといいね」

「チ!?」

 私の声に反応したのか、せっかく眠っていたのに起きたようだ。すぐさま私の方に来てくれた。
  新しい水を準備して、新鮮な野菜をあげる。

 小さな手が、大きなキャベツの葉っぱを掴んで食べていた。キャベツは3センチほどなのにそれすらハムスターには大きかったみたい。

「ふふふ、ちっこいなあ。かーわい。いっぱい遊んだのかな?  楽しかった?」

「チ」

 キャベツを食べている鼻先に、指を差し出す。すると、瞬時にキャベツをペイっと捨てて、私の指を小さな両手できゅって持ってペロペロしてくれたのだった。
 
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