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第2章

第百五十一話 子作り

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 晩飯も食べ終わり、酒を飲みつつ戦術管制画面(タクティクスコンソール)で戦況を眺めているとカラルが

「そうだ、アキト様!わらわと子育てしない?」

 と急に言ったので酒を思わず吹き出してしまう。

「ええっ!?」

「ふふっ、驚いた?……実はね共同でモンスターを育てたいって思っているの。だからアキト様の精気をいただきたいのだけど、駄目かしら?」

 悪戯な笑顔を浮かべている。俺は口の周りを拭う。

「っお、ああ、モンスターね……別にかまわないけれど具体的なモンスターとかはどうやって選ぶの?」

「ロンダールから卵を引き継いでいるの。アキト様の好きなモンスターは?」

「……そうだな。やっぱり最強種のドラゴンがいいかな」

「ドラゴンの三つ卵はあるの。卵にわらわとアキト様の精気を注ぎ、亜空間で育てるのよ。これが召喚(サモン)型モンスターの第一号になるわ」

 そう言うとカラルは卵を取り出し、俺と手をつなぎゆっくりと精気と魔力を注ぎ込む。HP、MPが吸い出されていく、カラルも同じく減っているのだが時間にして十分ほど注ぎこむとカラルが音をあげた。

「アキト様!どれだけ精気と魔力をお持ちなのですか?わらわはもう限界ですぅ」

 カラルのHP、MPは残り一割程度となっていた。俺の方は一分で”強さ”に設定した分だけ回復するから時間さえかければ無限に出すことができる。

「カラルの供給は止めて俺の精気と魔力をこのペースのままで限界まで注ぎ込んでくれ」

「卵もまだ注ぎ込めますが、それだとかなり規格外なドラゴンに仕上がりますよ」

「いいじゃないか、俺たちの言うことは聞くんだろ?」

「はい。それではご希望どおり、アキト様分だけの精気を注ぎますね」

 そう言ったあとカラルは精気、魔力を注ぐ作業を行いながら、俺から精気と魔力を吸い取るためのキスをしてくる。余裕はあるので俺も長い長いキスを楽しんだ。

「……っぷはぁ。大変美味しゅうございました」

 カラルのHPやMPが半分くらいに回復したところでカラルが離れる。残りのHPは俺が回復魔法をかけて全開した。

 卵は精気、魔力を注ぐことで二メートルほどの大きさになり、孵化が始まった。少し線が細いが、しっかりとしたドラゴンの形をしている。ヨロヨロと立ち上がり。あたりを三匹をじゃれ合いながらドタドタ走り回り始めた。

「整列!」

 カラルが号令をかけるとふざけあっていたのがピタッと止まり、横一列に並んだ。

「よくぞ無事に生まれてくれた……お前たちには膨大な精気が注ぎ込まれている。そのことを肝に銘じ強くなれ。期待している」

 そう伝えると魔法陣を展開し始める。

「アキト様からもお言葉を……」

 そんなことを言われても何を伝えていいのやら……このドラゴンたちが今後どのようになるのかも聞いていないのに……。

「よしよし、いい子だ。大きくそして強くなるのを楽しみにしているぞ」

 馬を撫でるかのように一体ずつ頭をなでるととても喜んでいるように思えた。魔法陣にドラゴンを誘導する。これからカラルの作った亜空間牧場でのびのびと育ち、必要な時に呼び出すことができるそうだ。

「ご協力ありがとうございます。わらわの初めての召喚(サモン)型モンスターをどうしてもアキト様と生み出したかったの……」

 その強さや将来を楽しみにしつつ、その夜は今後のドラゴンの使い方について語り合った。



 戦術管制画面(タクティクスコンソール)を眺めているカラルがつぶやく。

「さて戦況もなかなか盛り上がってきているようですわね……仕上げに参りましょうか」

 ロスニェル国兵は次々と人に化けたサキュバスの虜となり、ジャングルの中は酒池肉林と化している。カラルはモンスターを生成すると、生み出されたのは騎士タイプの魔人だった。カラルのコントロール下にあるとはいえ、その姿を見るとビクッとなってしまう。

「この子はただジャングルを歩かせて出逢えば、楽しんでいる最中でも関係なしに殲滅です。これであちらも国境を越えようなんて思わなくなるかもしれませんね。それと……」

 カラルはロンダールがドルトミアのダンジョンで使用していた”支配球”を出して土の中に沈め、命令を下している。

「……死体回収は自然にみえるよう半日は放置。リスタートは即時で強さ、性格は継続。携帯させるものは食料とテント一式で設定。以上」

「それってロンダールの支配球じゃないの?」 

「はい、支配球で監視と調整をおこないます。以上で仕上げは終わりです。これで少し様子をみましょうか」

「もしかしてこの数日の間で扱えるようになったの?」

「ええ、ロンダールから一通りレクチャーされたわ。本当にいろんな知識や技術を持っていて勉強になったのよ」

 やはり、封印解除してからのカラルの力具合がこの世界では規格外になっている。本当に頼もしい限りだ。

「さあ、あとは自由時間。アキト様!今日も朝まで寝かせませんわよ」

 嬉しそうな顔をして迫るカラル。だが俺も慣れたもので

「今日はダークエルフのやんちゃ系メイドでお願いします」とリクエストもかなりマニアックになっていた。
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